『新・私のエッセイ~ 第72弾 ~ 中学教師、青木先生の思い出
ぼくが中学1年のときの体育教師・・・
それが、お題目の青木先生だ。
日に焼けたマッチョな男の先生で、当時、30代前半といったところか。
角刈りっぽい短髪で、メガネをかけ、ときどき、シャツの下の大胸筋をピクピクさせては、ぼくらをビビらせていた。
どちらかというとイカツイ顔で、正直、あまりハンサムではなかったけれど、
笑うと、なんともいえないくらい魅力的な「ニヤリ」とした表情で、ぼくらもつられて笑ったものだ。
ただし、
この先生も、ご多聞に漏れず、『昭和系体罰』というものを、よくぼくたちに仕かけてきた。
・・・といっても、骨折させたり、アザができるほど殴ってたわけじゃない。
「ほほをギューッと指でつまむ」
これだけである。
しかし、体力と筋力と握力に満ちあふれた、若き男性体育教師のこと。
ソレがどれほど痛いのかは、容易に想像していただけるものと思う。
体育の授業時に、なにか忘れ物があったり、集合の号令になかなか従わずにテレテレしていたり、いつまでもふざけてベチャクチャとくっちゃべってたりすると、
先生は、容赦なく、誰かれかまわず、片手でそいつのほほをつまみ、
「・・・わかりましたか?」
と、つまんだ生徒に訊き、
生徒が、
「わ・・・わがりますた・・・」
と半泣きしながら、蚊の鳴くような声で答えると、
「・・・何がわかったんだ?」
といいながら、グニグニとつまんだ指の圧力を増していって、左右に振り、他の生徒がゲラゲラ笑ってみているのをニヤニヤしながら眺め、
最後には、思い切り、指をブチンと「振り抜く」のである。
ぼくも一度だけやられたことがあったけど・・・
いや~、痛いこと痛いこと(笑)。
「いででででッ!」と、見せしめにやられた生徒が騒いでしゃがみこんだりすると、そいつのクラスメートやら合同のクラスの連中から、さらにドッと笑いが起きた。
・・・けっして、陰湿な体罰ではなかった。
ちょっとした「寸劇」に似た雰囲気と明るい笑いさえ、そこにはあったのだ。
このように、昔の小中高では、程度に差はあれど、『体罰』というものが当たり前にあった。
だが、少なくともぼくが在籍していた学校では、PTAや教育委員会にまで報告が届くほどの悪質な案件はなかった。
まぁ・・・
あとでぼくが紹介する、小6の秋の、
『高原少年自然の家・殴打事件(仮題)』を除けばね・・・。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さて、
また話がそれた。
そんな青木先生も、
やがて、人事異動にて、矢板中学校を去る日がやってきた。
・・・離任式当日。
先生からぼくたち全校生徒に、こんな言葉が。
「ぼくは体育教師。だから、ほかの先生方のように、教養があって難しい言葉を君らに贈ることはできない。
ただ・・・いっしょうけんめい、生きてください。」
・・・感動した。
ぼくは、あれから40年たったいま、
あのときの先生よりもずっとオッサンになってしまったいまでも・・・
先生の離任式での、あの短いメッセージを忘れることができない。
青木先生、
お元気ですか・・・?
m(_ _)m