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橘(たちばな)が真邊(まなべ)家に来た頃


前回は、耳鳴りの原因と仕組み それは神様から授かった能力だということや

子供の頃の大子が望んだ結果だった事がわかり、

これからは、なんとか対応して生きていくしかなさそうでした。


後日改めて、鳴り神社へのお礼参りをすることにした。



橘とお礼参りの帰りに話していたのだが、


大「そういえば、どうしてそこまで僕のことがわかるの?

それに...もう子供じゃないから、そこまで過剰に心配しなくても良いよ」


橘「そうですね...坊っちゃんの事を全てわかりますとまでは行きませんが、

わたくしにとってはじめての付き人ですし、坊っちゃんを心配するのは

普通の事なのでございます。」


二人は付き人と主という関係でありながら、長い付き合いだからこそ

親友のような関係でいられるのかもしれません。


会話をしていくうちに、話の話題は


橘が若くして真邊家に来た頃の話になった。


大「橘は...どうしてうちに来て 使用人として働こうと思ったの?」



橘「そうですね

あれは...わたくしがまだ二十歳前後の頃です。


わたくしの家は普通の家庭で、父は会社の社長でした。

父は厳しくもありましたが、それは人として、恥の無いように生きるよう

子供の頃から、挨拶などを教えられ学んできました。


そして...母は優しく温厚な人で、たくさんの愛で包み込みこんで愛してくださいました。母の職は食べ物に困る人達をサポートするボランティアの仕事をしておりました。両親共に尊敬し、何か自分にも人のためになれるような職に就きたいと思い、探した続けました。」



大「素敵なご両親も凄いと思うけど、橘自身の努力家なところが

昔から備わってて、僕も勉強になるよ」


橘「何をおっしゃいますか、坊っちゃんこそお優しくて努力家ではありませんか。」


お互いに褒め合って、まだ知らなかった昔の話。

そして、本題の橘が真邊家に来た頃の話へ。


橘「わたくしが18歳の時でした...」




回想


橘父「勇武(いさむ)、お前に話がある」


勇武は、高校を卒業後、ちょうど職を探している最中だった。

そこに突然父から呼び出され、部屋にいくと


勇「話とは何ですか?」


橘父「うん...。

お前、今 職を探しているだろ?

自分で道を決めたいのはわかっているが、紹介したい家があってな。」



勇「はい...。家ですか?

おっしゃる通り、職探している最中で、できれば自分で決めようとは思ってます。けど...」


本人は、「親に決めてもらう事が嫌だ。」という概念はないが、

自分で決めようとも思っており、とりあえず話を聞くことに。


橘父「紹介したい家というのが、『真邊(まなべ)』という家だ。

一応、わたしの同級生が居てな...


父親が金融関係の社長で、わたしの同級生はその人の奥さんだ。

だが、息子が生まれつき病弱で 生きるか生きられないかの中眠っているらしい。

そこでだ...


お前に、そこの子の付き人を推薦したい。

向こうには、お前の礼儀と人付き合いの良さも伝えてある。

お前にぴったりだとおもったが、本人の意志が重要だ。

押し付ける形になって申し訳ない。無理にとは言わない。

一度会って欲しい。それから、どうするか決めるのはお前の判断で構わない。」


今までで、こんなに必死な父を見たのははじめてだった...

一度挨拶に行くのも、経験であり

息子さんの様子も気になる...


勇「わかりました。

一度、挨拶に伺おうと思います。」


ということで、真邊に挨拶に行くと

息子さんに会わせてもらった。


まだ幼く、年齢は4歳だそうで

布団をかけた状態でベッドに座って、絵本を読んでいた。


その子の母親から話を聞くと、今日は少し体調が安定しており

絵本を読ませてもらったらしい。いつもは起き上がるのも心配されるほど

なので、今日はたまたま良い日。


母親は、家事との両立もあり手が話せず、

使用人もいるが、一番家の管理をしているのは母親だ。

困っていたところに、自ら「僕が息子さんのお側にいますよ。なので、安心して

家事に戻ってください」


勇「初めまして、僕は おかあさんの知り合いの たちばな いさむ って言います。よろしくね」


大「はじめして...僕の名前はたいしって言います。お兄ちゃんは、おかあさんのお友達なの?」


勇「そんなところかな(^-^)

たいしくんは、なに読んでるのかな?」


大「この絵本はね、赤ちゃんゾウさんがびょうきで みんなと同じように遊べないの。でもね、おかあさんゾウさんが、(大丈夫よ、同じじゃなくても、遊べなくても、ぼうやはぼうやはなの。今は無理かもしれなくても いつの間にか自由に歩けるようになるわ)この赤ちゃんゾウさんがね、少しずつ歩く練習してね からだもだんだん強くなって びょうきも良くなって、さいごにはおかあさんと仲間のゾウさんと楽しく走り回ってるんだよ」


勇「すてきなお話だね(^-^)」


大「うん。だから僕も強くなって、遊んだりしたい。みんなとおはなししたい」


勇「きっと大丈夫だよ。この絵本みたいに、たいしくんも強くなるよ。」


大「ほんと?でも、どうやって強くなればいいかな?...ゾウさんは歩く練習をして歩けるようになったから...」


勇「じゃあ、また僕がここに来て たいしくんとお話ししてあげる。

たいしくんやおかあさんが良ければだけど。」


大「ほんとう?お兄ちゃん、また来てくれる?僕とお話してくれるの?」


勇「うん(^-^)たいしくんのそばにいるよ。」


この事は、お母さまや橘の父に話をすると 喜んで承諾してくれた。



このときにはじめて坊っちゃんと会話したんだ。

ここから、自分の可能性を見つけられる気がして。



あれから、真邊家に通い ずっと大子のそばにいた。

看病も、おはなしも この子のためなら、役に立てるなら

僕は、この子のそばにいたい。ずっと...



そして、20になった頃、正式に自分の意思で

真邊家の使用人になった。


一から、真邊家の事を学び

仕事を一から教えられ、ご両親から、大子の付き人になって欲しいと推薦された。


僕は喜んで承諾した。

この子のそばにいられる...この子を守れる。


大子坊っちゃんもとても嬉しそうに喜んでくれた。


そして今、真邊家と坊っちゃんの付き人として腕をあげ

過保護に心配して守っている。


橘「というわけでごさいます。

わたくしは、坊っちゃんのお側にいられてとても嬉しく思います。

坊っちゃんの付き人でよかったです」


大「そうだったんだね。僕は橘がお兄ちゃんだったらよかったのにって

当時は思ってたんだ。でも、付き人になってからずっと僕のそばにいてくれて

話し相手になってくれて、とても嬉かった。僕も、橘が付き人でよかった。

ありがとう(^-^)」



帰りは、両親に内緒で、カフェに寄りテイクアウトして

公園でお茶をした。




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