狂気の巨人 -2-
不意にアンティークが声を上げ、セイジ達は足を止めた。
『何か光ってる……』
「何かって……どこでだ?」
『あの樹の上、てっぺん近く』
アンティークを除く3人は顔を見合わせた。
少し樹から離れてみる。見上げると――確かに、何かがきらきらと光っていた。それは自然界にありそうな光ではなく、かといって、電灯などとも違うようだった。
「なんだろうな?」
『あそこから不思議な力を感じるんだよ。あのお猿さん、ひょっとしたらこれを教えてくれたのかも!』
「あんたセイジに甘すぎ」
「取ってみますか?登るのは少し大変そうですが……」
「……。そんな必要ない」
カナが進み出た。身体を沈めて力を矯め、下手から思いきり、クラブを投げ上げる。
クラブは回転しながら、見事、光の近くに命中して枝をはじいた。反動でクラブもはね返り、すとんと、またカナの手元に戻る。
「お前、すごいな! そんな使い方もできんのかそれ」
「できる奴にはできる、こんなの」
カナがクラブについた傷を確認している間に、時間差で光が落下してきた。
“それ”が地面に着いた。――はずみもせず、なんの音もしなかった。
セイジはおそるおそる光に歩み寄った。
「なんか水晶玉みたいだな。何かの結晶か? ……お。意外と軽い」
結晶は手のひらに収まるほどの大きさで、透明な殻が白い光を包んでいるように見えた。材質は、正直よく分からない。
「そんなに邪魔にもならなそうだし、一応持ってくか」
セイジは結晶を、ポケットに入れようとした。
その時だった。
『あれっ』
「お……おおっ!?」
突然、結晶が強い光を発した。すぐに目を開けていられないほどになる。
熱はない。ただ――白い。
「まぶし……っ! いきなりどうしたんだ!?」
「ちょっと! 変なモノ拾うから!」
カナの声と同時に、吹き消すように、光が消えた。
そろりと目を開けたセイジは周囲の光景を見て、もう一度目をつぶり、開いた。
「――どこだ、ここ?」
腕の中にはアンティーク。カナとサトルもちゃんと近くにいる。
風景だけが違った。
セイジ達は今、森の中ではなく、こぎれいな小道に立っていた。壁に囲われてはいるようで、しかしその壁が淡い橙色に発光しているため、夕暮れの空の下にいるようにも思える。なんとも不思議な感覚だった。
そして道の先は、教会のような背の高い建物へと続いていた。
『後ろの壁は、最初に入ってきたところかな』
「今まで見てきたのはすべて幻……ということでしょうか」
「じゃあこれが、本当の『巨人の間』なのか……?」
セイジは高い扉を見上げた。壁には窓1つないようだ。
「この中に、ビッグがいるんだな?」
「おそらくは」
セイジはドアに手をかける。
重そうに見えた鉄の巨大な扉は、予想に反し、軽々と開いた。
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