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幼馴染と7年ぶりに同じクラスになった  作者: とらとー
第4章:秋・冬イベント編
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第60話 花見②

 5人揃って、目的の場所である自然公園に足を踏み入れる。

「お、もう結構咲いてるねぇ」

 江藤さんがポツリとそう話す。

 日本の桜の中で数の多いソメイヨシノは、関東では3月下旬に開花して、そこから1週間ほど経った頃に満開を迎えることが多い。

 だから春休みにお花見に来ても、まだ咲いていない花の方が多いのが一般的だが、近年は地球温暖化の影響もあって、3月中でも多くの花が既に開いているということも多くなっている。

 現在の花の様子は、5分咲き~7分咲きといったところだろうか。

 お花見というイベントを盛り上げるには、十分な華やかさだと感じた。

 既に、何組かの人は花見用のビニールシートを設置完了しており、俺たちもなんとか空いている場所を探して、桜のよく見える位置にシートを敷く。

 そこに、各々が持ち寄ったお弁当やお菓子、飲み物などを並べていく。

 そして紙コップに入れた飲み物が全員に行き渡ったところで、

「それでは、同じクラスでの1年間、お疲れさまでした!かんぱーい!」

 そんな江藤さんの声かけから、食事の時間が始まった。


「悠珠―! この卵焼き、アタシが作ったの! 食べてみて!」

「わかった。ありがたくいただくよ」

 こういったやりとりも、この1年間ずっと続けてきたことだ。

「はい、あーん」

 ……でも、この時に未だにドキッとしてワンテンポ分覚悟がいるのは、許してほしい。

 ドキドキしてしまうのは、そんなときの琴美がとても可愛いからなのだから。

 意を決して、琴美が差し出す箸をパクッと口に入れ、琴美の卵焼きを食べる。

「……ん、美味しい」

 琴美が作ってくれた卵焼きは、優しい甘みが広がって、とても美味しかった。

 その言葉に、琴美が笑顔になってくれる。

 このやりとりは、やっぱり、何度やっても好きだな。

「おっ、悠珠のお弁当にあるの、椿姫さんのハンバーグ? ちょっともらえる?」

 琴美からそんな言葉が返ってくる。琴美は母さんのハンバーグ好きだもんな。

 しかし、これまで何度も聞いたその言葉も、今回はちょっと俺を緊張させるもので。

「いや、実は、これ、俺が焼いたやつで……」

 俺は伏し目がちにそう言う。

「えっ、悠珠が?」

「そう、その……琴美、どんどん料理上手くなってるからさ。俺も、自分が作った料理を、琴美に美味しいって言ってもらいたいなって、そう思って」

 琴美は日々成長して、ますます素敵になっている。だから、俺も琴美に並び立てるよう、成長し続けていきたい。

 それは、これまでもずっと思い続けてきたことだった。

 料理もその中の1つで。

 今後、もし2人で暮らすようになったとして、料理に関して琴美に頼り切りには、なりたくなくて。

 俺と琴美、2人支え合っていけるような、そんな関係になれる人物になりたくって、俺も料理の勉強を続けているのだ。

 そういう思いからの言葉に、琴美は優しい笑みを返してくれて。

「それならなおさら、アタシ、食べてみたいかな」

 そう言ってくれた。

 俺の意思を汲んでくれた喜びと、少しの緊張を感じながら、俺はハンバーグを一口大に切り分け、琴美の口元へと運ぶ。

 琴美の綺麗な顔が近くに寄ることにドキドキしながら、箸で掴んだハンバーグを、手を添えながらそっと琴美の口の中に入れる。


「……うん、美味しい! 作ってくれてありがとう!」


 そう言って笑顔を見せてくれた琴美に、こちらこそありがとうという気持ちになった。



「おおお、本当に私たち、視界に入っていないかのようだねぇ」

 そんな俺たちの意識を引き戻したのは、東出さんのそんな言葉だった。

「都由、いつもこんな感じの光景見てるわけ?」

「うん、少女漫画みたいでしょ」

 東出さんの言葉に江藤さんが肯定する。

 なんかだんだん言葉にされていくごとに、恥ずかしさが増してくる。

「私の弁当、もっとしょっぱいもの多めにしておけばよかったかしら」

「そんなときにはこれ。ブラックコーヒーね」

 嘉弥真さんの言葉を予測したかのように、江藤さんが魔法瓶から紙コップにホットコーヒーを入れ、嘉弥真さんに手渡す。

 そんなやり取りに、俺も琴美も顔が赤くなっていく。


 でも。


「でもいいな、理想の恋人関係かも」

「そうね、ここまで想い合える相手がいるのは、羨ましいわ」

 東出さんも嘉弥真さんもそう言って、こんな俺たちを肯定してくれる。

「そんな感じで、いつまでも幸せでいなよ。その姿を見てると、私たちも温かい気持ちになれるからさ」

 そんな言葉をくれたのは、江藤さん。


 こういった感じで、俺たちの交際をみんな認めてくれたのが、今年のクラスだったなと、改めて感じた。


 2年になったときも、そういうクラスメイトに恵まれたいな。


 そんなことを感じながら、俺と琴美は、顔を見合わせ微笑み合ったのだった。


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