惑星(ほし)守る神の鎧・心神!
俺たちの乗る機体は、正式には『心神』とかいう破邪の鎧は、少しずつその形を変え始めた。
以前のニンジャみたいな形から、より猛々しく、より雄々しいフォルムに。今度はまるで和風の巨大鎧武者だ。
そして全身が黄金色に包まれる。
まぶしい、ガチで太陽が地上に降りてきたみたいだ…!
昔のしゃべるロボット系アニメで言えば、機体が金になったら勝ち確定のあれだ。ラスボス用のハイパーモードだ。
……ただ、もちろん荒金丸も黙って見ていたわけではない。
足元で輝く太陽みたいな俺達の機体を見て、すさまじい大声で威嚇する。
グ、グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!
廃墟も地面も何もかも揺らすようなとんでもない声だったけど、不思議と俺は怖くなかった。
だってあいつの声は、明らかにビビっていたからだ。
弱い犬ほどよくほえる、と誰が言ったか知らないが、その轟くみたいな大声が、キャンキャン甲高い小型犬の悲鳴みたいに聞こえたからだ。
荒金丸はそのまま分厚い包丁みたいな刀を振り上げ、全身全霊で振り下ろしてきた。
巨体の割にとんでもなく速い…!
しかも刃には魔法が稲妻みたいに駆け巡ってる。こっちのオーラブレードに近い武器なのか?
あの速さで、あの質量で、あれだけの魔法力を込めた一撃が迫るが、俺も鶴も他人事みたいにそれを眺めていた。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
やがてすさまじい地響きとともに、敵の一撃が振り下ろされる。
本来なら、たぶん地の底深くまで陥没するようなパワーだっただろう。
高縄半島を叩き割るぐらいの威力だったかもしれない。
それでも俺たちの乗る金色の機体は、右手の甲を上にかかげ、その一撃を受け止めていた。
足元には魔法陣が浮かびあがり、それが陥没を防いでいるかのようだった。
やがて俺達の機体が、ギロッと相手を睨みつける。
そして巨体の荒金丸が、地響きを立てて後ずさった。
これは明らかに格が違う。見た目のサイズは小さくても、神が与えた霊力の総量と質が違い過ぎるのだ。
やがて俺の目の前に、いつものメッセージが表示された。
『オーラブレード → クラスアップボーナスにより一時的にレベルMAXになります(斬撃補正LEVEL/MAX・破邪補正LEVEL/MAX・敵防御魔法無効化LEVEL/MAX)』
『オーラブレードは破邪の神剣・クサナギに昇格しました』
勇者に正式合格したご褒美なのか、一時的にステータスが最高レベルになってるらしい。
唯一いつもと違うのは、オーラブレードが1本だけなこと。
これはたぶん、一太刀あればじゅうぶんという意味だろう。
やがて俺たちの機体の右手に、輝く太刀が現れる。
太陽表面の恒星噴出紅炎みたいに黄金色のオーラを噴き出しているそれを、機体は無造作にふるう。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
瞬間、荒金丸の右手が持つ分厚い刀が、細切れのみじん切りになって砕け散った。
かけらは地面に落ちる事もなく、空中で光になって蒸発していく。
更に機体が刀を突き出すと、荒金丸の左腕が、ボゴッと円形にえぐられたみたいに消滅していた。
……が、事態はそれだけじゃなくて、はるか上空の雲までも、同じく円形に穴があいていたのだ。
「い、いや、どんな威力だよこれ……!」
ドン引きの極みに達する俺だったが、荒金丸はなおも悪あがきして肩の突起に雷を宿す。
さっきの雷よりはるかにでかいエネルギーらしく、凄まじい稲光が空気中に発散された。
……だが、それが発射された瞬間、全ての極太の雷は、俺の機体の眼前に吸い込まれて消えてしまったのだ。
「そ、そっか……あのヒュドラの冷気魔法を吸い取った、マイクロブラックホールか。あれとエネルギーのケタが違い過ぎるけど……」
もはや俺の理解は追いつかなかったが、そこで荒金丸は大きくほえた。
ほえると同時に地響きをあげてきびすを返し、もと来た道を逃げ帰り始めたのだ。