ピエロゲーム -4-
「ややっ! あんた、『セイジ』くんだねっ!」
梯子を登りきり、そろそろと開いたドアの向こうは、先ほどまでいた控え室だった。
今はやけにフレンドリーなバニーが1人いるばかりで、他に団員の姿はない。まだ幸運は続いている。
「あたしらバニーはステージでお手伝いするだけで団員じゃないから、ゲームには不参加なの。あたしはルウ。よろしくね!」
「え、あ、どうも……」
やたらと露出度が高い女性に笑顔で握手を求められれば、セイジも悪い気はしない。
アンティークからいやーな感じの視線を向けられているのは、この際無視。
「それにしても災難だね! 何しちゃったのかなセイジくんは?」
「俺もわかんねーんだよ」
「もう館中が大騒ぎだよ~。もうこれルールとか関係なく、たとえセイジくんが逃げる気がなくても、命を狙われ続けると思うよ。みんなお祭り気分だからね~」
「祭りって……」
「せっかくお近づきになれたのに、残念☆」
「っておい、もう『残念』か」
「ま、だから襲い掛かってくる奴は目一杯戦って大丈夫ってこと! んじゃ、頑張ってねっ!」
バニーというより気まぐれな猫のようだった。
ひらひらと手を振りながら部屋を出ていくのを見送って、セイジはどっと疲れを覚えた。
「たとえ生き延びてゲームが終わっても、俺、このサーカス団でやっていく自信なくしたかも……」
『だ、大丈夫? セイジ……』
がっくりとうなだれていたセイジだが、アンティークに向けた目は、ごく冷静だった。
「けどとにかく、敵ばっかじゃないってのはわかったな」
『……そうだね』
「さて、団長はどこにいるかな。……まずどっかに、サーカス館の地図とかねーのかな」
『昨日来たばっかりで、この中のことって全然わからないもんね』
「そっちの方とか、確かまだ行ったことなかったよな?」
控え室の南に伸びる通路。セイジはまずそちらへ足を向けた。
後から思えば、それは――“血”に導かれたかのように。