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やっぱり立派な弁天様。当たり前だけど神様だから

「そもそも今は非常時じゃぞ? 人々の支えとなるべく、天下無敵の大英雄としてあがめられるぐらいでちょうど良いのじゃ(※全盛期の○チロー伝説ぐらいに)

それなのにお前ときたら……

大体、デフォルトで自動発動(パッシブ)のはずの魅了スキルを、普段は無理やりオフにしてる時点で自重(じちょう)が過ぎるっ! 救国の勇者として(つつ)ましやか過ぎるのじゃっ!」


「嫌だあっ、俺は人間なんだあっ! こんなのパンダ以外の全生物が経験してない異常待遇なんだああっ!」


 俺はなおも逃亡しようと暴れまくった。


 なお、パンダとは本来レッサーパンダ専用のリングネーム?だったが、あとから白と黒のあんちきしょう(※レッサーパンダいわく)が発見され、それを『ジャイアントパンダ』と名付けたために、真のパンダだったレッサーパンダがパチモンみたいな扱いを受ける事になったのだが……そんな余談は今どうでもいい。


 レッサーパンダの威嚇(いかく)ポーズは萌え死にしそうに可愛いから何度でも見たくなるけど、そんな無駄知識も今はどうでもいい。


 今はただ己の心を守るべく、この神待遇から逃亡するのみだっ…!


 そう心に誓う俺だったが、そこで弁天様がトドメの一言を言った。


「そもそもあの雪菜とかいうオナゴも、伝説のパイロット集団の一員として(あが)められとったじゃろ。幼いお前達の支えとなるべく、ただの人間が、必死に英雄の役を背負っていたのじゃ」


「うっ……!!!」


 それを言われると、さすがの俺も逃げるわけにはいかなくなった。


 まだ実験段階だった人型重機に乗り、ズタボロになりながら幼い俺達を守ってくれたあの人は、


「大人なんてみんなクソ! 自分等だけいい思いして、ツケは全部こっちに残していくつもりだろ?」


と思いがちな俺達世代の誰もが尊敬する人だったから。


「あの雪菜がゆっくり休めるよう、今度はお前が肩代わりする。それがこの勇者のカリスマスキルであり、お前の背負う(ごう)なのじゃ。こう言えば納得できるか?」


「……ま、まあそういう事なら……何とかやってみます。自重は……続けますけど……」


「やめるのじゃ!」


 弁天様はそう言いながらも、参拝する子ども達の頭を撫でてやっていた。


「よしよし、みんなうんと幸せになるのじゃぞ? 何にも心配せず、たくさん食べて大きくなるのじゃ」


 どうしたんだろう、なんか急に立派な神様みたいな事を……とヒソヒソ言い合う俺達だったが、そこで急いで口を閉ざした。


 誰にも付き添われていない……親を亡くした小さな子供が、ちょっと涙を浮かべながら、弁天様に祈っていたから。


 どんな祈りだったかは、女神の返事ですぐに分かった。


「大丈夫じゃ、ちゃんと聞き届けたぞ。今は戦いで手一杯だから探せぬが、お前の親も兄弟も、必ず魂を迎えに行ってやるのじゃ。一生懸命生きたのじゃ、誰1人取り残したりするものか。神も仏も総動員で魂を探して、犠牲になった者全員、天国まで送り届けてやるのじゃ」


 …………!!!!!


 俺達は何か不可思議な衝撃を受け、しばらくの間黙っていた。


 振り返りはしなかったけど、隊のみんなも背筋を伸ばしているのが分かった。


 やがてひとしきり参拝対応を終えた後、弁天様はいつものテンションで言った。


「さあ、これでひとまず被災者達は大丈夫じゃの。ここからが本番、日本中を駆け巡って、他の地域も残らずまるっと取り戻すのじゃ! そしてお前達と、人々の幸せな未来を作るのじゃ!」


「心配いらんさ女神様、ぜんぶ俺らに任せてくれれば…!」


 こないだあんなに憤怒相(ふんぬそう)だった香川も、今はいい顔で弁天様に答える。


 もちろん俺達も同意見だった。


 ちょっと、いやかなりふざけて……もとい、お茶目な所の多い女神様だけど、その芯の部分は、やっぱり立派な福の神。


 俺達を守るべく必死で駆けつけてくれた、救国の女神様だったからだ。


「それではわらわの提案じゃ。日本奪還と復興の任を受けたお前達勇者パーティーを、『救国の弁天(べんてん)志士団(ししだん)』と名付けるのじゃ! そしたら平和になってもわらわの名前が、伝説として残るのじゃ! 参拝客も増えまくりなのじゃ!」


 ドヤ顔で私利私欲を語る弁天様だったが、俺たちは頷いた。


 だがそこで鶴の周囲を、例の鈴達が飛び回った。


「みんな、急にどうしたですう?」


 どうやら緊急事態のようで、表示されたマップには『警告! 当避難区に、再び敵軍の襲来です!』と書かれている。


 弁天様は腕組みし、強気な表情でニヤリと笑った。


「ちょうどよいタイミングじゃな。せっかく復興し始めた避難区と、人々の笑顔を守るため、弁天志士団の出陣なのじゃ!!」


 弁天様は拳を振り上げ、肩に乗る牡蠣が後を続けた。


「そうだっ、いくぞ新米どもっ! 弱い者を泣かせるしか能のないバケモノどもを、行ってさっさとぶちのめしてこいっ!!」


 おおっっ!!!


 俺達はばしり、と拳を手の平に打ち付け、気合い全開で牡蠣に答える。


 サー・オイス・ターを忘れていたが、牡蠣もこういう時は怒らず、「いい顔になりやがって…」と涙ぐんでいた。


 いや、あんたそんな長いこと俺等を指導してないだろ。


 何をそんなに感極まってるんだよ……と思ったが、今はツッコむだけ野暮(やぼ)ってもんだな…!




※とりあえずこれで『その1 ~さあ始めよう、日本奪還!~ まずは領地を作るぜ編』が終了です。


 避難区(領地?)の応急処置的なケアが終わり、ここから防衛戦のスタートですよ。


 ちょっと一呼吸おいたらお話を再始動します。


 お暇なかたは、良かったら正規版の方も読んでみて下さい。シリアスで敵が強めですけど、陽キャな鶴ちゃんもいい感じだとおもいます。


 鶴ちゃんのイラストが正規版の1章(※PART1)にありますが、救国無双の方のつるちゃんはもっとタヌキ顔というか、おっとりゆるふわな感じのイラストがいいですね。


 いつか暇をみて描いてみたいと思います。


(溜まった仕事の山を眺めて白目をむきながら)

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