この世界はアレな言葉が多い。
「とにかく、ざっくりと説明したから、質問あったら今聞いてください」
いやいや、あのレベルのざっくりさじゃ出る疑問も出な…
いや、こんなんじゃダメだ。俺は親に「疑問を言葉にできる人間になりなさい」って言われてたんだ。
ここで質問も出ないようなら俺はまだまだ子供じゃないか。
…という謎のプライドを守るために質問を捻り出した。
「まず、『前の世界』ってのはなんだ?俺は今別の世界にいるのか?」
「わかりました。では『前の世界』について説明します。まず、今のあなたの世界は私が作った前のあなたの世界にそっくりな世界です」
精霊は説明が下手そうだな…と思いながら
「わかった。前の世界と何が違うのか?」
「前の世界の概念や定義はそのまま使えますが、今の世界には、精力という概念があります」
思わずちょっとニヤッとなってしまった。
「なぜ口角が上がっているのですか?真面目な話ですよ」
「すまん。そのセイリョ…クについて説明して…くれ」
「わかりました。セイリョ…クについて説明し…ます」
「忘れてくれ」
「忘れません。精力とは波です。簡単に言ったら紫外線みたいなものです。しかし、逆向きに波を放たない限り消えません。この波は人間の体の中の精器という部分で全員同じ量作られます」
「ぶっっっ」
思わず吹き出してしまった。なんかこの世界はアレな言葉が多い。
「笑わないでください」
「すまん。続けてくれ」
「はぁ…次行きますよ」
いやいや俺が悪いみたいな雰囲気出してるけど元はというとこの世界作ったのお前だろ。
「精器で作られた精力は腕まで伸びる精管というものを通って、手を特定の形にすることで排出できます。排出しなくても体内で打ち消しあって消えますが、わざわざ排出する行為を自慰行為と言います」
「その精力ってのはもしかしてだけれど男女で同じベッドに入ってお互い排出して打ち消しあって消してたりしないか?」
「勘が鋭いですね。なんか精力を排出すると気持ちいいらしいですよ。ベッドに入って何をしているのか知りませんが、お互い裸になっているらしいです」
勘が鋭いって…わざわざ排出する行為をそんな名前つけたらわかるだろう。
「次に、スキルについて説明しますが、何か質問はありますか?」
「では二つだけ質問させてくれ。まず、精器というのはどこにあるのか?」
「わかりました。ちなみにこれは人間は知りません。精器というのは見えないので、解剖してもわからないのですが、背中の下の方にあります。叩くと感触はありませんが相手がジーンとなります。人間は神経の痺れだと思っているらしいです」
背中の下の方を叩いてみるとジーンとした。確かに神経の痺れにも感じる。
「では、もう一つの質問だ。精力が移ると目に見える物質を教えてくれ。」
「わかりました。これも人間は知りません。この波は紫外線に近いので、人間に見えない色を持っています。そのため、プリズムに精力を移すと分散して見えるようになります。強さなどもわかります。男性の場合、両手の親指、薬指、小指を曲げて逆向きに重ねて人差し指、中指をまっすぐ伸ばして重ねた手の形にし、人差し指と中指を対象に当てることで、精力を放出することができます。試してみてください」
たまたま実験で使ったプリズムがあったので実験してみた。なんか指が熱くなる感じで、確かに気持ちよかった。
確かにボヤッと色が分かれている。
逆向きに波を出すと、色が消えた。
「ありがとう。ではスキルについて教えてくれ」
「わかりました。スキルは大きく分けて、スタンダードスキルとユニークスキルに分かれます。スタンダードスキルは習得するもので、基本的に全員が使えますが、ユニークスキルは基本一人二つまでで、習得することはできません」
「わかった。ではスキルの性質について教えてくれ」
うーん。こいつのことは信じられないんだが、なんかAIみたいに使ってしまってるなあ。
「わかりました。スキルというのは精力の単位であるMPを使うことで使用できます。MPは減りすぎると意識を失って倒れるようです」
「スキルの使用中も精力は作られるのか?」
「スキルを使用し始めてから、使用後30秒ほど精力の生成は止まります」
「なるほど。連続使用はできないんだな。それで俺のユニークスキルはなんだ?」
「ありません」
なるほどなるほど……………….はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ?
やっぱりこの精霊は信用できない。