ハ○ガー、またの名を衣紋掛(えもんかけ)
もちろん鶴も、ただ遊んで見学してたわけじゃなかった。
ネトゲで鍛えた観察眼で戦況を見すえ、俺達を的確にサポートしていたのだ。
頃合いを見て、鶴は何かをこちらに投げた。
「黒鷹、この武器使ってですう!」
「お、物質創造で作ったのか。サンキュー!」
(ぶっちゃけ念じたらどんな武器でも出せるって弁天様が言ってたからいらないけど……まあ鶴の練習にもなるしな)
ビュバババ、と回転しながら飛んできた武器を受け取ると、それは洋服をかけるプラスチックのハ○ガーだった。
「黒鷹、それをヌンチャクみたく振り回して…」
「やめろヒメ子、これはまずい!!」
血相を変えてあわてる俺に、鶴はキョトンとして首をかしげる。
「木のヤツ(※素材が木)のほうが良かったです?」
「そうじゃないっ、オールドファンが多すぎて、クレームが大変なんだよ! いい加減なサポートすなっ」
「ごめんちゃい、ダメな鶴ですう」
鶴は反省したふりをしつつ、マイクを持って主題歌を口ずさんでいる。
ええ加減なつる~ですう~♪
「名優の、名コメディ映画の、名エンディングテーマをスナック感覚で使いやがって……あれは男の生き様と真のかっこよさを見る人に伝える名作なんだよっ…!」
何事物語だったか題名だけ忘れたが、昔じいちゃんと見て夢中になった俺は、ついつい熱く語ってしまう。
当時の男子はみんな衣紋掛をヌンチャク代わりに遊んだものだし、鶴には後でたっぷり教えてやろう。
「せっかくだけど、これは使わな……ああっ!?」
俺はハ◯ガーを捨てようとしたのだが、手にしたそれが木のやつに変わったため、あまりのなつかしさで結局捨てきれず、アイヤー!と振り回して敵を薙ぎ払った。
くちびる何しめて…だったかは神の奇跡で忘れたものの、そんな題名の名曲が、アタマの中でリピートされていく。
ちょっとずんぐりむっくりの昭和の名優が「がんばれ、日本を、みんなを守るったい…!」と博多弁で励ましてくれてるイメージが脳内に浮かんで、最高に燃えるのだ。
まったく作品的に関係ない3年○組の生徒たちが、名優の後ろで応援してくれてるのも嬉しかった。
「ふみゅう、部屋の中だからマップもいらないですし、敵が弱すぎて味方バフしたらオーバーキルですし。かと言ってネトゲしようにも弁天様が見張ってて。暇ですう…」
鶴はメガネをかけてジャージ姿になり、寝ぐせまみれの髪をくしゅくしゅしながら、ちょっと眠そうにスキル一覧を眺めている。
すまんな、入り組んだ市街地とか、敵の霧の中ならお前のスキルが役立つんだけど、今はちょっと休んでてくれ……と思う俺だった。
暇を持て余した鶴が闇魔法のスキルを使い、あまり聖者としてよろしくない感じの邪霊を召喚して敵をおびえさせているが、とりあえず見なかった事にする。
邪霊の上にウインドウが表示され、
「どこまでもどこまでも追いかける」とか、
「触られると即、心臓麻痺で死亡」とか、
「これに触られて死ぬと、子々孫々までカルマが残り、幸運値がマイナス999の超バッドステータスとなる」みたいに書かれているが、それも見なかった事とする。
それもう平安時代とかだと、陰陽師とかが総出で追い払うような厄介な悪霊だろ…
まあ悪いヤツ相手だからギリセーフか、などと思いつつ、俺達は心ゆくまでスキルを試しまくったのだ。
※これで成敗パートが終わり、○島三郎さんの演歌がエンディングに流れる感じ
※昭和のネタが分からない場合は、おうちの人に聞いてみて下さいね(謝罪)




