第61話 花見③
そんなお花見の、帰り道。
俺と琴美の家の最寄り駅に降りると、ピュッと冷たい風が吹いてきた。
この時期、日差しがあるうちは暖かいのだけど、夜になると急に冷え込んでくる。
そんなこともあろうかと、俺は鞄の中に、クリスマスに琴美からもらったマフラーを入れていた。
ここぞと俺はそれを取り出したのだけど、自分でマフラーをする前にふと思い立ち、
「琴美、寒くない?」
とマフラーを掲げて見せた。
琴美がもし寒いなら、当然女性の身体が冷えないようにする方が優先だ。
だけど、琴美は笑顔で、
「大丈夫、アタシも、悠珠にもらったものがあるから」
そう言って、クリスマスに俺が琴美にあげたマフラーを鞄から取り出した。
「そっか、よかった」
そう言って、2人で並んでマフラーをして、最後にそっと手をつなぎ、帰り道を歩く。
そうしていると、なんだか心まで温かくなるような心地がした。
そんな感じで、2人でしばらく歩いた頃。
「今年のクラス、良いクラスだったよね」
琴美がふと、そう言った。
「うん、そうだね」
俺もその通りだと思っていたので、スッと頷く。
「2年生のクラスも、今回みたいに良いクラスだといいね」
そう琴美が話すのは、これまでに悪いクラスも経験したこともあってのことだろう。
正直、次のクラスで悪いクラスに当たってしまう可能性もあると思うし、そのことが怖い気持ちもある。
「そうだね、でも」
それでも、だからこそ。
「俺たちの次のクラスがどんなものでも、たとえ離れ離れになっても、俺は絶対に琴美を支えるよう全力を尽くすから」
俺は強い意志をもって、琴美の目を見て、はっきりとそう言った。
今年のクラスでは、琴美からのフォローから始まって、いろんなクラスメイトとの交流が上手くいくようになって、良いクラスでの1年を過ごすことができた。
例えば、俺が1年前の琴美のようなアシストを、琴美に対してできるのかどうかはわからない。
ましてや別のクラスになって、俺が琴美にできることは限られてくるかもしれない。
でも。
今後は絶対に、琴美の手を離さない。
琴美のためにできることがあれば、絶対に全力でどんなことでもやり切る。
そのことだけは、確信をもって言える。
そういう決意を胸にしながら、想いを伝えるように、俺は琴美の手を握る強さを強くする。
すると、琴美も真剣な目をして、俺の手を強く握り返してくれて。
「うん、アタシも、何があっても、全力で悠珠を支える」
そう、力強く、伝え返してくれた。
そのことが、震えるほどに嬉しくて。
気がつくと、想いがあふれて、どちらからともなく、強く抱きしめ合っていた。
琴美のぬくもりを感じたとき、目尻に雫がたまっていくのを感じて。
抱き合っているからお互いの顔は見えないはずなのに、きっと琴美も同じなんだろうとわかって。
「琴美、愛してる……」
「うん、悠珠、アタシも愛してるよ……」
俺たちはそう囁き合いながら、2人支え合っていくことで、何があっても大丈夫と、そう、感じたのだった。
これまで「幼馴染と7年ぶりに同じクラスになった」(通称:ななくら)をお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
今回をもちまして、本作における悠珠と琴美の高校1年生としての物語は最後となります。
高校2年生に進級してからの話があるかどうかは未定です。本当に何も準備していません。
そのうち何か出るかもしれないし、出ないかもしれません。
したがって、今回が本作においての大きな区切りとなります。
16話で完結予定だった物語が、いつの間にか累計で9万字を超える量となりました。
ここまで続けられたのは、間違いなくお読みいただいた皆様のおかげです。
改めてお礼申し上げます。
さて、いつの間にか長きに渡って連載してきたななくらが一区切りとなったわけですが……
なんと、実は短期企画として、今までの私の書いてきた物語とは全く異なる、「完全新作」の物語を現在準備しております!
タイトルは「幼馴染のアシストをしようとしたらいつの間にか……」とさせていただきます!
全く新しい、幼馴染との恋物語として、近日公開予定です!
投稿開始できましたらこちらにもリンクを準備する予定です。
よろしければ新作の方も、何卒よろしくお願いいたします!
以上、作者、とらとーでした!
【2023年11月28日追記】
新作、投稿しました!下記URLに飛ぶか、広告の下にあるリンクからご覧いただけます!よろしくお願いいたします!
https://ncode.syosetu.com/n3073in/




