ヘソ出しタンクのアマゾネスと、商売繁盛たこ焼き女子
カノンはうどんを食べつつ、この展開に戸惑っている。
「え、香川が賢者で回復役って、あたしも衛生兵なんですけど……」
「お主は別に適正があるのじゃ。ズバリタンク役! 人間離れした怪力と頑丈さでパーティーを守る女戦士、鬼嫁系アマゾネスなのじゃ」
「ちょっと!」
カノンは鬼嫁という単語に過剰反応して焦っている。
そりゃまあ言われて嬉しい事じゃないだろうけど、妙にそこが敏感だな。
ステータスはとにかくパワー、体力、防御力に全振りしててシンプルに強い。
そのぶんスキルは少ないが、金山彦神・金山姫神の加護『金属如意化』がユニークだ。
鍛冶とか金属加工の神々だけあって、金属なら何でも武器や鎧にしたり、巨大な建造物も変形させられるとの事。これ、けっこう戦いで応用できそうだな。
あとは湍津姫の『剛腕会心撃(※クリティカル率ほぼ100%、気分が乗ってる時は何発も続く)』とか、須佐之男命の『怒髪天(※攻撃を受けた分だけ反撃の威力が上がる)』も面白いな。
無限食糧は猪肉のみそ炒め、ぼたん鍋、きびだんご……きびだんご? また鬼関連のワードだな。
「タンク職はよく服が破れるから、替えの衣装が出せるスキル『織姫』もあるぞ。ただし戦闘中には使えん。機織りの神々は戦いが苦手じゃし、闘気との相性がしこたま悪いから、出来たとしてもぼろきれぐらいか。うまく布にならんし、そんなの巻きつけても余計にエッチじゃ」
弁天様の説明に、難波はニヤニヤしながらカノンに言う。
「良かったやんカノっち、鳴っちにセクシーアピールできるで」
「黒鷹、見たらもぐですう……!」
「何をだよ。怖いよ」
「服も最初は簡単で布地の少ないものしか作れんぞ。アマゾネスの虎柄ビキニとか、虎柄の手甲や脛当てとかな。レベルが上がれば手の込んだ花嫁衣裳まで作れるが、当分はヘソ出しで我慢せい」
おお、カノンの花嫁衣裳か。
まあぶっちゃけ大人っぽくてワガママバディの美人だし、そもそもヘソ出し衣装のカノン自体、他の隊の連中が見たら鼻血出して喜ぶだろう。
鬼関連のワードも多いし、角つけて虎柄ビキニで金棒かついで、ブロマイドにしたらメッチャ儲かりそうやんか」
後半は、俺の内心と難波の声がシンクロした。
さすが大阪出身、金儲けの匂いには敏感なのだ。
「これこれ、仲間を売るでない。そこの関西弁女子、お前は商人・交渉人じゃ。あらゆる難事や商談をうまくまとめあげられるし、何でも安く買う事が出来る。戦闘力は一番低いが、パーティーのふところ事情はぜんぶお前にかかっておるのじゃ」
なるほど、確かに弁天様の言う通り、ステータスは全体的に低め。ただしコミュニケーション力がズバ抜けてる。
スキルは稲荷神や天宇受賣神、恵比須神といった商売・交渉系の加護にかたよってて、『超交渉術』『お買い得』『ケツの毛までむしり取るで』みたいなのが目立つが…………鶴とのコラボスキルで『課金アイテム』ってのが嫌な予感がする。
うん、今は触れないでおこう。
無限食糧はたこ焼き、串揚げ、稲荷寿司か。
お好み焼きが無いのは、宮島とお好み焼き談義で殴り合いにならないよう配慮してくれてるのかも。
俺は広島風も大阪風も超好きだけど……ん?
「あれ、無限食糧が拡張可能って書いてあるんすけど」
「そう、食物をつかさどる神・豊受大神の加護によるスキル『グルメ復活』があるのじゃ。奪還した地域のご当地グルメを取り入れ、無限食糧のメニューに加える事が出来る。それを食べさせて、落ち込んでる被災者を勇気づけたり、金が無い時はそれらを売って稼いでもよい。原価ゼロで大もうけなのじゃ」
「これメッチャええやん。とんこつラーメンとかはよ欲しいで」
そこは神戸ビーフだろ、バカ野郎っ、北海道のカニだ、などと結局殴り合う俺達に呆れながら、弁天様が釘を刺した。
「念のため言っとくが、これらの加護は神と勇者の契約から派生した衛星的な能力じゃから、勇者が死んだら消えるのじゃ」
「た、助かりますその設定」
グルメでもめた結果、ぐるぐる巻きに縛られてさらわれかけた俺は、その言葉に安心した。
安心したのだが……俺達はすっかり忘れていたのだ。
鶴という破壊神の存在をだ。