表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
・ PIERROT ・  作者: 高砂イサミ
第4章
17/117

狂気の巨人 -2-


 不意にアンティークが声を上げ、セイジ達は足を止めた。

『何か光ってる……』

「何かって……どこでだ?」

『あの樹の上、てっぺん近く』

 アンティークを除く3人は顔を見合わせた。

 少し樹から離れてみる。見上げると――確かに、何かがきらきらと光っていた。それは自然界にありそうな光ではなく、かといって、電灯などとも違うようだった。

「なんだろうな?」

『あそこから不思議な力を感じるんだよ。あのお猿さん、ひょっとしたらこれを教えてくれたのかも!』

「あんたセイジに甘すぎ」

「取ってみますか?登るのは少し大変そうですが……」

「……。そんな必要ない」

 カナが進み出た。身体を沈めて力を矯め、下手から思いきり、クラブを投げ上げる。

 クラブは回転しながら、見事、光の近くに命中して枝をはじいた。反動でクラブもはね返り、すとんと、またカナの手元に戻る。

「お前、すごいな! そんな使い方もできんのかそれ」

「できる奴にはできる、こんなの」

 カナがクラブについた傷を確認している間に、時間差で光が落下してきた。

 “それ”が地面に着いた。――はずみもせず、なんの音もしなかった。

 セイジはおそるおそる光に歩み寄った。

「なんか水晶玉みたいだな。何かの結晶か? ……お。意外と軽い」

 結晶は手のひらに収まるほどの大きさで、透明な殻が白い光を包んでいるように見えた。材質は、正直よく分からない。

「そんなに邪魔にもならなそうだし、一応持ってくか」

 セイジは結晶を、ポケットに入れようとした。

 その時だった。

『あれっ』

「お……おおっ!?」

 突然、結晶が強い光を発した。すぐに目を開けていられないほどになる。

 熱はない。ただ――白い。

「まぶし……っ! いきなりどうしたんだ!?」

「ちょっと! 変なモノ拾うから!」

 カナの声と同時に、吹き消すように、光が消えた。

 そろりと目を開けたセイジは周囲の光景を見て、もう一度目をつぶり、開いた。

「――どこだ、ここ?」

 腕の中にはアンティーク。カナとサトルもちゃんと近くにいる。

 風景だけが違った。

 セイジ達は今、森の中ではなく、こぎれいな小道に立っていた。壁に囲われてはいるようで、しかしその壁が淡い橙色に発光しているため、夕暮れの空の下にいるようにも思える。なんとも不思議な感覚だった。

 そして道の先は、教会のような背の高い建物へと続いていた。

『後ろの壁は、最初に入ってきたところかな』

「今まで見てきたのはすべて幻……ということでしょうか」

「じゃあこれが、本当の『巨人の間』なのか……?」

 セイジは高い扉を見上げた。壁には窓1つないようだ。

「この中に、ビッグがいるんだな?」

「おそらくは」

 セイジはドアに手をかける。

 重そうに見えた鉄の巨大な扉は、予想に反し、軽々と開いた。



         ++++++



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ