再び予知警報発令~デジャヴを添えて
前回、休日に付き人の橘と大子は
少し遠出をして、『Sweet Cacao 』という海辺の有名な宿屋に泊まった。
そこで、休みを満喫するはずが
一人の女性の行動により緊急時へと変わった。
その女性は、父の会社が倒産してからもたくさん苦労をしたようで
お話を聞いてから、とりあえずは
真邊家で使用人の一人として働くことになった。
今日の天気はくもりのち雨、
予報では、夕方以降から大雨になるらしい。
残り一日の休日、
大子は、部屋で考えていた。
なぜ、あのとき(女性が飛び降りしそうだったとき)耳鳴りがしなかったのか...
危機を察知するものとして、予知として耳鳴りが発動するのではないのか?
これは、身内にだけ発動するものなのか...
でも、車の事故は他人で まるに出会う時も他人だったけど耳鳴りはした。
ますますわからず、授かり物は神様の気まぐれなのか
それとも...
大子はもう一度、鳴り神社へ向かった。
そう、あの頃のように一人で...
その頃付き人の橘は、急な呼び出しで出張中の大子の父のもとへ向かっていた。
心配で大子から離れたくかった橘は、役目を終えたらすぐに戻る予定だ。
鳴り神社へ到着。
住職さんは、あいにく留守だった。
貼り紙があり、『実家へ一時帰省するため、留守にしております。ご用の方は近くの神主さんに連絡してください。』
大「はぁ...はぁ...。留守
でも、神様に直接聞ければ...」
賽銭箱にお金を入れると、心の内を話していく。
そして、また考えるべく帰宅しようとした
が、耳鳴りに襲われた。
今までにないくらい強い音と頭痛...
大「っ...う.........ぐっ な...なんだ これ」
まるであの頃みたいに...
祖父が亡くなる前の日みたいに強く...
大子はそこで気を失ってしまった。
一方、そんなことをなにも知らない橘は急いで帰宅中だった。
橘「嫌な予感が...急いで坊っちゃんの元へ」
(救急車の音)
大子は、偶然近くを通りかかった神主さんに見つけてもらい
不幸中の幸いにも助かった。
夕方の雨の中、住職さんに頼まれていた管理で、
神主さんは見回りをしていたらしい。
そこに通りかかったら、一人の男性が倒れており
急いで救急車を呼んだということだ。
(病院)
大子は、雨に濡れたのもあってか
高熱をだした。まるであの頃のように
確か、あの時も鳴り神社へ行って...
大「...ん...?ここは...」
「目が覚められましたか!」
ぼんやりとしていて、よく見えない...
橘「坊っちゃん...わたくしが離れたばかりに...」
橘だ...なんでそんな悲しそうな顔をしてるの?
僕は大丈夫だよ。身体良くするから...がんばるからさ...
大「っ!あ...」
突然起き上がると、橘に止められる
橘「だめです!坊っちゃん、まだ起き上がられては!
ごゆっくりお休みになってください。坊っちゃんは今、熱があるんです」
大「え...。」
一旦落ち着いた矢先、大子の母親が血相を変えて入ってきた。
泪ながらに、無事でよかった。と。
母は、大子と話をして
無事であることがわかると、安心してまた明日来るわね
「ゆっくり休むのよ。」と言って帰宅した。
橘は付き人ととして、そばにいることが勤めなので
病院に泊まる。
大「...なんで、何も聞かないの?」
しばらく黙って、りんごを剥いていた橘が手を止めると
橘「今は、熱もありますし お話は体調が良くなってからでも良いでしょう。
急ぐ必要はございません。」
大子は、自分が取った行動が回りに迷惑をかけたこと...ひどく罪悪感と責任感を背負い、落ち込んでいた。
熱は下がり、体調も安定し すっかり良くなっていった。
入院してから4日、退院できることになり
家に帰宅した。
気づけば学校も休んでいて子供のころと変わらない...
病み上がりで一日休んだが、次の日は行けると周りに心配されながら見送られた。
その帰り、橘と前に行った公園でtea timeをしながら、
出掛けた日のことを話した。
大「僕が勝手に...
耳鳴りの仕組みがわかってから、予知するときや危機があるときは鳴るんだって勝手に思い込んでて、星光さんのときに鳴らなくて...なんだかわからなくなって...だから、鳴り神社へ行って確かめようとしたけど、住職さんが留守で、
お参りだけして帰ろうとしたら、強い耳鳴りに襲われて...気づいたら病院だった」
橘「わたくしがもっと早く坊っちゃんのそばに行けていれば...
お辛い思いをされなくてすんだのですが。」
二人ともお互いを責めて、空気は重い
橘「坊っちゃん、もうご自分を責めるのはおやめください。
次はわたくしもご一緒に行きます。一緒に悩み、一緒に解決していきましょう」
大「うん...僕もごめん。わかった、次はちゃんと橘に相談するから」
二人のすれ違いは話してなんとかなるのだろうが、
大子は、耳鳴り予知の仕組みがますます気になっていた。
性格上、あいまいな結果より
はっきりとした答えがでたほうが納得がいくからだ。
あのとき鳴り神社で強い耳鳴りがしたのは、
これから起きることなのか、不安もありつつ
警戒しながら、日常のあらゆる場所で気を張るようになっていた。
本人は気づいていない。
街で買い物をしていると、
?「え?あれやばくない」
「人じゃねぇのか?」
どうやら、ビルの屋上に誰かおり
やばい空気のようだ、
大子は急いでビルの中に走って行くが、橘に止められた。
橘「坊っちゃん!行けません。坊っちゃんが危険な目に遭うのは...」
大「でも、このままじゃ...」
橘は、すぐに警察に連絡し 万が一を想定して下で受け止めてもらえるように
救護を手配した。
もちろん、屋上にも手配してある。
ビルに入っていくと、屋上へ行くはずのエレベーターは故障しており
使えない。
別のエレベーターで行けるギリギリのところまで乗った後、階段で向かった。
走って、登って、走って、登って、
大「はぁ...はぁ..っ くそっ!」
長い階段をひたすら登って
ようやく屋上に着いた。
言っていたとおり、人だ。
年配の男性が、屋上から飛び降りようとしていた。
大「またかよ...ったく!
そこのあんた!ストップ!!!」
寸前で止め、男性を助けることができた。
男性は、体の力が抜けたのか座り込み
「すまない...すまない」と繰り返していた。
警察に保護され、連れていかれると
入れ替わりに橘が大子の元へきた。
大子はへとへとで、座り込んでいた。
橘「坊っちゃん!ご無事ですか!」
大「っ...けほ けほ 大丈夫なわけ...」
長い階段を登って、人をたすけて
体力も気力も参っている。
橘「坊っちゃん、人助けをされました。
素晴らしいことをされたのです」
大「そう...だけど。こんなんばっかだよ。」
橘「坊っちゃん、もしお辛ければしたまでおぶりましょうか?」
大「はっ?!い、いいよ歩いていく。ちょっと...
休ませて。」
今日も人を救った。
大子の神経が削れそうなくらい人のために走って、登って助けて
耳鳴り予知 回避成功だ。