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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第7章
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人魚の呪歌 -5-


 セイレーンは水槽の縁に腰かけた。久々に重力というものを身体が思い出す。

 自分が“人間”であることも、今思い出したような気がした。

 くすりと自嘲気味に笑い――

 セイレーンは、歌うように言った。

「……セイジならもう行ったわよ」

 再び扉が開き、姿を現したのは、アオイだった。

「次はどこへ行った?」

「『猛獣の間』へ行くと言ってたわ」

「そうか」

「……ねぇ、私の両脚、あなたどこへ持っていったの?」

 セイレーンはアオイを見やった。アオイは無感動に、口だけを動かす。

「ユエに渡した」

「やっぱり……そうだったのね。他の4人も『とられた』んでしょう?」

「コウはまだ、すべてをとりきれていない」

「そう。でももう時間の問題ね。10年前のあの時、ユエの計画は始まってしまったのだから……」

 アオイはうなずいた。

「すべてがユエの思い通りにいく。ユエの望むとおりになる」

「……アオイ。もしかして、あなたが『とられた』ものって……」

 セイレーンは言いかけ――

 やめた。代わりに悲しい顔でつぶやいた。

「……あなたも可哀想な人なのね」

 とりたてて何の反応も見せず、アオイはきびすを返した。

「『アオイ』はユエのためなら何でもする。何でもできる。たとえ誰に恨まれようと……ユエの邪魔はさせない」

 アオイも行った。

 残されたセイレーンは、ぎゅっと、義足を抱きしめた。

「私はもう、恨まない。もう誰かを恨むのは嫌……」

 決意の言葉が、窟の壁にわずかに反響した。



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