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魔の乳三角地帯。男は遭難する

「もう許さないですう…!」


 俺達が振り返ると、鶴は既に憤怒相(ふんぬそう)と化していた。


「おのれ、虎ビキニで黒鷹を誘惑するに飽き足らず、逆縛りプレイまで堪能(たんのう)するとはっ…!」


「プレイ言うなよ」


 あまりの怒りに俺のツッコミも意味をなさない。


 鶴が手をかざすと、そこにどす黒い気が渦巻いた。これやばい、当たれば即死の匂いがするぞおい。


「こうなったら黒鷹もろとも(ほふ)り去って、あの世で永遠にイチャイチャしてやるですう…!」


 だがそこで難波が鶴に歩み寄った。頭上には『超交渉術』と表示されてるので、早速スキルを使うつもりか?


「いや鶴っち、そんなんしたら鳴っちに嫌われるで?」


「なっ、馴れ馴れしいですう! その汚らしい手をどけるですっ、そんなに(じか)もぎされたいかっ!」


「けど考えてみ、鶴っちが好き勝手出来るんはこの世やからやで? 向こうに行ったら監視の神さん ぎょうさんおるで?」


「うっ…!」


 ひるむ鶴に肩を組み、難波は更に畳みかける。


「かと言うて鶉谷司令は恋敵(こいがたき)として強すぎや。鶴っち1人で勝てるんか?」


「む、無理ですう…あの乳は兵器、いや災厄ですう。ダブルレイドボスですう…!」


「せやろ? そこで毛利の3本の矢や。1人の乳では勝てんでも、カノっちと3人で囲い込んだら、魔の乳三角の完成や。鳴っちなんてイチコロやし、後はうちらの好き放題やで」


「俺の人権を無視するのやめて貰えないかな」


「黙っとり、今ええとこやねん。さあ選びや、司令に負けて鳴っちと結ばれんのがええか、シェアしてうちらのもんにするか。どっちが得やと思う? 今なら特別サービス、正妻は鶴っちにゆずったるわ」


 2人はしばし無言だったが、やがて悪を煮しめたような顔で笑った。


 モッフォッフォッフォッ……!


「いやそんな笑い方なのかよ」


「つるたん聖人……」


「やめろ怒られるっ、特撮はコアなファンが多いんだよ! てかホント、俺の意見無視しないでくれるかな。あと乳三角て何だよ」


「魔乳ダ・虎イヤンプルンですう」


「バミューダ・トライアングルな。変な技かけるんなら宮島と香川にやれよ」


 だがそこで難波がとんでもない事を言い出す。


「けど鳴っち、あいつら彼女おるんやで」


「な、何いっ!? お前らいつの間に…!?」


「いやあ、それはな。なあ香川」


「そうだな宮島、いつだったかなあ」


 宮島も香川もヘラヘラデレデレしている。殺す、こいつら絶対殺す。


 人が死ぬ思いで孤軍奮闘(こぐんふんとう)してた時に、彼女作ってイチャラブだと???


「くそっ、何が修行だ、煩悩にまみれやがって…! ヒメ子、さっきの呪いをこいつらに頼む!」


「わかったですう、リア充は消し炭ですう♪」


 そこで弁天様が口を挟んだ。


「いや待て、それより最後は鶴の能力じゃ」


「えーイヤですう、こんだけみんなが強くなれば十分ですし、私1人ぐらいネトゲしてても勝てますう♪」


「そうはいかんのじゃっ、お主が遊びすぎんよう、ナギからしっかり言われておる。ほれステータスを開け」


 鶴は渋々ステータスを表示した。


「お前はまあ、言うまでもなく聖者でナビゲーターじゃ。マップで戦況を見てサポート魔法をかけたり、大威力の魔法を練ったり。とにかく味方の軍勢全体を導くのじゃ」


 弁天様はそう言うが、ステータスジョブはしっかりと『闇の神官(ダークプリースト)』『堕ちた聖者』となっており、魔法もアシッドガスみたいな闇魔法が並んでいた。一体これのどこが聖者だ。


 スキルはマップの『真実の瞳』とか、『長距離空間転移(※レベルが上がれば軍勢丸ごと転移可能)』とか色々あるが……


 愛のチャットは秒間700通を送れるらしいけど、正直いらねえ。


 あとはやっぱり難波とのコラボスキルで課金アイテムってのがあって、これは(かたく)なに触れない事にしたい。どうせ俺のポイント使う気だろうし……


 と思ったが、弁天様は空気を読まず、あっさりそのスキルにも触れた。


「なかでも便利なのは『課金アイテム』と『魔法創造/物質創造』といったクリエイトスキルじゃ」


「ああっ、それは言わなくても!」


「そうはいかん、大事なのじゃ。

課金についてはチョー簡単、ポイントと引き換えに高レベルの魔法を使えたり、既存の技や魔法でも、威力がとんでもなく上がったりする。バフの中でも究極のバフだと思っておけ。

魔法創造はメッチャ便利で、人質をとって隠れてる敵にだけ効くようなオリジナル魔法も作り出せる。ただし術を練るのに少し時間がかかるぞ」


 鶴はがぜん目を輝かせた。


「となるとですよ、世界中の恋敵(こいがたき)を去勢する魔法も?」


「出来るがやるなよ、ナギに言うぞ。物質創造は分かりやすいじゃろ。戦いで有利になるよう壁や攻城兵器を作り出せるし、戦闘以外でも、町の復興に必要な建物とかをガンガン作れるのじゃ」


「シ●シティとか●インクラフトみたいな感じっすかね」


「知らんが、多分そうなのじゃ」


 俺の問いに、女神は根拠のない自信で頷いている。


「相変わらず適当だけど……俺らの好きなように町を作って復興とか、ぶっちゃけけっこうワクワクするかも」


「黒鷹の言う通りですう、さっそくこの避難区の復興計画ですう」


 鶴がすぐにスキルを発動させる。


 この避難区の復興計画図が表示されて、そこに好きなように建物やら何やらを配置していけるようだ。


「よっしゃ、所かまわず通天閣建てたるわ!」


「隊長、野球場作ろうぜ!」


「つるちゃんの銅像ですう!」


「ええいやめんか、どこに人が住むのじゃ! 全部キャンセルじゃ、保存するでないぞ」


 銅像と通天閣と野球場のみが埋め尽くした復興予想図を見て、弁天様が止めに入った。


「他のスキルは使いながら覚えればいいが、いちばん地味にヤバいのは、我が姉の……田心姫(たごりひめ)の加護で発動する『白銀厳霧(はくぎんげんむ)』じゃな。使用条件は今は言えんが、使えば勝利はほぼ間違いない。まさに外道、チート中のチートみたいなスキルなのじゃ」


「どういう効果があるですう?」


「それも言うなと言われておるのじゃ。姉は普段は優しいが、作曲で悩んでる時とかチョー怖いのじゃ。神社(いえ)に行くだけで怒られる」


「あ、せやから宗像(むなかた)大社の沖ノ島は入れへんのかいな」


「そう考えてよいぞ難波。まああまり言うと姉にチョップされるから、その話はこのへんにしておく。あと、鶴は聖者じゃから食わんでも死なんし、食料があると千年ぐらい引きこもってネトゲするから、無限食糧はおあずけじゃ。欲しければ黒鷹達に出してもらえ」


 弁天様はそう言って都合よくスキルの話を切り上げた。

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