表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/55

時代劇も試行錯誤の積み重ね。それこそが歴史

 心いくまでスキルを試し、ボコボコにした俺達は、土下座して子犬のように震えている悪党どもを見渡した。


 頭にはタンコブが7~8段積み重なっており、21だか31だか思い出せないアイス屋のアイスのようだった。


「ま、せっかくだから印籠(いんろう)も出しとくか。みんな、一応サッと見てくれ」


 俺は戦闘前に弁天様からもらった印籠を出して見せた。


「ええ、今さら…?」「なんで殴る前に出さないの…?」みたいなヒソヒソ声が聞こえたが、そういうシステム上の文句は水戸の黄○様に言ってくれ。


 あれ印籠いらなくない?と思ったのは俺だけじゃないはずだが、そんな事は今どうでもいい。


 そもそも印籠で黙らせる黄金パターンが定まったのはかなり話が進んでからで、初期にはほぼほぼ見せていなかったのだ……という豆知識もどうでもいい。


 あの美しい殺陣(たて)が見どころの『○れん坊将軍』ですら、初期には悪党こらしめシーンが迷走しており、時には敵のボスを江戸城に呼び出し、圧倒的不利なアウェー状態に追い込んでから自分の正体を明かす……

という卑劣(ひれつ)極まりない手を使った事もあるが、それすら今はどうでもいいのだ。


 江戸城で将軍にニヤニヤされながら「オレオレ、分かる? で、どうする? 歯向かう?」と言われて勝てるわけないし、そんなもんただの弱い者いじめじゃい。


 しらばくザワつく悪党たちだったが、まだ憤怒相(ふんぬそう)の香川が「やかましいぞくるああっっ!!」と叫びながらスパーンと叩くと、たちどころに静かになった。


「香川、それはもういいから。で弁天様、この後こいつらどうします?」


 俺が尋ねると、重ねた座布団にふんぞり返った弁天様が言った。


「もうスカンピン(※無一文)で利用価値もないしの。居るだけ邪魔じゃし、適当にスキルで()()微塵(みじん)にしてしまえ。わらわは悪に厳しいのじゃ」


 許可出たぞごるああっ、ひき肉にするぞくるああっ、と迫る香川におびえまくり、蛭間を始めとした悪党達は、額を床に叩きつけて謝った。


「なっ、なにとぞご勘弁(かんべん)をっ! もうしませんっ、もう金輪際(こんりんざい)悪い事はいたしませんっ! 残りの人生、世のため人のためだけに生きますし、」


「あーあー無駄なのじゃ、悪党の戯言(ざれごと)など聞く耳持たぬ。鶴、さっさと邪霊であの世送りにせよ。地獄には話をしておくから、100兆年ぐらい苦しみ続けるのじゃ」


 弁天様は心底メンドクサそうに言うのだが…


「そっ、そこをなんとかぁぁっっっ!! 助けていただければ、避難区に弁天様の像を立てまくります! 祝日も作って弁天様の日にしますし、お社もガンガン建てて…ヒイイイッッッ!!?」


「…な、何じゃと?」


 弁天様は急に目を輝かせた。


 座布団から飛び降りると、邪霊に囲まれて細くタテ長くなっている悪党達に歩み寄った。


「ぬしら、それはまことか?」


「はっはいっ、ヒイイイッッッ!?」


 邪霊に触られると死ぬので、もう棒みたいに細くなって身を寄せ合う悪党だったが、弁天様が咳払(せきばら)いすると、邪霊たちはビクッとなって消えてしまった。


 女神は取りつくろうように俺達に言う。


「オ、オッホン、よく考えたら殺す必要なかったのう。理由を説明するから、その心底見そこなったみたいな目をやめるのじゃっ」


「えーっっっ」


「しょうがないのじゃっ、信仰心が無いとこの世で奇跡が使いにくいのじゃ! そのために社はゼッタイ必要なのじゃ!」


 弁天様は地団太(じだんだ)を踏んで抗議するが、そんな俺達の後ろで、蛭間が悪い顔でニヤリと笑っていたのだ。


 お前、まだ()りてなかったのか。もうやめとけよ、どうせ次のコマでひどい目に合うぞ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ