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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第1章
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ピエロゲーム -2-


「……3つ質問がある。まず1つ目――団長から受ける制裁ってなんだ?」

「団長は対象者の『最も辛いと思うこと』がお分かりになります。それが制裁内容です」

「抽象的だな……」

「あなたにとって『最も辛いと思うこと』は、あなたと団長しか分かりません。大抵の者は“死”であることが多いですけどね」

 それはそうだろうと思う、が――

「今まで行ってきたゲーム対象者のほとんどが、制裁は死ぬことでした。要するに……過去ほとんどの者は生きていない、ということです」

「げ……っ!!」

 くらくらする頭を手で押さえる。それでも、とにかく情報収集からだと気を取り直す。

「2つ目! もしお前の言っていることが本当なら、このサーカス館から脱出することは可能か?」

「無駄だと思います。ゲーム中、対象者はこの館から出られません」

「……まじない師か、団長は」

 セイジはつぶやいた。“サーカス”とは、まじない師やら異能を持つ人間がこぞって集まるところだと聞く。ピエロを見ると、わずかに首を動かして肯定した。

「ですが安心して下さい。これはただの殺し合いではありません。ゲームには終わりがあります。次のサーカス公演日まで、あなたが制裁を受けずに無事生き延びていたらゲームは終了します」

「本当か!」

 ゴールを示されたことで少しほっとした。しかしそれと同時に、唐突に疑念がわく。

 そもそもこのピエロは本当に信用できるのだろうか。

 すべてピエロ作り話、あるいはタチの悪い冗談ではないのか。

 もしそうなら、どんなにか――

「ゲームなんざで同じ団員を殺そうとするなんて、信じられないけどな」

「残念ながら。ゲーム期間中は頭にある常識を捨てた方がいいです。殺されてからでは、誰にも文句は言えませんから」

 セイジは強く頭を振った。現実感がない。わかっている……これは、逃避だ。

「あなたの制裁内容がどんなことかは分かりませんが、制裁を受けたら無事ではいられません。逃げ延びてください。…例えどんなことが起こっても」

 ピエロの話は、もしかしたら嘘かもしれない。

 しかし本当だった場合。

 彼の言うように、死んでからでは後悔すらできない。

「そろそろ時間がありません。早くしないと他の団員達が殺気立ててここにやってきます」

「3つ目――」

 セイジはすっと、指を前方へ向けた。

「お前……敵か? 味方か?」

「……私は――」

 初めて、ピエロがセイジに向き直った。

 セイジははっと息を呑んだ。

「味方です」

 

 バタン!


「見つけた! 左手に人形を抱いた茶髪の男…お前が『セイジ』だな!」

 派手な音を立てて開いた木の扉から、ぎらぎらと目を血走らせた男が現れる。シルクハットに燕尾服。出で立ちからしておそらくマジシャンだろう。

「おや、さっそくやってきましたね」

「! 目が怖ぇ!」

「団員達にはあなたの名前と特徴を知られています。気をつけることです」

 ピエロのサトルは、すっと目を閉じた。

「では、健闘を祈ります」

『あっ』

 アンティークが声を上げるより早く、サトルの姿がぶれた。

「消えた……!?」

『違う、姿を隠したんだ! まだこの部屋のどこかであたし達の様子を見てるんだよ』

「くっそ、なんだアイツ、味方だって言ったくせに……!!」

 マジシャンが飛びかかってきた。セイジは横にステップしてそれをかわす。

 と――アンティークの瞳に、青い光が灯った。

『あたしセイジが死んじゃうのはやだよ! 生き延びるためなら一緒に戦うよ?』

「そうするしかないようだな……!」

 他に気を取られている場合ではない。セイジも腹を決めた。



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