序話
最強とは、何だろうか。
圧倒的な武力を持つ者が最強なのか。
あらゆる魔法を使いこなせる者が最強なのか。
それとも、いわゆるチート能力を持つ者こそが最強なのか。
答えは――
そのすべてだ。
「最強」に明確な定義など存在しない。
人それぞれ、心の中に最強を測る物差しがある。
だからこそ、どれも間違いなく「最強」なのだ。
では、もう一つ質問しよう。
もし君が「最強」の称号を手に入れたとしたら、どうする?
その力で世界を救うのか。
それとも、正体を隠して平穏な生活を送るのか。
もし俺なら――
答えは迷うまでもない。
後者だ。
別に、弱者を装って無双したいわけじゃない。
ただ単純に、有名になるのは面倒くさいのだ。
基準として見られ、
一度の失敗で過剰に叩かれ、
できることまで制限される。
だからこそ、
目立たずに生きられるのなら、それに越したことはない。
「だから、できる限り普通に、平穏に暮らしたいんだ。」
「ん? 今なんて言った? 父さん、よく聞こえなかったな。」
俺の父――ヴィナ・シャール。
史上最強と謳われる賢者であり、
あらゆる魔法と結界を極めた存在だ。
そんな「史上最強」の父を持てば、
当然のように、俺もまた
「最強」を継ぐ存在として見られることになる。
「だから! 俺は平穏に生きたいって言ってるんだ!」
「ええっ!?
君は今が一番、青春を謳歌できる時期だろう?
そのために、父さんは幼い頃から特訓してきたんだぞ!」
……やりすぎなんだよ。
その結果、俺は幼い頃から、
父と同じように
あらゆる魔法を扱えるようになってしまった。
こうして今の俺があるのは、
すべて――
『親バカ』と呼ばれる、
愛情過多な教育の賜物なのである。




