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不思議で奇妙な男の子

誰もが信じることをしなかった、

彼の言った通りに何かは起こる。


これは彼の身に起きたお話です。



〇〇〇〇年8月4日 小学2年生の夏休み

この日は鬱陶しいほどの猛暑日で、

熱中症にならないよう対策をしつつ部屋も温度調整に注意しながらエアコンをつけている。そして、僕はベッドで眠っている。


そう、生まれつき身体が弱かった。

体力や免疫が低く、もしかしたら生まれても生きられないかもしれないと余命宣告もされていたんだとか。そんな家の息子に無事生まれ、家の中で眠る生活が続いているがなんとか過ごしている。


僕の家は、代々受け継ぐ金融関係の仕事で、真邊家は政治や国との大きな交流もある


いわば、財閥の家である。

そこに生まれた一人っ子の僕はそれはそれは可愛がられたんだって。


子供の頃を思い出すといつも同じ景色だ。


彼の名は「真邊(まなべ)大子(たいし)8歳

夏休みの最中、今日もベッドで寝ている。


大「つまらない…こうも毎日毎日寝てばかりでは退屈極まりない。」


身体が弱い大子は、寝たきりの生活に退屈しながらも、母や、使用人を通じて同級生などからたくさんの本が何冊も届く。


もちろん漫画も数十冊あり、その中でも好きだったのが、ミステリー小説やオカルト系の物。


解明されていない不思議な現象や、異世界もの、妖怪、それらの本ばかりを吸収するように読み尽くしている。



大「そうだ、こっそり抜け出して

鳴り神社へ行こう。」


鳴り神社とは、江戸時代末期、人を斬り殺す事件が多発。一人の罪人が神を祀る祠を壊し、神の怒りに触れた罪人に雷が落ちたという。その時、雷鳴と共に雲の中へと龍が消えていったのだとか。


それから鳴り神社には龍神様が祀られ、

邪気や健康、安産、金運など参拝しにくる人が多数。


大子の体力では到底辿り着けないと、身内のものは口を揃えて言うが、

大人の足で4分とすぐにたどり着く近場に建てられている。子供の足では1時間はかかると冷やかしのように周りと大人たちは子供に言い聞かせるのだ。


そんなこともお構いなしに大子は、

母にバレぬようこっそり抜け出し

秘密のルートから家を出た。


苦しそうに息を切らしながらも、少ししかない体力で神社は辿り着いたのだ。


貯めていたお小遣いの中から五円玉を取り出すと、お賽銭箱に投げ入れ丁寧な挨拶でお願いをした。


大「神様、どうか僕の身体が丈夫になり

みんなの役に立てますように」


そして最後にまた、丁寧にお辞儀をし

神社を後にした。


ヘトヘトになりながらも家につき、

部屋に辿り着く前に廊下で倒れてしまった


次に目を覚ました時には、朝の事だった。

ベッドのそばには、洗面器に濡れタオルと母が手を握りしめたまま、僕のベッドに伏せて眠っていた。


僕はそっと起き上がると、それに気づいた母が僕の顔を見るなり泣き出してしまった


母「よかった…目を覚ましてくれて

このまま眠ったままだったらどうしようって…」


母の話によると、廊下で倒れている僕を使用人の一人が見つけ、高熱で2日も眠っていたそうだ。

2日ぶりに目を覚ました僕の体は、すっかり軽くなり、体調はみるみる良くなって行った。


ただ、耳鳴りが良く起きるようにもなった


医者に見てもらっても、ストレスだと言われるばかりで、唯一耳鳴りだけは治らなかった。


決して頻繁に起こるものではなく、

祖父が亡くなる数日前、部屋で本を読んでいた時に、急に耳鳴りがした。

それは激しく、頭痛がするほど大きな音で

次第に小さくなって、スッと消えるのだ。


その4日後に祖父が亡くなったが、

これは偶然なのかそれとも、ミステリーやオカルト系で言う何かのメッセージなのだろうか?


特に気にせず過ごしていた。


そんなこともありながら

小、中と無事に卒業し、高校生になった今身体も子供の頃よりはマシになった。

体力面で少し疲れる時はあるが、免疫は上がっているとのこと。通院しながらも

現在高校生の醍醐味といえば青春!

友人と楽しい日々を満喫している。



大「じゃあな!」


この日も普通に下校していると、

また、耳鳴りだ…


大「っ…また…」


しばらくして落ち着き、早く家に帰ろうと

歩くスピードを早める


すると、木からカラスがカーッと鳴き飛び出してきた。

突然のことに驚き足を止めると

ガシャーン!


大きな音が響き渡った。


カラスは目の前を通り過ぎバサバサと大きな羽を広げ飛び去って行った。


遮られていた視界がなくなると、目の前で車が横転し、ガードレールに突っ込んでいたのだ。


僕はびっくりして、急いで救急車を呼んだ


運転手は幸い命に別状はなかったそうで、

何より、僕があの時救急車を呼び助けてくれなければ死んでいたと、運転手のご家族にお礼の訪問があった。


家族や使用人まで、皆で僕を褒め称えるのだ。


大「そりゃあ、人を助けたことに後悔は無いし、無事だったのなら僕はそれでいい。」


助けたと言っても、事前に事故を防げたらどんなによかったのだろうか…

大子は不思議そうに記憶を振り返る。


大「あの時、カラスが飛び出してこなければ、僕は車に巻き込まれて死んでいたかもしれないし、もっと大惨事になっていたかもしれない。


そういえば…あの時、カラスが飛び出す前耳鳴りがした。


まさか…ね。偶然だよ…ね?」




その日は運が良かったのだと、神様に感謝を述べて眠りについた。



今日は休日で登校日ではないため、友人を家に招き、お菓子パーティーをする。

通称:菓子パというもの。


そもそも、財閥の子とはいえこんな、平民のようなことが許されるのか?

友人は疑問に思っているらしく、

お菓子をつまみながら説明をした。


うちは後継ぎという強制的な教えはなく、

父は厳しく育てられたらしいのだが、

父は優しい人で、僕にはそういう風に育てたくはないと二人で話し合った。

そう母が教えてくれた。


それでも、忙しいことに変わりはない。

寝たきりだった子供の頃でも、その光景を

見ている。

動けるようになった今、寝たきりじゃないからこそ、僕はこの家で役に立てるならなんでもすると伝えてある。


が、なぜ後継ぎの話を僕にしないのか…

だいたい検討がつく。

何を隠すまでも無い、身体が弱いからだ…

最初からわかっていた、僕には務まらないことが…



それが最近になって、僕が積極的に家の手伝いをするようになり、いや…できるようになるまでに回復した。

手伝いと言っても、大きな企業に関わるわけでも、金融の仕事に素人の僕が首を突っ込めるはずがない。

手伝いというのは、家の家事手伝いのみだ。

母や使用人も嬉しそうに「ありがとう」と言われるようなった。


この事も友人には話してあるし、友人も受け入れてくれた。


「お前のために俺らもなんか手伝えることがあれば言ってくれ」と。


夕方になり、友人が帰った後ふと思い出した懐かしい記憶

そして、今思う。この気持ちは…


僕は幸せものだと思った。

子供の頃、祖父が僕のそばにきて言った言葉、幼すぎてわからなかったその意味も、

今はわかる。


大「僕は、守られていたんだ。

人の手で、大切に…


おじいちゃん、僕は幸せものです^_^

そちらからみんなを見守っていてください。」


仏壇に手を合わせ、部屋を後にする。


?「おや、坊っちゃんどちらへ?」


大「ちょっと散歩に行ってくる。」


この人は、僕の付き人であり

僕担当の使用人「(たちばな)勇武(いさむ)年齢は30代前半。

若いと言えば若い…この屋敷に来たのは20だと父から聞いた。

僕はまだ幼く、寝込みがちだったためか

ほとんどのお世話は橘がしてくれた。


橘「それは、私もお伴いたします。」


大「いいよ、散歩だけだし

すぐに帰ってくるから」


こうやって昔から僕を過剰に心配して

外出させてくれなかった。

病気がちだったせいで何を言っても

心配されっぱなしだ…。



もう高校生だというのに、どこにでも付き添ってこようとする。


お手洗い以外は…



橘「そう言われましても、前もそうおっしゃって帰宅後に疲労から熱を出されたではありませんか。」


大「それは子供の頃の話でしょ!

あの時は、まだ治りかけだったのを僕が

抜け出して外に出たからであって…」


橘「いえ、お伴させてください。」


変に頑固なのか、僕は信用されていないのか、内心少し鬱陶しくなっていた。

これが思春期特有のものなのか…



結局、橘は僕の後ろについてきて

何を言うでもなく

振り返ると目が合い、丁寧にお辞儀をされる。うちはそういう環境だったためか、

見慣れた景色だ。


けど、散歩についてくるは度が過ぎている気がする。


しばらく無言で歩いていると、

目の前に何かが飛び出してきたのだ。


突然の事で大子は驚き、尻餅をついてしまった。


橘「坊っちゃん!お怪我はありませんか?!」


大「あぁ…大丈夫だよ…

何かが飛び出してきて」


そこにいたのは、マルという名前が書いてある首輪をつけた柴犬だった。


橘「どこかで飼われている犬のようですね…飼い主が見当たりませんので

脱走でしょうか」


柴犬は僕に近寄り、その場に座った。

何かを訴えるように僕を見つめる


大「お前、あぁ…マル?って言うのか^_^どこから来たんだ?脱走か?」


砂を祓い犬目線にしゃがみ、

優しく語りかけると

犬は立ち上がり、どこかへと去ってしまった。



大「行っちゃった…」


橘「きっとお家へ戻られたのではないでしょうか?


坊っちゃん、帰りましょう^_^

お怪我がなくて本当に良かったです。」


大「大袈裟だよ!ちょっと転んだだけじゃないか。


そうだな帰ろ… ぅ…」


その時また耳鳴りがした。

とっさに耳を塞ぎ治るのを待つ。


橘「坊っちゃん?どうされました?


また、耳鳴りですか?(・ω・`)」


しばらくすると治るのだが、長い時は

一日中鳴り響く時もある。

それは稀で、祖父が亡くなる前は長かった。


大「大丈夫。もう治ったから」


橘「では、早くお帰りになりましょう^_^

身体に触るといけませんので」


そう言って、帰宅後 疲労は多少あったものの、体調を崩さず、その日は何事も無くぐっすりと眠れた。


この時は思いもしなかった。


次の日 起こった出来事をきっかけに

僕の耳鳴りの仕組みを理解し始める事になるとは。







※この物語の登場人物やストーリーはフィクションです。

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