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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第9章
38/117

記録 -1-



   開け、パンドラの箱



         ++++++



   ――おいカナ、何してるんだ


   セイジはサーカス館の正面玄関の前にいた。

   もうここから出られる。それはわかっているのに。

   サトルはいない。アンティークも、いない。

   カナだけが悲痛な面持ちでこちらを見ている。


   ――……だめだ、セイジ。見て、ホラ……


   カナが、どんなときもはずそうとしなかった首の包帯をむしった。

   首には一直線の赤い筋。

   それはまるで、切断線のような――


   ――……私の首、とっくにとられちゃってたみたい

   ――……!!

   ――最初から……呪われてたんだ

   ――カナ!

   ――ばいばい


   ごとんっ


   音を立てて落ちたモノ。

   受け入れることができずに、セイジは――



         ++++++



「っ!!」

『わっ、何!?』

 セイジは飛び起きた。心臓の鼓動が痛いほどだった。

 とっさに目がカナを捜す。

 カナは――部屋の隅に座って、驚いたようにセイジを見ていた。

「よか……った……」

 一気に力が抜け、セイジは後ろに倒れ込んだ。

『ど、どうかしたの、セイジ』

「なんか……ひでー夢見た……」

『どんな夢?』

「……。あれ、忘れた……? なんかカナが出てきたような気がするけど……」

「勝手に人の夢見ないでよ」

「無茶言うな」

 笑う余裕もなくため息をついたセイジに、サトルが気遣わしげな声をかけてきた。

「今日はこのまま休んでしまいますか? もうそろそろ夕方になりますが…」

「――夕方!?」

 セイジはもう一度跳ね起きて、部屋の時計を確認した。針は眠る前から数えて10時間近くも進んでいた。思わず呆然としてしまう。

「嘘だろ……」

『本当、よく眠ってたよ』

「こうしちゃいられないな。悪い、すぐ準備する」

「わかりました。それでは、地下の“A”の部屋ですね」

 カナも立ち上がった。――その腰に、クラブが3本あった。

「それ……1本増えてないか?」

 カナはセイジを、次いでその指さした先を見た。

「これ? ……あんたが寝てる間に売店で買ってきた」

「1人でか?」

「だってすぐそこだし……」

「カナ」

 猛烈な不安に駆られたセイジは、カナの肩をつかんだ。

「もうあんまり、1人で動かないでくれ」

「は? なんであんたにそんなこと――」

「頼むから」

 つい力のこもった手を、カナが不審の表情で払った。それでも、セイジの本気は伝わったようだ。

「できるだけでいいなら……」

「セイジ。ちょうど控え室に誰もいないようです」

 サトルが時計の裏の扉を開いた。セイジは自分の頬を軽くたたいた。

「よし……行こう」

 不安感はまだ去らない。

 それを無理やり押しのけて、セイジは扉をくぐった。



         ++++++



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