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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第13章
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玩具の少女 -2-


 かなり長い間、沈黙した後。

 アンティークはあきらめたように小さくため息をついた。

『あたし……自分が何者かなんて思い出したくなかったかなぁ。セイジになんて言おう……』

「あの頃のことを知っているのは、もはや、私とユエとあなたくらいのものでしょう。もちろん歌姫が姿を消した真相も……」

 サトルが体を起こし、アンティークと向かい合うように座り直した。

『寝てなくて大丈夫なの?』

「ええ。……こんな失態、本当はあなたにだけは見られたくなかった……」

『そんなこと言わないで』

「それに、せっかくまた会えたというのに、もうあなたを笑わせることもできません」

『仕方ないよ。あたしだって、今は表情のないお人形だもの』

 アンティークは冗談めかして言った。しかしサトルは、怖いほどに真剣なまなざしで声を低める。

「アン。あなたが今まで、すべてを忘れていたのは……団長のご意志だったのですか」

 アンティークは――きっぱりと否定した。

『ううん、忘れさせてくれるよう、団長に頼んだのはあたし。魂を人形に移してもらってすぐにね。だって……あんなことになって、すごく悲しかったんだもの』

「……すみません」

 サトルは視線を床に落とした。

『それより、ユエは……あの子はどうして、こんなことを始めてしまったのかな』

 アンティークがぽつりと尋ね。サトルは首を横に振った。

「理由はどうあれ、許されることではありません」

『……そうだよね……』

「今まであまりに多くの人間が振り回されてきました。こんな呪われたサーカス団は、もう終わるべきなのです」

『……』

「きっとそれがセイジの使命であり、セイジをここへ連れて来ることがあなたの使命だったのだと――あなた方に出会ったとき、私はそう思いました」

『そう……なのかな……?』

 アンティークはつぶやいた。

 その続きは、心の中で。


 《このサーカス団を終わらせる……本当にそれがあなたの望みだった?

  ねえ……団長……》



         ++++++



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