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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第10章
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紅の猛獣士 -6-


 カナが見えなくなった後も、コウは長いこと、たたずんでいた。

 不意に、ぽつりと独白する。

「手でも足でも、くれてやるのに……」

「お前は『記憶』――最初から決まっていたことだ」

 無機質な声にふり返る。石の玉座の横には、いつの間にかアオイがいた。

 コウは警戒して唸るグレンをなだめ、ため息をついた。

「スミマセン、今のは聞かなかったことに。……対応に関してはご満足いただけたデショ?」

「ああ」

「ついでにピエロも、しばらく使えなくしておきましたヨ。次は玩具の間へ行くらしいので。全員で行かれたら可哀想だし……」

「リアラには最初から何も期待していないとユエが言っていた」

「おーおー、厳しいお言葉」

 コウは息を継ぎ、軽くアオイを睨んだ。

「お前それ、リアラちゃんの前で言うなよ?」

「リアラのことより――ユエが心配しているのは、お前だ、コウ」

 唐突にアオイが言い出した。コウはきょとんとした。

「僕?」

「お前なら、あるいは……裏切るかもしれない、と――」

 コウはそれを聞いた瞬間、可笑しげに、口元を歪めた。

「なんだ……あの人にも少しは危機感があるのか」

「……」

「それよりアオイ、何してるんデスカ?言っただろ、ピエロに傷負わせたって」

 そろそろ薄らいできた記憶をたよりに、コウはアオイを皮肉った。

「チャンスなんだから早く行かないと。ちゃんと働いたらユエさんに……また気に入ってもらえマスヨ?」

「……そうだな」

 身をひるがえしたアオイにひらひらと手を振って。

 コウは小さくつぶやいた。

「いずれはあの死神が相手デスヨ、セイジさん。……どうぞ、ご武運を……」



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