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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第15章
65/117

罰 -3-


 ララの身体をベッドに移した後、セイジはさっそくリアラに向き直った。

「なあ! 悪いんだけどさ……そこのビデオ、ちょっと借りてってもいいか?」

「? だいぶ古いものだけど?」

「だからいいんだ。あとは規格が合ってるかどうか……」

 ポケットから出したテープを、緊張しながらセットしてみる。

 それはぴたりと、機械内部に収まった。セイジはカナと目を見交わした。

「ここで観る……ってのは、さすがに危ないか」

「当たり前でしょ」

「サトルの部屋に戻ってからだな。さあ、一体何が出てくるか……!」

「……あ」

 ふとリアラがパソコンに向かった。カタカタと操作音をさせてから、セイジ達をふり返る。

「セイジさん……サトちゃんからメールが」

「え?」

「今からこっちに来ますって」

「え!? ちょっと待て、だから誰だよ『サトちゃん』て!」

 セイジもパソコン画面をのぞき込んだ。



=======================================

 From:サトル

 To:リアラ


 セイジ達はそこにいますね。

 私も今からそちらへ向かいます。   サトル

=======================================



「サ――サトルのことか!?」

「……うわ……」

 カナが顔をしかめたのをどう解釈したのか、リアラはおどおどと身を縮めた。

「あの、サトちゃん、ここの仕掛けのことはよく知ってるので、すぐ着くと思います……それまで、あの、よければ座って……」

「つってもあいつ、怪我人だぞ?迎えに行った方がいいよな……」

「えっ……!?」

 リアラが目を見張り、セイジが体を返そうとした時だった。

 がちゃがちゃと、扉が乱れた音を立てた。思わず身構えたセイジとカナの前に、倒れ込むようにして、サトルが現れた。

「サトル!? 何やって……怪我は!?」

「大丈夫、です。それより……」

「お前大丈夫じゃないのに大丈夫とか言うのやめろ!」

 蒼白な顔のサトルに駆け寄って――セイジは、はっと息を呑む。

「……おい、サトル。アンティークはどこだ?」

「……」

「まさか置いてきたのか!」

「――連れ去られました」

「!!」

「すみません……私1人ではどうしようも出来ませんでした……」

「誰に連れてかれたの? まさか……ユエじゃないでしょ?」

 絶句したセイジの後ろからカナが言った。サトルは絞り出すように言葉を繋ぐ。

「アンティークを、連れ去ったのは――アオイです」

「アオイ……!?」

「ユエが、話をしたがっている、と……」

 カナも青ざめて、口を閉ざした。

 セイジは自分を落ち着かせるようにきつくこぶしを握った。

「お前の部屋……1番安全なんじゃなかったのか」

「……すみません」

「お前が怪我してるのは分かってる……けど……なんとかならなかったのかよ……!」

「セイジ。アオイも『5つの間』の1人――『死者の間』を司る死神だ。ピエロとは格が違う」

 カナがセイジの袖をつかみ、後ろに引き戻した。セイジは目を閉じ、今度こそ、怒りを心の奥に押し込めた。

「悪い、サトル……」

「いいえ。……私も、できることなら守りたかった……今度こそは……」

 サトルは苦しげに息をついた。そこへ、かくかくとリアラが歩み寄った。

「サトちゃん……どこが痛むの?」

「……」

「胸んとこ。ライオンに爪かけられたんだ」

 サトルに代わってカナが指さした。リアラはサトルを見上げ、そうっと手を伸ばす。

 右の手のひらが、サトルの胸に触れた。

「サトちゃん、動かないでね。今……治すから」

 瞬間、やわらかなクリーム色の光が部屋全体を包んだ。

 光が収縮し、ふっとかき消えるまで、それほど時間はかからなかった。しかし、それで充分だった。

「! なんか、身体が軽いな」

「どう? サトちゃん……」

「……ええ、ありがとうございます。だいぶ楽になりました」

 サトルの背筋がすっと伸びた。リアラが嬉しそうに――幸せそうに、頬を染めた。

「よかった……!」

「あんなに小さくか弱かったあなたが……知らない間に、成長していたのですね」

 そしてサトルは、リアラの肩に手を置いた。

「ところで、リアラ。――私になら話してくれますか?」

 サトルの声に一切の甘さはなく。

 一転して、リアラの表情が強張った。



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