人間は殺せないから、適当にこらしめてみよう
※ここでCMあけのアイキャッチ(弁天様の決め顔バージョンの)
護衛たちが殴りかかってくると、俺の近くにウインドウが開き、『武芸百般』と表示された。
相手は素手で襲ってくるから、とりあえず素手の格闘技をためしまくろう。
続いて『身体能力強化』『技見切り』『クロスカウンター』などの武芸スキルが次々表示されていく。
特に武道の心得のない俺だったが、スキルの効果は半端ではなく、体が勝手に動いてくれた。
迫る護衛をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。武神の加護だからハンパない怪力で、敵はバンバン吹っ飛んでいく。
殺陣の音楽ともぴったり合った動きで、俺は時々カーッと効果音を鳴らしながら悪党を睨みつけた。
やられ役のザコたちも、このスキルで殴られると倒れ方に磨きがかかるのか、きりきり舞いしながら「やられたー!」という顔で倒れてくれるので非常に気持ちがいい。
俺が徐々に迫っていくと、部屋の壁ぎわを逃げまどう悪党達がうろたえて、それもまたすごく気持ちが良かった。
(……ただまあ、いくら悪党といっても相手は人間。殺すわけにはいかんし、怪我させ過ぎないよう手加減してこらしめないとな)
かわし、いなし、すれ違い、尻をぶつけて吹っ飛ばして。
もう俺の動きは戦いと言うより、舞いや踊りに近かった。
だんだんノッてきて動きがキレキレになり、神使達も察して音楽を切り替えてくれた。
(こ、これは……!?)
あのキ◯グ・オブ・ポップ◯と呼ばれた偉大すぎるあの人の曲か…!?
(さ、さすがに著作権的にマズイだろ…!)
そう思う俺だったが、体の方は正直だった。
(くそ、名曲過ぎて体が勝手に…!)
この惑星の全小学生が真似したであろうあのダンスを、細胞の一粒一粒が覚えていたのだ。
滑るように敵の間をすり抜け、『短距離空間転移』で出たり消えたりしながら、後ろの方にいた護衛と肩を組んで踊ってみる。
「えっ? えっ??」
戸惑う奴らが我に返って襲ってくるが、俺はムーンウォークしながらすり抜けた。
囲まれそうになると『空中歩行』スキルで浮かび、護衛たちの絶望をよそに頭上をターンするのだ。
こっそり逃げようとする偉いさんには、指でガンマンのようにバキューンとやると、『弓矢八幡』スキルで気が誘導弾になってケツに炸裂。
偉いさんたちはァア~オ!!と悶絶した。
「鳴っち、いつまで1人で楽しんでんねん! いくら試すスキルが多い言うても、そろそろウチらの番やろ!」
隊員達がステージソデから怒鳴っているが、俺は手を上げて「まだ」というジェスチャーをした。
そのままノリノリで腰をふりながら仕上げのシャウト。
ん~~~っ、アーオッ!!
同時にスキル『轟雷撃』と『炎雨弾』を超・手加減して発動、襲ってくる連中のハートを焦がしてシビレさせた。
(き、決まった…! 我ながら最っ高のステージだ。幼い俺達を楽しませてくれた偉大なスターよ、見ててくれたかい…?)
両手を広げ、万感の思いを込めて天井を見上げる俺に、弁天様が呆れて言った。
「まったく何じゃその戦い方は。おまけに衣装まで…鶴のクリエイトスキルか?」
「で、でもさっきの今で、応用力は異様なまでに天才ですよね? 殺さないよう強弱もバッチリつけて、スキルを完璧に使いこなしてますけど」
おおカノン、ナイスフォローだありがとう。
「褒めてもらって照れ臭いが、俺は地元じゃイタズラのまこちゃん、しかもうまいこと怒られない強運の持ち主だったんだ。ゲームや遊びに関しては、天才とたたえられても過言じゃないさ」
かっこいいですう、ゲームのカリスマですう、と頬を赤らめて抱きついてくる鶴。
か、顔が近い……てかいろいろ柔らかい、いい匂いがするぜっ……!
まあこういう時は文句なしに可愛いらしい女の子なんだけどな。病みモードじゃなければ…
「どう考えても過言じゃが…まあ頼もしいとも言えるか。それよりそろそろ仕上げせよ。武器も解禁、全員で懲らしめてやるのじゃ」
弁天様の発言に、やった!とガッツポーズする隊員たち。
どうでもいいけど、お前ら◯ァミコンの順番待ってたみたいなテンションだなおい。