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天守閣に人は住まない。あれはドヤるためのもの

 そこでまさに天の助けのごとく、画面上に幼女……もとい弁天様が映った。


「これこれ、今は遊ぶでない。はよ残りの敵を討伐せんか」


 女神様はちゃっかり自分もプリンを食べながら言うのだ。


「お試し版じゃからこれ以上のパワーアップは出来ぬが、この程度の軍勢、今の初期ステで十分じゃろ」


「ざ、雑魚? てか初期ステ!」


 今ですら弾数∞で高機動、おまけに敵の位置も弱点も完全把握なのに。


 初期でこれなら、制限が解除されたらどうなるんだよ一体。


「ほかにも勇者カタログや霊界ネットショッピングを使えば買い物も出来るぞ? どうじゃ、契約する気になったであろう」


 そこで画面にカタログが表示された。


『ガッツが欲しいここ一番に! 勇者パワードリンク・ガンバルゼット! 24本セット』みたいなわけ分からないグッズもあるが、それより食料品がめっさある!


 まるで平和だった頃のネットスーパーだこれ。


「す、すごい、食料とか医療物資とか毛布まで。これがあればメチャクチャ助かる……!」


「ほかにも色々ありますよ! ほら、ポイント貯めたら将来の職業とか家とかも。

 自分好みの結婚式場も建てられますし、ちょっと天文学的にお高いですけどお城まで!

 どうせ結婚するんですし、もうローンで予約しちゃいますね!

 ええと形は大阪城で大きさはエベレストより気持ち高め」


「待てよせやめろっ、早まるな!」


「善は急げですぅ」


「善じゃないっ!」


 必死で止める俺、「照れなくてもいいですから」と予約ボタンを押そうとする鶴。


 そんな戦いをよそに女神は言った。


「どうじゃ、仕組みは単純明快じゃろ? バケモノを倒せば八百万の神から報酬がもらえる。

もちろん直接現金ではないが、それに相応する幸福ポイントがな。

貯めに貯めれば、転んだ先に億の当たりくじがあって拾う偶然が一ヶ月連続で続くみたいなコンボも可能なのじゃっ(ドヤ顔)」


「う、宇宙が誕生する確率より低いんですけど」


「(無視)今回の敵を倒せば、幸運ポイントは3000万といったところか。人の軍勢で倒しても武器やら何やらで金がかかるじゃろうし、適切な額じゃ」


「そうです、日本を取り戻して黒鷹もみんなも幸せになるんです! 誰も損をしませんから!」


 鶴はそう言って婚姻届けを差し出す。


 笑顔が若干黒くてはあはあ言ってるのが本当に怖いんだ。



 ……ともかくそんな修羅場をよそに、俺は30体を超える巨大モンスターを全滅させていたのだ。


 普通なら人型重機を配備した一個中隊単位で、しかも多数の犠牲を払いながら撃退するはずのバケモノどもをだ。


『敵軍撃破。活動限界まで160秒残。次回に繰り越されます。獲得経験値は……』


 機体は全ての敵の消滅を確認し、好き勝手にくっちゃべると、元の姿に戻ったのだ。


「これって元となる機体がなかったら、このスキルは使えないのか?」


「破邪の鎧なら、別に機体がなくても呼び出せますよ。さっきはもう別の機体に乗ってたから、機体が変わったように見えただけで」


「いや、だから何かにつけて便利すぎるだろ」


 ニコニコしながら答える鶴に、俺は引き気味でツッコミを入れた。


 だったら人間サイズでダンジョンとかに潜入して、いきなりアレを呼び出して暴れるなんて事も可能なわけだし。


 いくら何でも戦術兵器として優秀すぎる。さすが神の鎧。


(何が何だか分からないけど……みんな喜んでるし。とりあえず良かったのかな?)


 俺はマッピングで拡大された被災者達の姿を眺める。


 みんな何がなんだか分かってない様子だったが、ともかく抱き合って無事を喜びあっていた。


 あの目玉、もとい不気味な鈴達も、今は目の部分が湾曲してニッコリモードになってる。


 どうも悪い奴らではないようだが……やっぱり怖いぞ。


 複雑な心境の俺をよそに、女神はやはり得意げにふんぞり返って言った。


「それでは戻ってじっくり話をするぞよ。おぬしの拠点に案内せよ」

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