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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第5章
24/117

予言 -2-


 ――何やってるんだろう、私…?


 カナは自問しながら、指定された場所へと足早に向かっていた。

 時折人とすれ違うものの、襲ってくる団員はいない。対象者であるセイジがいないせいだろうか。


 ていうか、なんであいつのために使い走りなんてしてるんだろう。

 なんであいつらといつまでも一緒にいるんだろう。

 誰も信じないって……決めてたはずなのに……


 邪魔が入らないため目的地にはすぐに着いた。腹立ち紛れに、カナはノックもせず扉を押し開けた。

 中にはカナより年長と見える女性が1人きりだった。高く結った赤い髪を揺らし、優雅に振り返った彼女は、カナを見て微笑んだ。

「あら、こんにちは」

「ヨシタカって人形遣いに言われてきた。受け取るものがあるって」

 女性は無遠慮なカナのもの言いにも動じず、「そう」とだけ答えて、机の上の大きなバスケットを手に取った。中身はしっかりと布にくるまれている。

「これよ。……ヨシタカさんに『いつも感謝しています』と伝えてくださるかしら」

「! 何これ、重……」

「人形の材料なの。気をつけて持ってね――カナさん」

 名を呼ばれたことには驚かない。はっきり言って慣れている。

 しかし、続いた言葉は。

「ピエロゲーム対象者の『セイジ』によろしく。彼ともいずれお会いしてみたいわ。……あら、心配しないで。殺そうなんて思ってないから。そんなに睨まないでちょうだい」

 剣呑な目つきになるカナを見て、女性は笑った。

「困ったわね。信じてもらえない?」

「私は誰も信じない」

「そう? ……セイジくんのことなら、信じても大丈夫よ。迷わないで」

「!?」

「ねぇ、私、占いができるのよ」

 女性の笑みが深くなる。カナは知らず、一歩下がった。

「あなたの運命……占ってあげましょうか?」

「……遠慮しておく」

 カナはさっさと女性に背を向けた。

 これ以上は聞きたくない。

「そう、残念ね。では1つだけ忠告を」

「いらないってば」


「――あなたの『首』。今のままでは、とられてしまうわよ」


 カナは耳を疑った。指先からすっと身体が冷たくなる。

 思わずふり返ると、女占い師はそれでも、穏やかに笑んでいた。

「あなた達が望むのなら、私はあなた達の味方になれる。またいつでもいらっしゃい」

 カナは答えず、逃げるように部屋から出ていった。

 開け放しになった扉を閉めようとして、女占い師はふと下を見る。

「……おかえりなさい。ご苦労様」

「ウキッ!」

 女占い師は黒い毛色の猿を抱き上げた。その背中を探って、パチンとスイッチを切り。

 誰にともなく、つぶやいた。

「過去を知ること、未来を知ること。忘れられないこと――忘れてしまうこと。……何が一番辛いのかしらね…」



         ++++++



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