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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第1章
3/117

ピエロゲーム -1-



   さあ、ゲームを始めよう

   ここから始まるピエロゲーム――



         ++++++



 気がつくと殺風景な場所にいた。

 薄暗いランプの下、雑多に布やら木箱やらが転がっている。セイジはとっさに腕の中を、アンティークの無事を確認した。

『大丈夫、ちゃんといるよ、セイジ』

「ああ。……ここはどこだ?」

『地下室みたいだね』

「あれ? 俺、さっきまで控え室にいたよな?」

『うん。さっき大きな警報が鳴らなかった?』

「一体何が起こったんだ?」


「あれはピエロゲーム開始の合図ですよ」


 セイジはぎょっとした。他の人間がいることに気づかなかった。

 彼は粗末な木の机に向かい、こちらへは背中を見せている。長身にも関わらず気配の薄い――道化服の男。

「誰だ……? お前」

「初めまして……セイジ。私はサトルといいます。見ての通り、このサーカス団のピエロの1人です」

 彼は首だけ動かして、仮面の横顔を向けた。いかにもピエロらしい派手な彩りの仮面だ。

「あなたはこの部屋からゲームスタートです。普段から人の少ない場所ですから、相当に運が良かったですね」

「はあ?」

「これはルールですから、ゲームが開始されれば飛ばされるんですよ。どんな遊びもすぐに終わるようではつまらない……」

「ま、待ってくれ……ゲームとかルールとか何の話だよ?」

 セイジがさえぎると、ピエロはセイジの前に1枚の紙を掲げて見せた。


   『ピエロリストNo.44「セイジ」様へ

   あなたは罪を犯しました。あなたに残された道は3つ。

   制裁を受けるか、他の団員に殺されるか、逃げ延びるか――です。

   では、ご健闘を祈ります――             団長』


「な……なんだよそれ!」

「時間がないので手短に説明しますが、今後のあなたの運命を決める話です。心してよく聞いて下さい」

 ピエロの口調は真摯だった。セイジは、いろいろと言いたいことはあったが、ひとまず黙ってうなずいた。ピエロはうなずき返した。

「まず、今このサーカス館の中でゲームが始まりました」

「ゲーム?」

「はい。『ピエロゲーム』と呼んでいます。世間には知られてませんが、昔からこのサーカス団が行っているゲームです。団長にとって不都合なことをした者は『ピエロリスト』と呼ばれるリストに載るようになっています。そのリストに載った者がこのゲームのターゲットです」

「……」

「リストに載った者は団長が制裁を与えにきます。要するに罰ですね。ちなみに、もし制裁から逃げようとした場合――」

 ピエロは一度、言葉を切った。

「他の団員達はそのリスト対象者を、殺してもいいことになっています」

「こ……っ」

 セイジの思考は、一瞬、停止した。

「団長から制裁を受けるか、他の団員達に殺されるか、どちらからも逃げ切るか――というゲームです。命に関わる“鬼ごっこ”のようなものですよ」

「な、なんだそれ!?俺がそのリストに載っているのか?」

「正確にいえばたった今、載りました。さっきの警報はあなたをターゲットとするゲームの始まりの合図なのです」

『そんな!』

 アンティークが細く叫んだ。セイジも思わず声を荒らげる。

「なんで俺がそんな訳の分からないリストに載るんだよ!?俺は昨日このサーカス団に入団したとこでまだ団長にも会ってないぞ!?」

「時には例外もあるかもしれませんね」

「例外?冗談じゃねぇ!」

「ゲームについて何か質問はありますか?」

 ピエロはあくまで淡々と語る。セイジはこみ上げる怒りを呑みこみ、大きく息を吸って、吐いた。



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