歌おうみんなで、希望の歌を! サンバのリズムで!
ワーッ!!
突然、大勢の歓声が聞こえた。
「な、何…?」
私(※宇部)はびくっとなって身を起こしたが、声はまだ続いている。
ギャーッ! ギョエーッ! ギョギョー!!
「えっ、これ悲鳴? でもなんか違う…?」
そう、何か変な違和感がしたのだ。
おびえた声じゃないっていうのか、むしろうれしい悲鳴っていうのか。
字にすると同じギャーとかギョーとかヌオオオでも、宝くじが当たった時とゾンビに追いかけられた時の声は違いが分かる。
そんな感じの違和感だった。
私が校舎を改造した宿舎から出ると、またも人々の歓声が聞こえた。
そしてラテンのリズムと掛け声も。
オー○~、○ーレ~!
オ・レッ!
「えっ? えっえっ?」
混乱する私に追い打ちをかけまくるように、飛び上がって手を振る人々の向こうにステージ?が見えた。
正確にはステージというより、移動式の踊り台、祭りの山車みたいだったが……
それが次第に大通りを近づいてきて、人々がしこたま熱狂している。
ステージの前側にはちっちゃくて可愛い猿とか牛とか狛犬とかがいたし、奥にはキンキラした金の着物を着た少年少女が、衣装よりまぶしい笑顔で歌って踊っていた。
1人だけウェーブヘアの大人っぽい女の子が、金の虎柄ビキニなのは何か意味があるのかな?
◯ーンバ、ビーバ、◯ーンバ~ ♪
べ・ん・て・ん・◯~ン~バ~♪
オ・レッ!
「えっ、これ、◯ツケン…だよね? 著作権…だいじょうぶなのかな…?(※だめです)」
どうりで聞いたことのあるメロディなわけだ。
キンキラ衣装の人たちの奥は、更にどーんと高くなってて、そこに噴水と立派な椅子がすえてある。
椅子には着物姿の可愛い女の子がいて、
『南無・開運招福弁財天女尊、高縄半島避難区にご降臨!』
『救国の勇者パーティーも来たからモウ大丈夫!』
と横断幕がひらめいている。
「あ、弁天様…神様なんだ。だったら著作権もだいじょぶなのかな?(※だめです)」
そう、きっと著作権的には大問題だし、あとで大人がたくさん怒られるんだろうな……なんて思ったが、それでも楽しそうに歌い踊るかわいい動物とキンキラ衣装の人たち、そして自信満々にふんぞり返る弁天様?を見ていると、不思議と楽しい気持ちになってくるのだ。
幼い頃、父の商売のツテで本物の○ツケンさんのステージを見に行った私は、なんだかご本人も踊りに参加してくれているような気がしたのだ。
あの人だったら、きっと怪物なんかビシバシやっつけてくれるんだろうな…
こんな災害なんかに負けるなって言ってくれるんだろうな…
幼女姿の弁天様は、琵琶をジャーンとかき鳴らして手を振ってくれた。
「もう安心、もう大丈夫なのじゃ! チョー可愛いわらわと勇者たちが来たからには、悪党どもをぶっ飛ばして、きっと素敵な未来にするのじゃ! これ以上誰も泣かせぬし、いっぱいいっぱい幸せになるのじゃ!」
弁天様はそう言って飛び上がり、たくさんの牡蠣…に手足が生えた人たち?が、見事にそろった動きで六◯おろしを歌い始めた。
あ~んし~ん、◯イガ~ス!
力強い太鼓のリズムがビートを刻み、私の心を揺さぶっていく。
もう何がなんだか分からない……分からないけど、少なくとも私は楽しい気持ちになった。
その時の私はまだ知らなかったけど、そういう目に見えないけど『まだやれる、いけそう!』っていう明るいムードが、未来を守る1番の魔法なんだって、後で弁天様が教えてくれた。
逆にみんなが「この国はもうだめだ、未来は地獄だ」って思ったら、それは超強力な『国滅ぼしのお呪い』になって、みんなを不幸にするんだって。
だったら私はいけそうって思おう。まだ終わってないんだもん。
まだ私達、生きてるんだもん…!
そう思ったのは後の事だけど、当時の私も知らず知らず体が動いて、サンバのリズムに参加していたのだ。
著作権は怖いけど、今この時ぐらいはきっといいよね…?(※だめです)




