なぜこうなった
「あ?」
「……は」
「え」
すさまじい閃光と爆風はミツネを軽々と転がし、薄い壁にぶつかった。
どんな馬鹿力してんだ、あのチンピラは、とがたがた震えながら光の先を見ると、チンピラの姿は良く見えなかったが、よくわからないものが見えた。
「……なんだここは、何かの倉庫か? 埃っぽくてかなわんな。高出力の魔力を感じたがまさか魔獣ではあるまい。私は何か魔術に巻き込まれたのか?」
「ああ? んだてめえ」
「ん?貴様こそ誰だ。魔力は感じられないが戦場に一般人がいては危険だ。すぐに退避しろ」
「は? 頭大丈夫かよお前」
何かよくわからないが、でかい人と借金取りがメンチ切りあってる……。
どこから湧いてきたのか謎のでかい人は長いマントみたいなものを付けていて左手には長い剣のようなものを携えている。
逆光であまり見えないがとにかくでかくて偉そうで後臭い。なんか血なまぐさいし怖い。おえ、吐き気がする。
「おい、貴様、貴様が術者か」
「ひえ!?」
「ここはどこだ。私を転移させるとなると相当の術者だと思われるが、私は魔獣討伐中の身だ。何が目的だかは知らんがさっさと戻せ」
「お、おおお俺でしょうか?」
「そうだお前早くしろ」
ぐるりと唐突にこちらを向いた瞳は濃いグリーンで顔つきはどうみても日本人ではなかった。長剣がぎらりと怪しく光り、俺は気が付いた、よく見たらめっちゃ赤いペンキついてる……!!!
コスプレイヤーさんたちにはやたら詳しい俺でもこんなクオリティの高いコスは見たことがない。
顔はいうまでもなく、そのキラキラの長い金髪(赤いペンキ付き)衣装の重厚感(赤いペンキ付き)、そしてまるで本物のようなロングソード(赤いペンキ付き)!! どこをとっても高クオリティすぎて妹がいたら発狂していただろう。
「え、ええ遠藤さん?」
「あ?」
「新しい部下の方ですか、なんかすごいですね」
「はあ? ミカちゃん関係の人だろうがよ。こんなんで脅そうとか、実はこざかしすぎるなお前」
「いやいや、冗談きついですって……」
「おめえがな!! ご丁寧に血の匂いまで再現しやがっ」
「い、言わないで!! 気づきたくない!」
「おまっ、だれに向かって口きいてんだ」
がん、と部屋に土足で上がり込み拳を振り上げた遠藤さんにひいっと身をかがめると、真ん中にいるレイヤーさんは眉をあげて、ふむ、と言った。
「術者である貴様が命の危機にあり私を呼び、その悪漢から助け出せば私はお役御免ということで相違ないか?」
「え。はい、多分」
「誰が悪漢だ!」
「こんな茶番に付き合っている暇はないからな」
呼ぶとかなんとかはよくわからないが、命の危機ではあるし、助けてくれるなら助けてほしい。俺がうなずくと、彼は遠藤さんに向き合って剣を構える。
遠藤さんもただならぬ気配に構え、ぎろりとレイヤーさんをにらみつけた。
「……何する気だ」
「貴様に恨みはないが……いたしかたあるまい。オデゥスロ・ロティレス・エル・メディオーラ!」
「…」
「……」
「………」
え。
「……ふむ」
何も起きない……?なにかめっちゃおきそうだったけども。
「び、びびらせやがって、このヘンタ、ぐああっ」
「えええええええええ」
結局レイヤーさんは何かめちゃめちゃファンタジー起きそうでなにも起きなかったので、顔面を殴って遠藤さんを沈黙させた。