#05「最弱でも昇格がしたい!」後編
遂に昇格試験が明日に迫った…
俺は朝の自主練習を終えると駆け足で教室へと戻った。
そして早速昨日友達になったばかりの平 防人の席へと向かい2人で話していた。
「明日が試験当日なんだ…でも俺初めてだから少し色々と教えて欲しくて…」
「な、なるほど…じゃあ難しくないように教えるね」
「おう、頼む」
俺への頼みをあっさり承諾してくれた防人は、手始めにこんな質問を投げかけてきた。
「何ランクの試験を受けるつもりだい?」
「そりゃあ1番下のだけど…」
「なるほど…E級ね…」
いやでも待てよ…今の俺…魔法は使えなくてもフィジカルだけであっさり勝ててしまうのでは?
サッカーの大会もそうだったけどやっぱギリギリの戦いの方が燃えるよな…
「いや待て、やっぱC級試験を受ける」
「え!?C級って初めてにしては難しすぎるんじゃ…」
「そこはフィジカルでなんとかなるさ!俺ギリギリの戦いの方好きだし」
「そういう話じゃないんだけど…」
俺の突然の決意においおいと呆れる防人。
そんなにムズいのか?
いくら魔法の使えない俺でも召喚魔法で剣1本出せるんだ…運動には自信があるし、最悪蹴れば勝てる。
キーンコーンカーンコーン
「やべ、席つかねぇと…」
予鈴が鳴り、俺は自分の席に戻る。
席に着いた昇は顎に手を置き少し頭を整理する。
この前見た張り紙にE級は誰でもクリア可能。
D級は少し努力が必要。C級はかなり努力が必要となっていて、俺が今受けようとしてるのはCランク…
試験では最悪死にそうになったら監視役の教員が助けに来てくれるというので死ぬ心配は無い。
死ぬことが無いんなら多分クリア出来んだろ、最悪リタイアすりゃいいし!
と謎の自信を胸に授業へ望むのでした…
ーーーーーーーーーー
4時間目の授業が終わり、昼ごはんを済ました昇は、早速練習場で防人に練習の手伝いをしてもらってた。
「防御魔法!」
防人は無属性なので使える属性魔法は、重力魔法と防御魔法、そして昇は、防人が防御魔法で発生させた架空の盾を打ち破る練習をしていた。
「召喚魔法!」
昇は、手の平に魔法陣を纏い中から1本の剣を出現させ手に握る。
「とりゃあ!」
刹那、パチンという響きとともに防人の架空の盾が昇の剣を弾く。
「くっそー、やっぱこれ砕けなきゃアイツらに勝てるわけないよな」
「うん、C級ともなれば一筋縄じゃ行かないやつばっかだからね」
「もう1回!」
それから10分後…
「とりゃあ!って剣が折れた!?」
防人の架空の盾に昇が剣を振り上げ、破壊を試みたが剣が折れ、刃が飛んでいってしまった。
昇は再び剣を召喚しようとするが…
「ふぇ!?魔力が足りません!?仕方ない。魔力使い切っちゃったな…今日はこれで終わりにするか…」
なんと目標達成できるに断念して防人との練習は終わりを告げた。
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「ふぅ…」
食事や風呂を済ませ部屋についた昇は明日に備え寝ようとベッドに座り込んでいた。
試験の最終確認だ…試験クリアには1時間以内に五体の指定されたモンスターを順番に倒し切る必要がある…制限時間は、いいとしてだ…自分の魔力が持つとは想定していない。
モンスターには魔力での攻撃しか効かないから魔力の少ない俺は強化魔法と召喚魔法を上手く使わけなきゃいけない…強化魔法も将打から教わったばっかだからコントロールも完璧とは言えない。
はっきり言って勝率は低い…でも挑まないことには何も始まらない!
だから俺はなんとしてでも勝ってここから脱出しなきゃ行けないんだ!
俺ならできる!と自身に言い聞かせ眠りについた。
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【レベルアップしました。現在のレベル4】
現時刻1時半
午前の授業を済ませ自由時間となった昇は、会場へと足を運び、エントリーをしていた。
【中学No.22、遅速 昇】
エントリーを済ますと練習場へと案内され試験の基本ルール、注意事項を話されて、練習場へと1人残される。
昇は辺りをグルっと見渡す。
やっぱ試験ってだけあってそれなりに人が見に来てるんだよな…
「それでは、C級昇格試験、開始します」
ビィ〜っと言うアナウンスととも1体のモンスターが出現する。
【C級モンスター ラム 火属性】
なるほど、最初はコイツか…二足歩行、全身が赤く、長い爪のある猫型モンスター
「召喚魔法!」
直後、昇の手から魔法陣が出現し中から剣を召喚する。
早速、昇は、ラムに近づき剣で一振り御見舞いする…が…
キン!という音とともに弾かれてしまう。
そりゃそうだ、現在の俺の魔力は4でそのうち召喚魔法に使った魔力はたったの1。
どの魔法も魔力を込めれば込めるほど威力は上がる。
1しか使ってない俺の剣は木の枝と同等、ただそこを剣術で補う!その為にこれまで練習してきたんだ。
刹那、ラムの炎を纏った爪の斬撃が昇を襲いかかる。
「うぉっと、危ねー、後ちょっとで当たってたよ。」
軽々しく避けると、カウンターを開始する。
「喰らえ!」
バチン!
昇の斬撃はしっかりラムに当たっていたのだがビクともしない。
ラムの爪が再び昇を襲いかかる。
バキッ
今度は防御に遅れて咄嗟に剣を振ったが爪の攻撃力に耐えきれず折れてしまう。
「グハッ!」
更にもう片方の爪の攻撃を喰らってしまう。
あっという間に壁に追い詰められた昇は折れた剣を構えるが…
キン!
剣を遠くに飛ばされて武器もなくなってしまった。
「こうなったら!強化魔法!」
昇は魔力を体に纏い強烈な蹴りを御見舞する。
直後、ドーン!という音とともにラムが遠くへと飛ばされる。
「見たか元サッカー部の力!」
今の俺の肉体による攻撃が相手に通ったのは俺が強化魔法で身体に魔力を纏っているからだ。
そして強化魔法によって維持できるのは10秒、残り魔力は2。
でも、絶対に勝つ!
「うぉーーーー!」
昇は叫びとともにラムに襲いかかり強烈な飛び蹴りをかます。
地面に埋められたラムはボロボロになっていた。
「でも体が消滅してないってことはまだ生きてんだろ?」
そうだ!と言わんばかりにラムは地面から立ち上がり昇に強烈な爪攻撃を浴びせる…が…
「よっと!」
昇は軽い身のこなしでいなしカウンター攻撃を仕掛ける。
「お前をサッカーボールだと思えば怖くねぇ!ロングキック!」
昇はラムを下からすくい上げるように蹴り上げ遠くへ飛ばす。
再び地面に埋まったラムは消えかかっていて瀕死状態だった。
昇はラムの元へと近づき…
「C級ってこんなもんか?剣術なんざ鍛えなくてもクリア出来んじゃん」
と嘲笑うかのようにバカにする。
すると突然、地面から起き上がったラムの姿が一瞬にして消え…
刹那、昇の背後を取ったラムは強烈な斬撃を浴びせる。
「グハッ!」
致命傷を覆った昇は動けずにいた。
ラムの方を覗くと赤いオーラを纏っていて怒りの表情に満ちていた。
なるほど、強化魔法で自身の身体を強化したのか…
つーか痛てぇ、ロクに立てやしねぇよ。
俺の強化魔法も解けたし、盤面ってこんな一気に変わるもんなのかよ…
どの魔法もそうだけど魔力消費量によって威力や効果は変わる。
俺が強化魔法に使った魔力は1だから強化魔法のレベルは1。
だからLv1の強化魔法なんてほぼ素の力と変わんないようなもんだし、ただ自身のキック力を活かして相手にダメージを与えるために身体に魔力を纏わせただけだ。
だから今の俺の体は一般人よりちょっと強いぐらいで防御力なんて皆無だった。
だから1発でも喰らったら終わりなのに…最初、腹に食らった時に耐えれたからって調子に乗っていた。
まじで動けねぇな、情けねぇよ…
ラムがこちらへと近寄ってくる。
もう、これ以上長期戦にすると、俺の体がもたねぇ。
「仕方ない!こうなったらお前だけでも倒してやる。強化魔法で不意打ちなんてキモイ戦法するお前だけは絶対に俺がぶっ殺してやる!召喚魔法!強化魔法!」
今魔法を使ったせいで残り魔力は0。
強化魔法もこれで最後、剣も絶対折れるからあと10秒で俺は終わる。
「でも!この10秒で絶対に仕留めきる!」
勇気を振り絞り立ち上がった昇は剣を構えラムに攻撃を仕掛ける。ラムも同様にこちらへと向かい爪による炎の斬撃を2発3発と飛ばしてくる。
「よっ!ほっ!はっ!」
全てアクロバティックなジャンプで避けきり、一気にラムへと近づく。
「喰らえや!」
2発3発と次いでダメージを与えていく。
さっきは召喚魔法だけだったけど、剣術だけに拘ってたけど、今は違う。
さっき俺が蹴りによって与えていたダメージがラムの防御力を弱めてる!
しかも強化魔法で強化した肉体ならば、斬撃の威力も高くなる!
「4…5…6…7発目!」
昇の素早い斬撃に為す術なくラムはただ喰らうことしか出来なかった。
「これでトドメだー!!!」
ラストの一撃を与えるとラムは消滅していった。
「やっぱいきなりC級なんて挑むもんじゃなかったわ、でも次やる時は必ず5体全員倒してやるから覚悟しと…け…よ…」
直後弱々しくなった自身の声とともに昇は地面へと倒れ、リタイア判定となり試験は終わりを告げた。