審判 -4-
「――ねえ、ちょっと! さっきから思ってたけど、あんた団長室の場所なんて知らないんじゃないの!?」
『右腕』の廊下を走りながら、少し後ろからカナが怒鳴った。セイジは足を止めずに2人を振り返った。
「あそこまで言ったからには、サトル、お前つかんでるんだろ? 団長室への道」
「もちろんです。……このまま控え室の方へ。舞台へ続く通路の途中に、入口があります」
「よし!」
途中で4人の邪魔する者は、もはや誰もいなかった。それどころか、日中にも関わらず妙に人影が少ない。
セイジも不思議には思ったが、今はかまっていられない。壊れた壁の修理中らしい数名の職人を横目に控え室を駆け抜け、通路へ出た。
「ここです……ここが入口になっているはず」
サトルが示したのは通路の両側、頑丈そうな柵で封鎖された2ヶ所の階段だった。
セイジもこの場所は何回か通ったはずだが、まったく目に入っていなかった。
「封鎖されている柵を同時に押すことで、中に入ることができるようです」
「2手に別れろってことか? ……両方とも『運命の間』に繋がってるんだろうな?」
「セイジ、あなたはカナと一緒に東側の通路を行ってください。私は西側を進みます」
サトルがやんわりと指示してきた。セイジには、異論を唱える理由はなかった。
「ああ。分かった」
「またセイジと一緒? 別にいいけど……」
カナが不審げな顔をしたが、サトルはもう西側の柵の前まで行っている。
そこでサトルはふり向いた。
「セイジ……ありがとうございました。あなたのおかげで、またアンに会うことができた……」
「は? な、なんだよ急に?」
「いえ。それでは、中でまたお会いしましょう」
サトルは柵に手をかけ、「いつでもどうぞ」という風にセイジ達を見た。と――不意にアンティークが声を上げた。
『セイジ、あたしはサトルと行くよ。それじゃダメかな?』
「え、またか? 別にいいけど……2人ずつでちょうどいいし」
ところが、アンティークを渡しに行こうとすると、サトルの方で首を振った。
「アン、あなたはセイジ達と――」
『セイジとカナちゃんなら大丈夫だよ。ね、セイジ? ……ちゃんとカナちゃんを守ってあげてね?』
それを聞いたカナが、心外そうに腕組みをした。
「別にあんたに守られなくても、自分の身は自分で守る」
「ほんっとかわいくねーなお前は」
「うるさい」
『ほら。だからサトル――一緒に行かせて?』
しばしの沈黙の後、サトルは小さく息を吐いて、アンティークを受け取った。
「それでは、よろしくお願いします」
『うん。……セイジ、頑張ってね』
「お前らも気をつけて行けよ」
セイジとカナも東側の柵の前に立った。セイジは柵に手をかけ、サトルを見る。サトルがうなずいた。
「よし、サトル。押すぞ!」
柵は見た目よりもだいぶ重かった。それでも問題なくめいっぱいまで開いて、地下に通じる階段を晒した。
「この先に、ユエが……」
「まだ俺らの前に出てこないから、いる可能性は高いよな。……怖いか?」
カナは緊張の面持ちをしている。それでも、まっすぐにセイジを見返してきた。
「そんなこと言ってられないでしょ」
「上等だ。んじゃ、サトル! アンティーク! 『運命の間』で会おうな!」
カナと共に長い階段を駆け下りていく。
背後では、柵が閉まったらしく、「ガチャン」と重たい音がした。




