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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第4章
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狂気の巨人 -7-


 エリはいつものように、部屋の隅でおとなしく座り直したのだろう。

 自分も今はどうにか平静を保てている。

 ただ――新しく人の気配が入ってきたのを感じた。ビッグは先に口を開いた。

「何の用だ。腕のない私はもう用済みだろう」

「リストNo,44『セイジ』の後を追っているだけだ」

 目隠しをしていても、声を聞く前に、臭いで誰かは分かっていた。

 死臭を纏う白い青年。――自分の腕を持っていった『死神』だ。

「アオイ……聞いていいか」

 彼に問うたところで答えは得られないだろう。

 それでも問わずにいられなかった。

「私はいつまで、この狂気に耐えなければいけないんだ……! あと何人殺せばいいんだ……!? いつになったら……――また子供たちと笑える日がくるんだ……!!」

「まだそんな欲望が残っていたのか」

 そっけなく言って、アオイはきびすを返したようだ。

「『セイジ』を追う。『アオイ』はユエの役に立たなければならない……」

「アオイ!!」

 アオイの気配が遠ざかる。ビッグはどうしようもない無力感に呻き声をもらした。

「……おじちゃん……」

 離れた場所にいても、エリが何か言いたそうにしているのが分かった。それを一生懸命我慢していることも。

 それだけでもう、どろどろとした衝動がこみ上げてきた。

 破壊と殺戮――その快楽への欲求。

 しかし、快楽の後には必ず後悔の念が襲う。正気にかえった瞬間に、それは耐え難いほどの苦痛となる。

 何度も何度も、味わってきた。


「これが……“選ばれた者”の宿命なのか……」


 心を両極に裂かれる思いだった。耐える以外に、ビッグにできることなどなかった。



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