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笑いながらビールを飲む。ビアガーデンの醍醐味

「でも弁天様、誰でも言う事聞かせられるなら、神社とかも命令して建てさせればよくないですか?」


「それがそうはいかんのじゃ。心をあやつって露骨に社を増やすと、姉に感づかれて怒られる。あくまで人間が自発的に、わらわのために建てたという証拠が必要なのじゃ」


「な、なんか神様も大変そうっすね…」


 俺は妙に納得して、ようやく輿の上から降りた。


 官僚や上級公務員たちは目を輝かせ、俺達に忠誠を誓うべく宣誓文(※とても長い)を読み上げている。


 いや、そこまで忠誠してもらっても引くんだけど……なんて思ってるうちに事態はとんでもない方向に進み、議会では俺を高輪半島避難区の長に満場一致で推薦してしまった。


 勇者様だからおk、と反対は一切なく、法案は秒で通ってしまった。


「いや、いやいや、いやいやいやいや……さすがにちょっとおかしいでしょ」


 校長室を十倍ぐらいデラックスにしたような部屋に座らされ、俺はドン引きしてつぶやいた。


「すごいですう黒鷹、一気に領地を手に入れたですう!」


 鶴は陰キャにしては最大限のテンションMAXで抱きついて、頬ずりして喜んでくれる。


「やっぱりさすが鶴ちゃんの旦那様ですう、このまま一気に天下統一ですう…ああもう、愛しすぎて我慢できないですう、チュッ!」


「うわっ、ちょっと待てお前っ、何どさくさに紛れて…!」


 ほっぺとは言え、キス系の技を初めて食らった俺は照れるが、虎柄ビキニで金棒をかつぐカノンに睨まれて命の危険を感じたため、瞬時にキリッとした顔を取りつくろった。


 な、なんか君、1回戦っただけで露骨にアマゾネスに近づいてない?


 前はそんな子じゃなかったよね? それともこれが素の君なの?


「まあそれはよいとして」


「よくないすよ」


「よいとした場合の話じゃ。これで避難区の全ての公的な人材は、お前たちに協力してくれる。さっそくお前たちの領地…もとい、避難区を立て直し、人々に笑顔を取り戻させるのじゃ!」


「そうだ、わかったか新米どもぉっ!」


「サー・オイス・ター!」


 突然いいところを持ってった牡蠣にも、俺達はノリで元気よく答えるのだ。


 ちょっと…いやかなり過程がぶっ飛び過ぎてるけど、とにかくこれで避難区をいい感じで立て直せるぞ。


 すさまじい長時間の労働奉仕で搾取されてた人達も助かるし、食いもんだって横流しが無くなればずっと良くなりそうだ。


 さしあたって何から作ればいいか…


 俺は考えを巡らせながら、銅像や野球場や通天閣で復興予想図を埋め尽くそうとする鶴や隊員たちを阻止した。




「こ、このような感じでいかがでしょうか? 勇者御一行さま」


 急に平身低頭となった蛭間ほかの悪党たちは、避難区のちゃんとした復興計画を出してきた。


 あの官僚たちと協力し、わずか1日で作りあげた計画書である。


「ええと…うん、通天閣も野球場もないし、ヒメ子の銅像もない。取り急ぎ食料や水の増産設備とか、居住区や医療関係に投資してるし、やればできるじゃんかお前ら」


「そ、それはもう…真面目にやれば、没収された資産をある程度返していただけると弁天様にこっそり言われてひぎいっ!?」


 魔法の光でノドを締め付けられ、蛭間たちは悶絶する。


「余計な事は言わなくてよいのじゃっ! それよりちゃんと約束を守るのじゃぞ?」


「は、はいっ、それはもう」


 なんだかな。


 まあ一部しか返さないって事だし、無一文だとこいつらを配下にしてる意味がないし。


 とりあえずその分避難区のみんなの役に立ってもらえばいいだろう。


 でもこんだけすぐちゃんとした復興計画書が出せるってことは、「今までやるべき事が分かっててやらずに他の事に金使い込んでた」って事なんで、やっぱりちょっと腹が立つぞ。


 ちゃんと復興が終わったら、成敗のおかわりしてやろう。


 ビールジョッキを掲げ、「ワン・モア!(※おかわり!)」と叫ぶ往年の名レスラーの姿を思い出しながら、俺はそう心に誓うのだった。

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