妄想露天風呂
「あっ、水道止められて水が出ねえや。」
俺の名前は竜輝。42歳のフリーターさ。
ここ最近パチンコに使っちゃった為お金が底を尽きている。
3カ月経っても家賃を払えなくなったのでそれにしびれを切らした大家さんが水道や電気等止められてしまったのだ。
でもお風呂は5日入っていない。
どうしようと悩んだ挙句幸い蛙の貯金箱があったのでそれを床に叩き付けると500円入っていた。
本当はパチンコに使いたいとこだけどそこは押し切って急いで温泉へ行った。
「あのーすいません。ここ初めて来たんですけど。」
温泉は初めてだから少し緊張していた。
「あーっそうかいそうかい。良くいらっしゃったね。」
おばあちゃんが妖怪のようにヒッヒッと笑っていたので少し怖かった。
「ここ500円で入れますかね?」
と不安そうな顔して言った。
「ここは無料で入れるぞい。」
と相変わらずニヤニヤしている。
「え?本当ですか!ありがとうございます!」
無料で入れる温泉ってこの世にあるのかよって思ったがまぁそこは気にしないで取り敢えず服を全部脱いでドアをスライドさせた。
「うおーっ!露天風呂じゃん!」
ヒャッホイと思って水泳の日本代表くらいの勢いで飛び込んだ。
カチン!
「いってぇー!!!!!!!」
なんとこの露天風呂お湯が入っていない。
「おい!おばあちゃん!お湯入ってねぇぞ!」
と言うと
「そうじゃよ。ここは妄想で入るのじゃ!だから無料にしてる。」
くっ。タダだと言われて舞い上がってたがやっぱり世の中美味い話ってねぇんだなっと心の中でかみしめた。
「妄想か。ここは温泉・・・。温泉・・・・・。」
するとジワッと体全体が温まってきた気がする。
体がリラックス状態へとなり疲れが取れてきている。
「この温泉は肩こりや冷え性に効きますよ。」
とおばあちゃんが言いに来た。
「お湯入ってねぇだろうが!俺の妄想に入ってくるな!」
おっといけない。ここで疲れを取らないと明日もバイトがあるからな。
竜輝は集中させて温泉を頭に思い浮かべた。
「お背中洗いましょうか?」
さっきのおばあちゃんだが竜輝には着物をきたお姉さんに見えている。
「よ、よろしくお願いします。」
滅茶苦茶緊張しているが現実に戻ったら地獄を見る。
「こちらを利用して頂いてありがとうございます。」
とおばあちゃんはタワシで背中をゴシゴシ洗った。
「いえいえ。こちらこそ背中を洗って頂きありがとうございます。」
そう言うとおばあちゃんは風呂桶で背中を流した。
勿論お湯は入っていない。
「このお湯って凄い肌がスベスベになりますよね。」
竜輝は嬉しそうに言うとおばあちゃんニヤニヤした状態で礼を言った。
「ふぅ!さっぱりした!」
竜輝は頭濡れていないのにドライヤーで乾かした。
おばあちゃんが手招きで呼んでいる。
ご馳走がある。
「うおー!美味そう!頂きます!」
これに関しても妄想であり、何もない。
竜輝はお腹一杯になって幸せの状態で家に帰った。