瑞気(ずいき)を呼ぶグルメイベント! おいしいから何でもいいや
さんざっぱら(※さんざん)パレードを楽しんだ後は、避難区の人達を招き、スキルの無限食料を使ってグルメイベントをやった。
平和な頃にB級グルメやご当地ラーメンが集うイベントに行った事がある人なら、そんな感じの光景だと思ってほしい。
ワイワイガヤガヤ……
ワーッ、キャーッ!
ワーハッハッハッハ!
ワンモア!(おかわり!)
なにせ久しぶりのごちそう、久しぶりの明るいお祭りだし、子供らは嬉しくてポップコーンみたいに跳ね回ってた。
着物姿でちょっと白髪まじりのおじさん……何原何山だったかはうまいこと忘れたが、彼も最初は「このグルメな私にファーストフードだと!?」とキリッとしてたのに、一口食べたら「むほぉっ、このたこ焼きたまらな~いっ!」と飛び上がって喜んでいた。
そりゃまあ神様の加護で出した料理だからね、おいしくて当然だけどね。
あとあの人、料理に対して真っすぐすぎて人当たりがきついだけで、別に悪い人じゃないからね。
なおも「むほぉーっ」が止まらないツンデレおじさんは可愛いし、他の人達もメチャクチャ喜んでくれたから、もてなす俺達まで嬉しくなったんだ。
ちな、なんでこんなイベントをしたかと言うと……
みんなで食べて楽しんで、地域全体に「うれしい! 楽しい! なんか幸せ!」という気を充満させると、いろんな神の奇跡が使いやすくなるとの事(※弁天様いわく)
こういう「楽しくてめでたい感じの気」を『瑞気』と言って、昔の日本人はとても大事にしたという。
家を建てたら客を招いて飲み食いするのも、この瑞気を家に宿らせるためだっていうけどほんとかね?
なお全く関係ない話だけど、香川県では新築の風呂でうどんを食べるのだ。
知らない人に説明しても「ちょっと何言ってるのか分からない」って言われがちだが、ああいう非日常の感覚ってのは楽しいもんだ。
ともかく俺達は無限食料をガンガン出して、集まった人に振るまいまくった。
祝い事の鯛めし、湯気ホカホカの水軍鍋をはじめ、たこ焼き、うどん、お好み焼き、ちょっと変化球で備前寿司やらイノシシ肉のみそ炒めもあった(※全国のお肉屋さんに売ってるみそ味の肉と似た味付け。たいへんうまい)
そしてデザートはやっぱりもみじ饅頭だ。
俺達が手をかざし、ぶわーっと超スピードで料理(※1人前ずつ小分けになってる)を出すと、それを大量のちっこい神使が運んでくれる。
龍は力が強いから、昔のそば屋の出前みたいにお膳を重ねてるな。
後で聞いたら、バスのパンク修理とかでもジャッキ無しで持ち上げられるんだそうだ。
神使はなにせ見た目が可愛いから、被災者に不足していた必須栄養素(※ビタミンならぬモフミン)を補ってくれてた。
モフミンにはK1(狛犬)、K2(キツネ)、U(牛)、S(猿)、R(龍)があり、龍はウロコで毛がねえだろ……と思ったら、自慢のヒゲをウネウネさせて子供をくすぐり、キャーキャー笑わせまくっていた。
まだ悲しげな顔のお年寄りをも無理やりくすぐり、ゆでだこみたいに真っ赤な顔で「ウヒィーッ、ヒーッ!?」とか言わせていたが、そっちはちょっと血圧が心配だぞ。
これも瑞気と言えるのかどうかはちょっと謎だ。
あと、会場には『弁天様と救国の勇者・マコート様のご慈悲によるお食事会』と余計な文言が書かれており、俺は感動してキャーキャー叫ぶ老若男女に追いかけれられ、殺人タックルのような抱きつき攻撃を食らいまくった。
弁天様いわく、「これは祝福であって悪気がないから、武芸スキルの回避や防御は使わせぬぞ?」とのことだが、この人数にタックルされたら俺、確実に死なないかな?
「ミラクルボオオオイッ、ユーアーッファンタアアアスティック!」とか言いながらチューしてくる外人のおばさん(※でかい)に抱っこされ、俺はもうどうにでもなれという気分だったが、空が黒く染まるぐらいの邪霊が飛び交い始めたので、あわてて鶴のご機嫌をとった。
牡蠣軍曹は炭火で大量の牡蠣を焼き、被災者達を喜ばせたが、食べてる横で「どうだ、俺はうまいだろう?」と笑顔で言うのでちょっと食べづらそうだ。




