予言 -2-
――何やってるんだろう、私…?
カナは自問しながら、指定された場所へと足早に向かっていた。
時折人とすれ違うものの、襲ってくる団員はいない。対象者であるセイジがいないせいだろうか。
ていうか、なんであいつのために使い走りなんてしてるんだろう。
なんであいつらといつまでも一緒にいるんだろう。
誰も信じないって……決めてたはずなのに……
邪魔が入らないため目的地にはすぐに着いた。腹立ち紛れに、カナはノックもせず扉を押し開けた。
中にはカナより年長と見える女性が1人きりだった。高く結った赤い髪を揺らし、優雅に振り返った彼女は、カナを見て微笑んだ。
「あら、こんにちは」
「ヨシタカって人形遣いに言われてきた。受け取るものがあるって」
女性は無遠慮なカナのもの言いにも動じず、「そう」とだけ答えて、机の上の大きなバスケットを手に取った。中身はしっかりと布にくるまれている。
「これよ。……ヨシタカさんに『いつも感謝しています』と伝えてくださるかしら」
「! 何これ、重……」
「人形の材料なの。気をつけて持ってね――カナさん」
名を呼ばれたことには驚かない。はっきり言って慣れている。
しかし、続いた言葉は。
「ピエロゲーム対象者の『セイジ』によろしく。彼ともいずれお会いしてみたいわ。……あら、心配しないで。殺そうなんて思ってないから。そんなに睨まないでちょうだい」
剣呑な目つきになるカナを見て、女性は笑った。
「困ったわね。信じてもらえない?」
「私は誰も信じない」
「そう? ……セイジくんのことなら、信じても大丈夫よ。迷わないで」
「!?」
「ねぇ、私、占いができるのよ」
女性の笑みが深くなる。カナは知らず、一歩下がった。
「あなたの運命……占ってあげましょうか?」
「……遠慮しておく」
カナはさっさと女性に背を向けた。
これ以上は聞きたくない。
「そう、残念ね。では1つだけ忠告を」
「いらないってば」
「――あなたの『首』。今のままでは、とられてしまうわよ」
カナは耳を疑った。指先からすっと身体が冷たくなる。
思わずふり返ると、女占い師はそれでも、穏やかに笑んでいた。
「あなた達が望むのなら、私はあなた達の味方になれる。またいつでもいらっしゃい」
カナは答えず、逃げるように部屋から出ていった。
開け放しになった扉を閉めようとして、女占い師はふと下を見る。
「……おかえりなさい。ご苦労様」
「ウキッ!」
女占い師は黒い毛色の猿を抱き上げた。その背中を探って、パチンとスイッチを切り。
誰にともなく、つぶやいた。
「過去を知ること、未来を知ること。忘れられないこと――忘れてしまうこと。……何が一番辛いのかしらね…」
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