第41話 文化祭を終えて
打ち上げも終わって、各メンバーとも解散して。
俺と琴美は二人、最寄駅から家までの道を歩いていた。
「琴美、今日は楽しかった?」
「うん! 大変だったけど、楽しかったよ。悠珠とも、たくさん一緒にいられたしね」
曇りない笑顔で、俺の問いかけに答えてくれた。
「悠珠はどうだった? 今日の感想としては」
琴美も、そう、聞き返してくれる。
「そうだなあ、もちろん琴美といるのは楽しかったけど……あれかな、ふさわしくありたいと思ったかな」
「ふさわしく?」
琴美が首をかしげて聞いてくる。
「そう、ふさわしく。やっぱり、今日いろんな人と関わったけど、やっぱり琴美は、いろんな人から知られてて。いろんな人から、魅力的、って思われてるなって、感じたからさ。俺も、琴美の隣に立って、恥ずかしくない人間になりたいな、って、そう思ったかな」
それは、俺がずっと思っていたことだった。
琴美は、誰から見ても魅力的な女性だ。
それに対して俺は、琴美から求めてくれるのは嬉しいけど、やっぱり、周囲から見ると、琴美ほど周囲から認められた存在でもない。
俺たちの交際は、今のところ周囲では認められているようだけど、まだまだ中には、「どうしてこの程度の男が、彼女の隣にいるのか」なんて思う人も、いるだろう。
「だから、これまでファッションに気をつけたり、化粧を勉強したり、料理をやってみたり、いろいろ始めてみたけどさ、そういう、いわゆる自分磨きを続けて、琴美の恋人にふさわしい人間になれるよう、これからも頑張っていきたいなって、改めて思った」
重いと思われるかもしれないけど、俺の偽らざる思いだ。
琴美は、こんな自分語りでも、ちゃんと聞いてくれた。
「これまでも、やっぱり琴美の彼氏はすごいね、って、言われたこともあるよ?」
「そうなんだ、じゃあもっと言われるようになりたいな」
「……これ以上、他の子から、モテちゃだめだよ?」
「これ以上がどれ以上かはわからないけど、俺には、琴美だけだから、他の人を見ることは絶対にないよ」
「……そう、真剣に真っ直ぐ言えるのが、何よりすごいと、アタシは思うよ」
「ありがとう。じゃあ、これからも続けていくね」
「……もう!」
これ以上は、琴美も恥ずかしくなったらしい。
そこから琴美の家までは、静かに、それでいて気まずくもなく、穏やかな時間が流れながら、二人並んで、手を繋いで、帰り道を歩いていったのだった。
これにて第3章、文化祭編は完結です。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
……ですが、悠珠と琴美の物語はまだ続きます。
次回、第4章「秋・冬イベント編」近日公開予定です!
今後ともどうかよろしくいたします!




