第45話 クリスマス①
秋の過ごしやすい気候の時期はあっという間に過ぎ去り、一気に冬が訪れて。
気づけばもう12月になっていた。
その日は、俺と琴美と、江藤さんの三人でお昼のお弁当を食べていた。
琴美と付き合ってからも、こうして時々一緒にご飯を食べている。
「そういえば、琴美と緒方くんってクリスマスイブは二人で何するの?」
そんな江藤さんの言葉は、突然発せられた。
「そ、そんな二人で何かするのが当たり前みたいな……」
「いや、そうなるでしょ、こんなラブラブなカップルなんだから」
「ら、らぶらぶ……」
俺の言葉に対して、そう断言されるように言われると、俺も琴美もタジタジになってしまう。
い、いや、まあ、二人でいる予定なのは、本当だけどさ……。
「でも今回は本当にたまたまで、ちょうど俺の父さんも琴美のお父さんも、会社の忘年会が入ってて、俺の母さんと琴美のお母さんは一緒にママ友会に行ってて、それで帰りが遅いってだけで……」
「なるほど、後は二人でお楽しみ、と」
「帰りが遅いだけで、両親その日にちゃんと帰ってくるからね!?」
お、お楽しみって、そんな……。
……いわゆる、「そういうこと」は、俺と琴美の間では、まだしていない。
俺からのキスだって、この間初めてしたばかりで……。まだ、早いんじゃないかな……?
つい、チラッと、琴美の方を見る。
琴美も琴美で、俺の方をチラッと見るような表情をしている。
きっと、俺の今の顔も、琴美の顔と同じくらい、赤くなってるんだろうなあ……。
「ほらもう、二人の世界入ってるし」
そんな江藤さんのツッコミに、二人揃ってハッとなったのだった。
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「クリスマスかあ……」
その日の帰り道、琴美と二人で帰る途中、思わずつぶやく。
「お昼の話の続き?」
琴美も応じてくれる。
「いやあさ、なんとなく話の流れで決めちゃったところあるからさ」
そう、最初は、これまでそれぞれの家でやっていたクリスマスの家族パーティーみたいなものに、どちらかが混じるようなものを想定していたのだ。
しかし、その後段々と他の家族が別の予定が入っていって、
「じゃあ、二人でクリスマス会する?」
という話になったのだ。
「元が元だからさ、家で二人で過ごすみたいなことを考えてたけど、せっかくのクリスマスだし、本当は琴美はどこか行きたいところないのかなあ、って」
「えー、でも、悠珠は人混みとか、得意じゃないでしょ?」
そう、クリスマスに外でデートするとなると、どこに行っても人でいっぱいなのだ。
それでお互い疲れてしまって楽しめないくらいだったら、家で過ごしたほうがいいだろう。
「でも、琴美が行きたいところだったら、俺も頑張るよ」
「ヤダ、悠珠も楽しんでくれないと、アタシがヤダ」
「琴美が楽しければ、俺も楽しいけど……」
「それはアタシも同じだから」
そんな形で、やっぱりクリスマスは元の通り、家デートという結論に戻っていったのだった。




