第47話 クリスマス③
家に帰ってから、テーブルの上に、ピザとケーキを並べて。
普段使わないワイングラスを出してきて、それにシャンメリーを注いで。
そして俺と琴美は、向かい合わせに座った。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス」
お互い静かに、相手にだけ伝わるような声でそう言うと、小さくカツン、とお互いのグラスを合わせて、シャンメリーを口に運んだ。
琴美の誕生日会のような派手さはないけれど、だからといって気まずさもなく、穏やかな時間が流れる。
こういうのも、なんかいいな、と感じた。
琴美は今回も、ピザもケーキも、本当に美味しそうに食べていた。
やっぱりこの顔、好きだなあ、としみじみ思っていると、
「うん、やっぱりこのケーキ、とっても美味しい! 悠珠も食べてみてよ!」
そう言って、琴美が選んだショートケーキの一部をフォークに刺して、俺の方に向けてきた。
……こういうときは時々、たまに、いや結構な頻度であるけど、やっぱりなかなか慣れないなあ。
そう思いながらも、ワンクッション置いてから意を決し、あむ、とケーキを咥える。
「どう、美味しいでしょ!」
「……うん、美味しいね」
早まる鼓動を抑えながらそう言うと、琴美はとてもいい笑顔を向けてくれた。
そして、その後、琴美の視線が、俺の選んだチョコレートケーキにそそがれていることに気がつく。
その視線の意図を読み取ると、俺はケーキを一部切り分けてフォークに刺し、手を添えながら琴美の口元に持っていく。
あむ、と前に乗り出しながら、琴美は俺のフォークを咥える。
「ん~ん! これも美味しいね!」
それは、いつもより赤みがほんのり差した、でもやはり俺が大好きな、琴美の笑顔だった。




