#02「不可能でも脱出がしたい!」
前回のあらすじ
念願の異世界転生を果たした俺…遅速 昇は、未成年な為、転生学園に収容されてしまった。そこで外に出てみたが結界が貼られてて脱出不可能な状態、校長である心情 長を倒せばこの結界を破れると聞き校長を倒すことを目標にかかげるのであった。
…俺の脱出を邪魔する混合 秀斬とやらがここ…転生学園の案内をしてくれるらしい。
「ん…」
「なんですか…?」
俺の無言の訴えに気づいたのか俺に問いかけてくるメガネくん
ちなみに俺がメガネくんと呼んでいるのは秀斬の事だ
「いや、俺たちさっきまで言いあいしてたよな?なんでそんなラフに接せんだよ…」
そう、結界の解き方を聞いた時このメガネくんに馬鹿って言われて俺が言い返してしまったのだ。
「喧嘩…あぁ私があなたを馬鹿と言ったことですか、あれは言いあいには入らないしこちらが一方的に馬鹿にしてしまっただけなので気にしなくていいですよ。」
…なるほど、なんなんだ、このメガネくんは…
「ここがまず転生学園の玄関です」
なるほど玄関…地味にデカイな、ここ
秀斬の案内解説を真面目に聞く昇
「続いて玄関をでて左側が音楽室です」
「右側に周りまして継いでここが…」
このメガネくん、解説がめちゃくちゃ上手いぞ!?
こいつ…絶対前世バスガイド志望だっただろ…
あ、てかメガネくんとか校長とかって元々異世界にいたのか俺と同じ様に転生したのかどっちなんだろう。
不意にこんな疑問が脳裏に浮かぶ
「てか、お前らって元々ここにいたのか?それとも転生してここに来たのか?」
「もちろん、私もあなた方と同じく転生者ですよ、
この世界は転生者達が作り上げた町ですから」
昇の問いに秀斬が答える
なんかストーンワールドみたいな世界観だな
「これにて説明は以上です。あ、もうお昼なので今日の学校の授業は終わっちゃってますね。」
え!?午前で学校終了なのか?どんな神校だよ
「ちょっと待て…授業…短くない?」
「この学校は春休みなどの長期休暇がない代わりに毎日午前授業なんですよ」
秀斬の回答に昇は驚く。
この時、昇の脳裏には二つの感情が芽生えた。
一つは毎日午前授業だと午前授業という学生の楽園へ対する価値が下がってしまうのでは?という不安。
もう一つは長期休暇がないことへの喜びだ。
そう…この男、遅速 昇は長期休暇が嫌いなのだ。
彼いわく『部活自体は好きだが長期休暇の練習は走りばっかでつまんない』と…
「では…午後は基本的に自由なのでなにか聞きたいことがあったら私の寮に聞きに来てくださいね」
「おう」
帰路につく秀斬に対して手を振り見送る昇。
「さて、やっと来たか、休み時間。」
もちろん脱出を望む俺にとってやることはただ一つ。
「せっかくの転入生でみんな期待してるかもしれねぇが残念だったな!貴様らともおさらばだ!」
さっきは秀斬からいいこと聞いちまったもんな。
つまりは校長を倒せばいいんだろ?
校長がいくら強かろうと年老いたジジイが現役サッカー部に勝つわけねぇだろばぁーか!
心の中でそんな罵詈雑言を言いながら廊下から校長室へと駆け足で向かう。
"トントン"
「失礼します。校長先生に用があって来ました」
「おお、昇くんじゃないか、どうしたんだい?聞きたいことでもあったのかい?」
昇が校長室に入るとそこには当たり前だが校長がいた。
「今日は聞きたいことがあって〜」
昇は喋りながら校長に近付いてく。
「かかったな!いきなり奇襲作戦!」
昇のパンチはいとも簡単に校長に止められていた。
バキッ!直後とんでもない音が校長室に響く。
「痛てっ!こいつ…強すぎだろ…」
なんと昇のパンチを掴んだ校長はそのまま背負い投げをして床に叩きつけたのだ。
「なんの真似だね?昇くん?回答によっては君に反省文書いてもらう羽目になるが…」
「はぁ…はぁ…んなの決まってんだろ…ここから脱出するためだよ…」
「なんだ…そんな事のためにわざわざここまで来たのかい…ま、君は今日入って来たばっかだから知らないかな…仕方ない、教えてあげよう」
昇に対して怖い表情で詰め寄る校長。
「結界魔法」
校長が唱えると昇と校長は大きな結界に身を包む。
「なんだよ…いや待てよ…これ、外で見た形と一緒じゃねぇか」
「これは結界魔法と言うんだがね言わばバリアと一緒なんだが…ほれ、ためしに私を一発殴ってみろ。」
「死んで後悔すんなよ!ジジイ!」
校長の挑発にまんまと乗る昇。
"ドゥオン"
直後、昇から繰り出されたパンチは校長をすり抜けていった。
「これは二重結界と言って自分の作った結界の中に更に結界を作ると時の流れが早くなって時空が歪み、攻撃が当たらない仕組みになってるんだよ。私を殴りたきゃこの結界破る事だね」
「こんなペラッペラッな結界を壊すなんて屁でもねぇ」
"バイン"
しかし昇のパンチは全く結界にダメージを与えてなかった。
「これで分かったろう…今の君じゃ、私に勝とうなんぞ、百年早いわい、これが分かったなら二度と歯向かうんじゃないぞ」
「チッ」
校長の強さに手も足も出なかった昇はイライラとしながら校長室を後にするのだった。
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「おお!やっぱここ以外といい場所だな!」
昇はさっきのイライラの気分晴らしに銭湯に来ていたのだが…
「浴槽バカ綺麗じゃねぇか!」
「おお!美肌効果もあんのか!」
「おお!こっちには露天風呂へ繋がる通路もあんのか!」
この男、今年15歳にして今さら風呂場で騒いでいるのだ。
「浴槽では静かにしないか!」
そこに一つの怒号の声が聞こえてくる。
「ゲッ…秀斬までいんのかよ…」
「ふっ…居て悪かったな…」
浴槽に身をつかせていたのは今日、昇の案内をしてくれた秀斬だったのだ。
まぁいっかと少し気分落ち気味に身体を洗い終わった昇は浴槽に身をつかせ秀斬に近寄る。
「あ、そうだ!せっかくだからさっき校長と起こった話聞いてくれよ!」
そして昇は今日校長を倒そうとして格の違いを見せつけられたことを話した。
「馬鹿じゃないのか!?あの校長に歯向かうなど!」
急に声を荒らげる秀斬
「いや、浴槽では静かに…」
「そうだった、すまない」
全くこいつ礼儀いいのか悪いのか…
「いいか、とりあえず今後一切、校長には近づくな!いいな?」
「あ、はい」
秀斬の必死の訴えに納得する昇。
ただ、昇に一つの疑問が浮かぶ…今までに脱出作戦を決行して成功したやつはいないのかと…
そこで昇は聞いてみることにした。
「なぁなぁ、つか今までで脱出作戦ってやったことあるやついんの?」
「昔一度だけな、超強い二人組が校長に決闘挑みに行ったんだよ、もちろん殺す気で」
昇の純粋な疑問に冷静に答える秀斬。
「ただ、結果は歯が立たずでボロ負け…そいつらはしばらく寮で謹慎してたって話だ」
「ちなみにその二人組ってどんぐらい強かったの?」
「学園でTOP10に入る程の実力は持ち合わせていたと思うぞ」
なるほどな…つまりはガチ目に校長は強いんだ…
「少しのぼせた…私は出るぞ」
少しのぼせたらしい秀斬は浴槽を後にする。
ついで昇も一緒にと浴槽を後にする。
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「やっぱ、最高だよ!この学園!」
はしゃぎながら夕食会場でまたしても騒ぎ出す昇。
「バイキングだから選び放題!しかもこれが毎日とか神かよ!寿司も肉もプリンもある!」
脱出計画なんて忘れたかのようにバイキングを謳歌している昇
いかんいかん…俺はここから脱出するんだよ!
ただ今はそんな事いいぐらい幸せすぎる!
「あれも食お!あ、こっちにラーメンある!…」
そんな風にしてバイキングを楽しむ昇なのでした。
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「ふぅ…なんだかんだで今日も疲れたなぁ…一時期はどうなる事やら」
夕食を済ませた昇は寮のベットに横たわりグダグダしていた。
今日戦って校長の強さを思い知った…
己の無力さも思い知った…
ただ俺ならできる!必ずここを脱出してやるんだ!
と自分に言い聞かせ眠りにつくのでした。
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「ふぁ…なんだもう朝か…ん?なんか身体に違和感が」
直後、昇の前に一つの画面が現れる。
「ん?なんだ?能力が覚醒しました?固有スキル…日進月歩…ってなんだこれ?」
そして彼についたこのスキルが彼の人生の邪魔になるとは彼自身も思っていなかっただろう…