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幼馴染と7年ぶりに同じクラスになった  作者: とらとー
第4章:秋・冬イベント編
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第48話 クリスマス④

 食事と片づけを、二人で終えて。

 

 残るは、プレゼント交換だけ。


 それぞれがラッピング袋を手に持って、お互いの前に居直る。

 琴美も俺と同じように、少し緊張の色が見えていた。


 なので。


「大丈夫、琴美がこうしてプレゼントを選んで持ってきてくれたってことが、俺には一番うれしいことだから」


 そう伝えると、一瞬驚いた琴美も、優しい目になって、


「うん、アタシも同じ」


 そう、返してくれた。


 そこから、お互い一歩ずつ歩み寄って。


「メリークリスマス」

「メリークリスマス」


 お互いの袋を、交換した。


 お互い、受け取った袋から、中身を取り出す。


「「……あれ?」」


 なんと、袋から出てきたのは、どちらもマフラーだった。


 俺が琴美にあげたマフラーは、茶色とベージュのチェック模様が入ったマフラー。

 琴美には明るめの色も似合うと思ったし、これからの季節、温かくして過ごしてほしいと思って、俺が考えたものだった。

 一方、琴美が俺にくれたマフラーは、薄いグレーの色の、落ち着いたカラーのマフラー。

 ファッション初心者の俺でもなんにでも合わせやすそうだし、何より琴美のグレーのコートと並んだ時に、よくフィットしそうだなと思った。


「……ふふっ」


 どちらからともなく、思わず二人に笑みがこぼれる。

「悠珠には、これから温かくして過ごしてもらいたいな、と思って」

「俺もだよ。まさか、プレゼントでお互いに同じことを思ってるなんてね」

 そりゃあ、お互い笑顔にもなるというものだ。


「ねえ、つけてみてよ」

 そう琴美に言われたから、もらったマフラーを巻こうとすると、

「そっちじゃなくて、こっち」

 そう言って、琴美のマフラーを手渡してくる。

 ……ほんと、敵わないなあ。

 また一歩、琴美に歩み寄ると、琴美の首の後ろに、マフラーを回していく。

 首筋に、触れすぎないように。琴美の綺麗な髪に、引っかかることがないように。

 ゆっくりと手を回していって、前でマフラーを結ぶと、全体が良く見えるように、俺は一歩後ろに引く。


「うん、やっぱりこのマフラーをした琴美、とっても素敵だよ」


 そういうと、少し照れ臭そうにはにかんだ、とてもキラキラした笑みを浮かべてくれた。


「それじゃ、アタシの番ね」

 そう琴美が言うと、今度は琴美が俺のマフラーを手に取り、俺の方に一歩近づく。

 琴美が、俺の首の後ろにマフラーを回し、同じように前でマフラーを結ぶ。

 それがどこか、一昔前の新婚夫婦が、夫の朝の出社前に妻がネクタイを結んであげる光景を想像させてきて、俺をドキドキさせていた。


「うん、悠珠も、よく似合ってる」

 

 その言葉が、本心だとはっきりわかる表情で、声色で、俺は心まで温かくなった気分だった。


 それから、なにかお互いマフラーを外しがたい気持ちで、そのままお茶を入れたり、ソファーに並んだりしていると。


「あっ、雪……」


 そんな琴美の声につられて、俺も窓の方を見る。

 琴美と二人、並んだまま、窓を開けてみる。


 すっかり日の落ちた夜空から、わずかながらも、確かに白い雪がひらひらと舞っていた。


「綺麗……」


 確かに、暗い街に白く輝く雪のコントラストは、なんだかロマンチックで美しい光景だった。

 そうつぶやく琴美の嬉しそうな顔も、劣らず綺麗だったけど。


「寒くない?」

 できるだけ優しい声色を心掛けて、琴美に尋ねる。

「うん、これがあるからね」

 琴美はそう言って、ひょいとマフラーの端をつまんでみせる。

 その仕草に、俺はなんだかうれしさを感じる。

「そっか、俺も、同じかな」

 琴美の仕草を、俺も真似てみせる。


「じゃあ、もう少し、このままで」


 琴美はそう言うと、俺の方にコトリと首を傾けて、俺に寄り添った。


 俺も、しばらくこうしていたい気分になっていたのだった。


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