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・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第4章
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狂気の巨人 -5-


 パリンッ、とガラスの割れるような音がした。

 はっと我にかえったときには、光も、結晶も、跡形もなく消えていた。

『結晶が割れちゃった……』

「今のは一体……?」

「う……うう……!」

 ビッグは何かに苦しんでいるようだった。

 セイジは動こうとしたカナを、目で制した。

「あんたの記憶……なのか? あんたも、ピエロゲームの制裁を受けたのか?」

 ビッグはあえぐように、天を仰いだ。

「あああああああああああああああああああ!!」

「クソ、聞こえてねーか――」

 突如、間近の床から新たな蔓が伸び、セイジの肩をかすめた。

「っ!」

『大丈夫!?』

「セイジ!」

 カナがクラブを1本投げてよこした。なんとかキャッチしたそれは予想したよりしっかりとした重さだ。そのままの勢いで、セイジは蔓を払った。

「助かる!」

「よそ見するな、また“あれ”が来る!」

 “あれ”が衝撃波のことだと直感する。

 セイジはとっさに横へ飛ぼうとして――その寸前で踏みとどまった。

 真後ろにはエリがいた。

「ちょっ……何やってんの!?」

 カナの悲鳴のような声を聞きながら、アンティークを守るように半身を引いて、ぐっと全身に力を込める。

 避けようとは思わなかった。その時頭にあったことはただ1つ。

 ビッグに、エリを傷つけさせてはいけない――!

「おじちゃん!!」

 ところがセイジの思惑とは裏腹に、後ろからエリが飛び出した。

 今しもビッグは咆哮しそうな気配だ。セイジが急いで伸ばした手も間に合わない。

「おじちゃん…やめて!!」

 エリはビッグに駆け寄りながら、叫んだ。

 刹那――


       ――おじちゃん……

            ララのこと、キライになっちゃった……?


 どこかでエリとは違う少女の声が響いた。

 ビッグの動きがぴたりと止まった。

 とっさに、セイジはカナのクラブを力いっぱい投げつけた。クラブはまっすぐ飛んで、巨人の眉間を強打する。

 パァンッと音を立て、クラブは砕けた。

「お……お……!」

 ビッグは大きくのけぞって、ゆっくりと、沈み込んだ。

 もう周囲の蔓の動きも止まっていた。つついてみても、ただの植物と変わらない。


 ――当面、危機は去ったと見てよさそうだった。



        ++++++



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