表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

深い森の奥で

作者: 下菊みこと
掲載日:2024/08/21

「こんにちは、小鳥さん」


「ちゅん、ちゅん」


「あらあら、怪我をしているの?ちょっとまってね」


魔女は癒しの魔法を小鳥に使う。


怪我をしていた小鳥は瞬時に回復した。


小鳥は嬉しそうに歌う。


「ちゅんちゅんちゅん!」


「ふふふ、よかったわね」


魔女は小鳥に微笑む。


小鳥は羽ばたいて何処かへ去った。


魔女はそれを眩しそうに見送る。


「私にも羽があればな」


魔女は首を振って、自分の言葉を否定する。


「羽がなくても、魔法があるわ」


それがあるから、土地に縛られているのだけれど。


そう呟く魔女は、気を取り直して魔法で料理を用意した。


その時だった。


「ごめんください」


「あら?お客様なんて珍しいわ」


魔女がドアを開けると、幼い痩せ細った少年が目を潤ませていた。


「僕、どうしたの?」


「あの、あの、ボク…お腹が空いて」


「そう。いらっしゃい、食べさせてあげる」


「!」


魔女は少年を家に招く。


そして自分のために用意した料理を差し出した。


「お召し上がりになって」


「わぁ…!」


少年は無我夢中で食べる。


魔女は自分の分の料理をもう一度用意して、少年とともに食べ始めた。


「ご馳走さまでした!」


「あら、おかわりはいいの?」


「おかわり!?」


「おかわりというか、デザートかしら。フレンチトーストよ」


「フレンチトースト!」


笑顔が輝く少年に、魔女は微笑む。


「ほら、召し上がれ」


「わあ、アイスにメープルシロップまで!」


豪華なフレンチトーストに喜ぶ少年。


魔女は美味しそうに食べる少年をただ見守った。











「ご馳走さまでした!」


「ええ、ご馳走さまでした。…さて、それで、どうして村の人から禁足地とされているこの森に入ってきたの?」


「えっと…あの」


「大丈夫、怒ったりしないわ。ただ、聞かせてほしいだけ」


「…ボク、お父さんもお母さんも居なくて。なんとか奴隷としてだけど村で養ってもらってて、でも奴隷としての仕事がとても辛くて逃げてきたの」


…魔女は痛ましげな表情で少年を見る。


痩せ細った少年は、養ってもらっていたとは言えないだろう。


けれど少年は、村の人々を恨んでいるようには見えない。


無垢な子供が酷い目にあったというのは、魔女にとっては悲しいことだ。


「なら、行くあてはないのね?」


「うん…」


「それであれば…こういうのはどうかしら」


魔女は少年に提案した。


「…私の身の回りのお世話をお願いしてもいい?」


「え…」


「その代わり衣食住は保証してあげる」


少年は魔女に頭を下げる。


「…よろしくお願いします!」


「ふふ、よろしくね」


この時から、少年は魔女の召使いになった。












「魔女様ー、朝ですよー」


「ううん…」


「今日は朝から豪華にチャーハンと餃子と中華スープと杏仁豆腐ですよ」


「中華ね…おはよう」


「起きましたね、おはようございます。ええ、中華ですよ。お好きでしょう?」


青年は起き上がる魔女に微笑む。


「ええ、好きよ。朝からがっつり食べられる程度には」


「ふふ、それは良かった」


「あなたが来てから、生活水準が高くなったわ」


「そうですか?お役に立ててなによりです」


青年は甲斐甲斐しく魔女の世話を焼く。


着替えを手伝い、髪を梳かし、食事を用意する。


魔女は青年を見つめる。


「貴方が来てからどのくらい経ったかしら」


「もうかれこれ十年ですね」


「貴方が大きくなるはずだわ」


「魔女様は変わりませんね」


「私は魔力が多すぎるもの。老けることも出来ないし、死ぬことも出来ないわ」


少し寂しそうにそう言う魔女に、青年は言った。


「魔女様、ボクも魔力が多いのですよね」


「ええ、私が見る限りかなりのものよ」


「ボクも魔女様のように、ある程度成長したら時が止まってしまうのでしょうか」


「…ええ、おそらくは」


「なら…ずっと一緒にいられますね」


青年の言葉に魔女は驚く。


けれど、嬉しそうに微笑んだ。


「たしかにそうね。ずっと一緒にいられるわ」


「なら良かった。どうか、置いていかないでくださいね」


「ええ、もちろんよ」


青年は魔女の言葉に安心して、魔女を抱きしめた。


「え、ちょっとどうしたの?」


「…甘えたい気分なんです」


「ふふ、仕方のない子」


魔女は青年の頭を撫でる。


青年は少し拗ねた様子で言った。


「ボクは男ですよ。押し退けなくていいんですか」


「あら、男として見てほしいならもっと頑張らないとね?」


「魔女様は意地悪です」


「ふふ、だって魔女だもの。そうそう、それと…一つ提案があるの」


「?」


魔女は青年に言う。


「魔法を覚えるつもりはない?侍従ではなく、弟子になるのはどうかしら」


「…よろしくお願いします!」


この日から、青年は魔女の弟子となった。











「魔女様、ボクの魔法はいかがですか」


「すごく上手になったわね」


「でしょう?」


「でも、もう教えられることがなくなってしまったわ」


「ならば弟子も卒業ですね」


魔法使いの言葉に、魔女は寂しそうに笑った。


「そうね、貴方は立派な魔法使い。もう私の弟子ではないわ」


「ならば…どうか、卒業祝いにボクのわがままを聞いてください」


「ええ、なにかしら」


「ボクと結婚していただけませんか」


魔法使いは、自らの手で作り上げた指輪を魔女に差し出した。


「…え」


「好きなんです、魔女様。あの日貴女に助けられてから…ずっと」


「で、でも」


「共に永遠を生きてほしい…ダメですか?」


魔法使いの潤んだ瞳に、魔女は思わず頷いてしまう。


「わ、わかったわ。だから泣かないで」


「本当に?本当にいいんですか?」


「ええ、ずっと一緒にいるわ」


「よかったぁ」


微笑む魔法使いに、魔女は不覚にもキュンとする。


魔女だって、魔法使いを憎からず思っていた。


「ずっと一緒にいましょうね」


「ええ、もちろんよ」


幸せそうにはにかむ魔法使いに、魔女も笑顔を浮かべた。

ここまでお付き合い頂きありがとうございました!


楽しんでいただけていれば幸いです!


下のランキングタグに連載作品いくつかのリンク貼ってます!


よろしければご覧ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼのほっこり♥️♥️♥️
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ