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苦味と甘味のチョコレート


もう...終わりにしたい。


生きてる意味なんか...  居ない方がよかったのに



(鳥の鳴く声)




今日は休日。学校がなく、三連休と 人間、過ごし方に個性が出る。



大子は、気分転換に出掛けることにした。

もちろん...付き人の橘も同行する。


理由は..やはり...



「坊っちゃんのことが心配故、お伴いたします。」とのこと。


二人で話した後でも、この過保護さが相変わらず鬱陶しくもある。



大子が出かける先は、「展望台で絶景を眺められる、海の見える場所」


名前は、「Sweet Cacao」


この場所は 観光客が訪れる有名な場所。


ここの有名なものというと、ビターチョコレートとミルクチョコレートの層になった スイーツ。パフェのような見た目で、パリッとした表面に加え、

生チョコのやわらかい口どけが女性に大人気なんだとか。

もちろん、男性も虜になるあじで 訪れる人は(そう)チョコ目当てで来る人もいる。



大子たちは、部屋に案内される。

一歩踏み入れると、そこは

内観がとても綺麗で神秘的なロビー。まるで外国に来たかのような美しさ溢れる

ホテルに泊まる。


ベッドはツイン。ホテルに来たって感じにさせる、あのお馴染みの景色。

部屋に荷物を置くと、大子は海を見に行きたいということで

展望台へと向かう。

もちろん...橘も片時も離れずついてくる。



展望台に行くと、誰もいなかった。


どうやら、夕方から雨の予報があるらしく 展望台から下へ行く階段は長く、滑りやすくなるため、みな室内のイベントを楽しんでいるようだ。


そんな中、一人の女性が展望台へと上がってきて

海を眺めていた。その姿はなんだか寂しそうに見えた...


大子も展望台からの景色を楽しんでいると、橘に一本の電話が。


橘「少し 失礼します。」とその場を離れて話に行ってしまった。


大子と女性だけが残り、大子が満足して下りようとすると

女性は、展望台の柵に登りだした。


大子は慌てて「危ないですよ!」と止めると

女性は、その場にしゃがみこんでしまった。


女性「ご...ごめんなさい」


女性は泣いてしまい、大子は、泣かせてしまったとおどおどしていた。


大「す...すみません!泣かせるつもりは...

前に乗り出して落下でもしたら危ないので...」


女性「そうですよ。...そ そのつもりで...」


大「えっ?...」


女性「もう...終わりにしたいんです!

生きてる意味なんかないんです!私なんか...


私なんか!居ない方が...」



突然のことでびっくりはしたが、ここは冷静になって女性をなだめることに。


大「そんなことはないですよ。何かお辛いことがあったんですよね?

僕はまだ学生ですが、何かてきることがあれば言ってください。

力になります。あ、そうだ!今から一緒にお食事に行きませんか?


ここの有名な、層チョコ食べましょう!」


女性「あなたは優しいですね(涙)

でも...私、ここに宿泊してませんし、お金も...」



大「それなら大丈夫ですよ(^-^)

僕がなんとかします。」


女性「ご迷惑ですから...そんなことはできません。」


大「今は、お姉さんに楽しんで欲しいです!

だから、まかせてください!」



というわけで...トラブルに首を突っ込んで

見知らぬ、命を投げ出そうとしていたお姉さんとお食事に。


なんにも知らない橘は、ただただ、坊っちゃんに身の危険があってはならないと

自分の未熟さに反省していた。



改めて、お話を聞くと

女性の名前は、山崎(やまざき)星光(きらら) 年齢は26歳。

大子の10子上だった。


どうやら、高校生の頃に父の会社が倒産して

母も過労でなくして、星光は祖母の家で過ごしたのだが、

その祖母も他界。高校は無事に卒業できたものの

就活を頑張るも、パワハラ上司に嫌がらせを受け退職。


バイトでなんとか繋いでいたものの、人間関係がうまくいかず

バイトしていたお店も古くなって廃業。

その後、面接や応募を繰り返して粘るも不採用が続く。


そんな中、金銭的に危うく 助けてくれる友人や家族も居ない。

頑張ることに疲れ、最後はどうせなら綺麗な景色をみて 飛び降りるつもりだったらしい。


その話を聞いて、大子は 「そんなに努力できるのは追い詰められながらも頑張ってきたからだと思いますし、ここまでこれたんだと思います。生きる今はちゃんとあります!あなたの気持ちをすべてわかるとは言いません。けど、星光さんは素敵です。何かのためにそこまで頑張れるって誰にでもできることではありません。

傷だらけになって、うまくいかなくても何度も立ち上がったから...」


不思議と、大子は必死になって 泣きそうになりながら語って

星光さんは、自分のためにそんなに熱くなってくれた人は初めてで

泪ながらに「ありがとう」と伝えた。


星「(ご馳走になった層チョコは、苦くて甘い。おいしい 私はまだ生きてていいんだ。もしかして、誰かに見て欲しかったのかな...自分の存在を認めてほしくて、誰かに止めてほしくて...っふ...私ってめんどくさい人間ね)」


そこから、これからどうしようかの話に。


とりあえず、お金もなく行くところもない状態で放っておくわけにはいかない。


警察に届けて、保護してもらう手もあったらしい。が、

大子は(はな)からそのつもりはなく。


(真邊家)うちに来ませんか?という提案をした。

みんなやさしく、受け入れてくれると思う。と話した。


橘「さすが坊っちゃん。そうおっしゃると思いました。」


そういうと、一泊二日の休みを終え

星光さんを連れて帰宅した。


出張中の父に、母、使用人、みんなに伝えると。


皆喜んで感激してくれた。

星光も嬉しくて泣きながらありがとうございますと何度も伝えた。


星光は、まさか助けてくれた高校生の男の子が、お金持ちの子供と知らず

はじめは驚いていた。

それでも、大子の「本当にみんな優しいから大丈夫ですよ( ´ー`)」という言葉に

ほっとして、話をすることができた。


そして、

最初は使用人の手伝いからはじめることになった。


星光もがんばります!と気合いを入れて意気込んでいると、若い使用人数人が

固くならなくていいんですよ!失敗したって誰も怒りませんし、奥さまも

自分の子供みたいに「濡れなかった?」とか「怪我してない?」とか心配してくれますから。私たちもそれに甘えず仕事をがんばらなきゃって必死になってましたけど、奥さまが「気は楽に仕事は丁寧に。人間だから失敗するのはあたりまえ。できないことをダメ出しするんじゃなくて、できることを褒められた方が嬉しいでしょ(^-^)」と言われて一から丁寧に覚えられました。


使用人「私も前の仕事でパワハラ受けて、間違ってることを勇気だして指摘したら、「お前が間違ってる!そんなミスお前らでなんとかしろ!部下のミスは少しくらい目をつぶればいいだろ!優しくないな」って言われて、そこで気づいたんです。こんな会社で働いてる自分がおかしいんだって。狂いそうだったんで、清々しくやめてきました(^-^)」


星「そうだったんですか...大変でしたね」


使用人「それはあなたもでしょう?大子坊っちゃんからお聞きしました。

かなりしんどかったでしょ...私たちにできることあったらいつでも頼ってくださいね!」


「そうですよ!人は助け合いあってこそ楽しく過ごせるものでしょう?」


星「ありがとうございます!」



使用人たちと話せて、星光は大子たちの前ではじめて笑顔を見せた。





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