加護もチートも貰いすぎると怖い。でも返品は不可
あと便利なのは天鳥船神の『短距離空間転移』『空中歩行』だな。これがあれば相手の後ろに回り込めるし、空中ダッシュできるから応用が効きそうだ。
それとおおっ、いつも聞く名の岩凪姫……ナギっぺとか呼ばれてる女神は『剛体術』か。名前に岩がついてるからとにかく打たれ強くて、味方や被災者とかを機体でかばったり、敵の攻撃を耐えながらカウンターうつ時に便利そうだ。人質とられて「抵抗するな!」と言われても、このスキルがあれば無傷だろうし。
「至れり尽くせりだな。ほかには……ん? 鳴瀬誠(※人族)からの共有スキルって何だ?」
そこだけは神の加護じゃなく、俺と似た人間の名前が書かれている。
スキルの内容は……『超集中(※集中すると敵がスローモーションに見える)』と『行動予測(※敵の周囲の磁場から思考を読み取り、次の行動をイメージで予測できる)』だと?
こ、これって2つをコンボで使えば、絶対相手の攻撃当たらなくないか? 攻撃の軌道を予知して、しかもそれがスローに見えるんだろ?
「それは別の世界線のお前とのスキルの混線じゃな。本来同じ肉体じゃから、加護を授けた時に一緒に発生したのじゃろ。まあ便利だから使っておけばよい」
弁天様はそう気前のいい事を言う。
「スキルは破邪の鎧に乗ってなくても使えるから、たとえ生身でも天下無敵じゃぞ。念じれば刀や銃、弓矢なんかも出て来るし、殺傷力も気絶から分子レベルに分解までお好みのままじゃ」
「さ、さすがにちょっとチート過ぎる……恵まれ過ぎて怖くなってきたんすけど」
「その分頑張って働いてもらうのじゃ。何せどんな冒険物語より手強い巨大怪物軍団から、日本をまるごと取り返すからの」
「た、確かにそうすね」
加護をもらい過ぎたので、自分でも少し言葉が丁寧になってるのが分かる。
給料が上がると急に不満が減るみたいな、人類共通のあの現象だろう。
「あとは非常食として、特定の食事メニューはポイント無しでも無限に出せるようになっておる。お前は瀬戸内の島育ちじゃから、鯛めしと水軍鍋がいいじゃろ」
その言葉どおり、『無限食糧』と書かれた右には鯛めしと水軍鍋と書かれていた。
鯛めしはご丁寧にも『炊くタイプ』と『生タイプ』に分かれており、どっちも俺の超・好物だった。
炊くタイプは焦げた醤油が香ばしくてうまいし、生タイプはとろっとろのとき卵と醤油ダシと新鮮な鯛の刺身を、白ご飯にかけてガンガンかき込む爆食系・早食い飯だ。
水軍鍋というのは、エビやらカニやら魚やら、とにかく魚介がぎっしり入った海鮮鍋で、見てるだけで食欲が湧くメニュー。漁師のおっちゃんが港でよく作ってくれた。
子供の頃に食べたきりだし、これほんとに嬉しいな……などと思っていると、隣でカノンが俺と同じぐらい嬉しそうな顔してるのに気がついた。
さっきは弁天様に怯えてたのに、なんで急に?
「どうしたカノン? そんな鯛めし好きなのか?」
「あっ、ううん、ちょっとその……よく聞くと弁天様の話し方、落ち着くなって思って。なんか懐かしいっていうか」
「なんじゃ、故郷の仲間と似ておるのか? 鬼の」
「あーっ!! あーっ!! ああああああああっっ!!」
カノンが再び絶叫するが、弁天様は気を取り直して続ける。
「そんでもって最後の最後、」
「えっ、まだ何かもらえるんすか!? さすがにちょっと多すぎなんで返品で」
「黙れ、ここが一番大事なのじゃ。いくら無敵の強さがあっても、誰もお前の話を聞かぬのでは意味がないからの」
見返りが怖くなって止める俺だが、それが一番ヤバめの加護だった。
「あと必要なのは勇者のカリスマ! そこで女神・天宇受賣神の加護を……いわば人たらしの自動発動スキルをさずけておる。
『対人魅了(※人を魅了し引き付ける)』
『拍手喝采(※意見や演説の説得力が大幅に増加)』
『和合良縁(※強運で都合よく必要な人物と出会える)』
これらがあれば話がチョースムーズに進むし、時代を動かす人間は、ぶっちゃけこの加護を必ず持っておる。これがあるから英雄として称えられるのじゃ」
「良かったですう黒鷹、これで私がネトゲざんまいでも、何もかもうまくいくですう♪」
「いや、働けよ聖者」
心底いい笑顔の鶴にたまりかねてツッコミを入れたが、弁天様は隊員達にも声をかけた。
「もちろん勇者パーティーじゃから、お前達4人にも用意しておるぞ」
いやいや、さすがにちょっと大盤振る舞い過ぎないか……とも思ったが、よく考えればそれだけ日本がピンチなんだよな。