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一つの個性



○○○○年6月、大子へ一本の電話があった。

神社の住職さんからだった。

内容は、「もしかしたら、お坊っちゃんの耳鳴りの原因がわかるかもしれません」ということだった。


なぜ、この状況に至ったかというと


実は…

付き人の橘が調べに調べを重ね動いてくれていた。橘が昔、大子との約束を思い出し、近くの神社を調べ回っていたのだ。



大子が子供の頃、身体が弱く外出ができないからこそ 橘がずっとそばについて、話し相手になっていた。


そこで、「この近くに健康を守ってくださる神様があるんですよ(*^^*)」と、話していたこと、「坊っちゃんの体調が良い時に一緒に行ってお願いをしにお参りに行きましょう(*^^*)」 



そんなわけで、橘の活躍により 耳鳴りの原因がわかるかもしれない神社へ向かった。


神社の名前は「鳴り神社」そう、大子が子供の頃 高熱で寝込んでいたとき一人抜け出して、命懸けでお願いをしに行った場所だ…。



鳴り神社へ着いて、

住職さんが優しくお迎えしてくださった。


住職さんが「最近気になる事があるんですよね?」

と聞いてきた。


その気になること というのが、「耳鳴りだけでは無く、お坊っちゃん自身

他に何か心当たりのある事があるのではないかと。」

つまり、耳鳴りが何かを予知するサインだということについて

住職さんは見抜いていた。



大「僕自身が、どうして耳鳴りがなるかもわかりませんでした。

ですが、最近になって この耳鳴りが何かを予知するものだと仕組みに気づきました。でも、いつからなのかまでは...ほんとにわかりません。」



橘「もしかしますと...」


付き人の橘が、心当たりのあるような事を話だした。


橘「坊っちゃんが幼い頃に、一度高熱を出されて二日間寝込んだ日がありました。その時、坊っちゃんがどこかへ出掛けていたと思うのですが...」


住職「それは、ご本人にお話しされましたかな?」


大「聞きました!ついこの前...。橘と僕は唯一秘密を話したり、約束事をしたりするずっと一緒に過ごしてきた人なので。」


そう、大子が子供の頃から、橘が若くして真邊家に来て大子の付き人としてずっとそばにいたこと。

そして、これからも...



橘「おそらく、約束が果たせなかった事が原因かと...。


あの頃、坊っちゃんの体調が良いときにわたくしと一緒に神社へ健康祈願をしに行く約束をしてました。ですが、その体調が良い日に、旦那様の予定が重なってしまい、お側にいられませんでした。」


大「僕が勝手に焦って、無理にお願いをしに行ったから。

ごめんね、橘。僕が約束を破ったんだよ」


橘「いえ、わたくしがもっと坊っちゃんを気にかけるべきでした。」


二人は、あの頃の約束が今果たせるかもしれないと

胸に秘めた思いを伝え、和解した。


住職「心のうちを話せる人がいらっしゃる事はとても素敵なことです。

きっと、お坊っちゃんと橘さんなら、これから先何があっても

乗り越えられると思います。」


そして、本題へ。


住職「橘さんがおっしゃるに、お坊っちゃんは

この鳴り神社へお参りしたことで、耳鳴りを授かったと思われます。」


   ・・・・

大 「授かった?...」


橘「それはいったいどういう...?」


住職「おそらく、鳴り神社に(まつ)られている 龍神様の力かと。」


鳴り神社とは、江戸時代末期、人を斬り殺す事件が多発。一人の罪人が神を祀る祠を壊し、神の怒りに触れた罪人に雷が落ちたという。その時、雷鳴と共に雲の中へと龍が消えていったのだとか。


住職「龍神様が、お坊っちゃんの必死で懸命なお姿を見て

力を授けたのだと思われます。」


ここは、前向きに人生を歩む人や日々、人に親切であることなど

生きている人を応援する優しい神様なのだとか。

願い事をすると叶うと言われている。


大「じゃあ...僕は、あの頃必死なお願いをしたから

神様が力をくれたと?」


住職「はい。

ただ、お坊っちゃんがお望みになった願いなので

神様が力を取り下げてくれるかどうかは...なんとも。

お力になれず、申し訳ありません。」


大「いえ!耳鳴りの原因がわかっただけでも、とてもありがたいです。

僕が望んだ事ですし、神様のおかけで、昔より体調も安定してて

普通に生活できてるので、幸せです!」


橘「坊っちゃん...」


住職「そうですか( ´ー`)

でも、何かあれば いつでもいらしてください。

これも何かの縁ですから、悩み事でもなんでも、世間話でも お聞きします。」


大「ありがとうございます!」


橘「わたくしからも、ありがとうございます。」


耳鳴りの原因もわかり、橘とも久しぶりに本音で話せたこと。

時間も夕方になり、ではまた。と帰ろうとすると、住職さんに一言言われた。


「お辛いことがあると思いますが、人は持ってるものも持ってないものも

それらは、一つの個性だということ。」



僕の耳鳴り予知を、一つの個性だと言ってくれた住職さん。

比べられるものなど、この世にたくさんあっても

これは、僕だけの個性。


できないことを悩むより、できることがあるだけで、それだけで素敵なことなんだと。今日は、たくさん教えてもらった気がします。




これからも彼の予知は続く。


防げるかわからないけど、守りたい。

神様から授かった能力を、大切に...



帰宅途中の車内で、僕は思い出した事がある。


本当に小さい頃、祖父が教えてくれた事。



..................回想.....................



祖父「大子、何かをいただいた時には必ずお礼をしなくてはならない。

それは、あたりまえであり普通のことだ。だが、もらうことをあたりまえに思うものもいる。」


大「ありがとうって言わなきゃいけないんだよね?」


祖父「そう。」


大「僕、ちゃんと言えるよ?お客様にお菓子をもらった時ね、くれた人にちゃんと、ありがとうございます!って言えたよ」


祖父「そうだね。大子みたいに相手へのお礼を忘れてはならない。

だから、どんなに嫌い人がいても何かしてもらったら、しっかり返さなくてはいけないよ」




懐かしい。

僕はわかっているようで、結局は子供ながらにお礼ができることを

誉めてほしかったのかな?


橘「坊っちゃん、着きました。」


大「ありがとう 橘。」



しっかりと、後日


鳴り神社へお礼をしに行かないと。




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