表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/68

第5話 二人並ぶ距離

 俺と(こと)()は、二人肩を並べて、一つの小さな折り畳み傘を差して歩いていた。

 相手が幼馴染とはいえ、琴美は女で、ましてや美人だ。

 どうしても、意識してしまう。

 しかし、女性は好意のない男性から身体を触れられることは不快だとよく言う。

 琴美は、俺がこんなに近くにいて、嫌に思われないだろうか、肩が触れたりして、嫌われたりしないだろうか。

 そんな思いから、なんとか琴美に触れすぎないように、それでいてなるべく琴美の方に傘を向けるように、気を配りながら歩いていた。

 でも。

「ちょっと、()()、めっちゃ濡れちゃってるじゃん、もっと寄りなよ」

 琴美自身にそんなことを言われてしまっては、そのままというわけにはいかない。

「う、うん……」

 俺はおずおずといった感じで、身体を琴美の方に寄せる。

 結局、俺は琴美と肩がぴったり触れることになった。

 おそらく女性特有であろう、柔らかい肌の感触が、直に伝わってくる。

 距離を測るために顔を琴美の方に向けると、琴美の整った顔が、すぐ近くに現れる。

 さらに、これは琴美を気にしすぎなせいかもしれないが、雨のにおいに混じって、琴美のシャンプーのものなのか、それとも女性特有のものなのか、なんだか甘い匂いがしてくる気がする。

 確か小3より前にはこのくらいの距離で琴美と遊んでいた気がするのだが、当時の俺は何を考えていたんだほんとに。

「と、とりあえず俺の家までこのまま行こう。そこでもっとちゃんとした傘を貸すから」

 心臓がバクバク言っているのをなんとか見せないようにしながら、琴美に提案をした。

 俺の家は、駅から琴美の家への通り道にある。

 といっても俺の家から琴美の家までは10分くらいの距離があるので、そこまでこの小さな折り畳み傘で行くのは大変だろう。

 そう考えて言った提案だが、琴美はそれに頷いてくれた。

 いつも学校ではスムーズに話せている俺たちだが、今回ばかりはあまり会話もできないまま、黙々と歩いて行く。

 そうこうしてるうちに、道の先に俺の家が見えた。

 ゴールが見えたことで、俺の中にほっとした気持ちが浮かぶ。


 そのときだった。


 突然の強風が、俺たちを襲ったのは。


 バキバキバキ!


 俺たちが差していた折り畳み傘が、音を立てて壊れた。


 ザーッ!


 その瞬間、あっという間に俺たちを雨が容赦なくびしょ濡れにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

新作、投稿しました!
下記リンクからよろしくお願いいたします。
幼馴染のアシストをしようとしたらいつの間にか……
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ