第33話 2学期の始まり
初めて琴美と恋人同士となって迎えた夏休みは、本当に色々なことがあった。
二人で一緒に勉強をしたり、二人で夏祭りに行ったり、みんなで海に行ったりもした。
最大のイベントだった琴美の誕生日も終わり、月が変わって9月1日。
昨日で、俺たちの通う成平高校の夏休みはおしまい。今日から、2学期が始まり、学校生活の再開だ。
ピンポーン。
そして、学校生活の始まりは、1学期と同じくこのチャイム。
ガチャ。
「おはよう、悠珠!」
「おはよう、琴美。準備がもう少しだから、上がって待っててよ」
いつも通り、朝、二人で学校に行くため、琴美が俺の家に上がってくる。
そして、やがて俺も準備が終わり、
「母さん、いってきます」
「椿妃さん、いってきます!」
「はい、二人ともいってらっしゃい」
二人で挨拶をして、二人揃って家を出発する。
どちらからともなく手を繋ぎ、駅まで歩いていく。
満員電車の中では、角の位置に立つ琴美が押しつぶされないよう、守るようにして踏ん張って立つ。
そうして学校の最寄り駅に着くと、そこからまた手を繋いで歩く。
学校が近づくにつれて、こちらを見てくる学生が増えてくる。
そういえば、1学期も登校時はこんなだったっけ……。
前まで毎日起こっていたことだったけど、一ヶ月半ぶりに体験すると、改めて恥ずかしさが浮かんでくる。
でも、俺は琴美の隣に居続けると決めたわけで。
努めて視線を気にしてないように見せながら、堂々と歩くようにしていた。
「おはよう、お二人さん!」
歩いていくと後ろから、そんな風に元気に声をかけられた。
声をかけてきたのは、同じクラスの東浜菜生さん。
琴美の友達ということもあり、最近は俺も絡むことも多くなった人だ。
「うんうん、今日も仲が良さそうで何よりだ。それじゃ、ちょっと先に行くね」
そんな感じで、嵐のように去っていった。
彼女はこんな感じで賑やかな人で、口下手な俺みたいな人にも、明るく接してくれる。
つまり、その、悪くない人だな、と思っていた。
琴美関連で、よく接する人といえば。
「おはよう、琴美、緒方くん」
昇降口で上履きに履き替えていると、もう一人の琴美の友人、江藤都由さんが声をかけてきた。
江藤さんは出席番号が近くて、最初の教室の席が近かったということもあり、今でも琴美と俺と一緒に昼食をとることも珍しくない。
「今日も手を繋いで来たんだ」
「ええと……まあ」
俺のそんな答えににこにこと明るい笑みを浮かべている。
付き合う前には琴美が江藤さんに恋の相談に乗ってもらったりなど、色々な形で俺たちの恋を応援してくれている。
……本当に、変わったなあ、学校生活。
中学時代までほとんどぼっちで過ごしてきた俺だけど、今は琴美を中心にして、これだけの人に囲まれていて。
琴美に、改めて感謝だな。
クラスへと向かう間、俺はそんなことを頭に浮かべながら歩いていたのだった。




