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第32話 琴美の誕生日③

 パーティーが終わって、今は琴美と、俺が「家が近いから」ということで、片づけを手伝っていた。

 俺自身、琴美の手伝いをしたいという気持ちは本物なのだけれど、今俺がここにいるのはそれだけが理由じゃない。

 ……まあ、俺が片づけを申し出る際に辺りを見回していたら、江藤さんと東浜さんが意味深にウインクをしてきたので、俺の考えはみんなに気づかれているのかもしれないけど。

「よしっ、これで最後だね!」

 使った皿をすすいで食洗器に入れて回したり、ごみを分別してまとめて捨てたり、片づけの作業は一通り終わった。


「琴美、ちょっといいかな?」


 琴美の声を合図にするように、俺は琴美を呼び止めた。

「なに?」

 可愛く疑問符を浮かべる琴美に、俺は伝える。


「実はもう一つ、琴美に渡したいものがあって」


 俺は琴美の目を見て、そう伝えた。

「えっ? 誕生日プレゼントは、さっき貰ったじゃない」


「あれは琴美の誕生日パーティーで渡すプレゼント。俺はそれ以外に、琴美の恋人としてのプレゼントをあげたいと思って」


 そう、これはそんな、俺のエゴのこもったプレゼントだ。


 気に入ってもらえないかもしれない。


 重いって思われるかもしれない。


 でも。


「俺は、大勢の中の一つのプレゼントを渡すだけじゃ、イヤだなって。琴美の、特別な人として、プレゼントを渡したいなって、そう思って」


 目を丸くしている琴美を尻目に、俺はもう一つの、ラッピングされた袋を琴美に手渡した。


「これが、俺の恋人としての、琴美へのプレゼント。独りよがりだけど、どうか受け取ってほしい」


 俺は、琴美を真っ直ぐ見つめた上で、そう言った。


 琴美は心なしか、少し震えた手つきで、プレゼントに手を伸ばす。


 それは喜びなのか、それとも別の何かなのか、俺はドキドキと心臓が大きく鳴っているのを感じながら、プレゼントを手放した。


 琴美が、ラッピングを解き、ゆっくりと中身を取り出す。


 それは、紫色のストーンの飾りが特徴的な、ブレスレットだった。


 チェーン状になっている部分はシンプルな色とデザインだが、紫の大小さまざまなストーンが、ライラックの花のように連なっているものである。


「最初はやめようかと思ったんだ、アクセサリーなんて、俺があげたいだけで、もらっても迷惑なんじゃないかって。でも、それを見たときに、なんか、直感したんだよ。これは、琴美に似合うって。琴美の白い肌にも、亜麻色の髪にも、青い瞳にも、絶対に似合うって」


 見たときに、これを、渡したいって思った。

 俺が、琴美に、これを贈りたいって。

 そんな、自分本位の気持ちだけど。


「喜んで、くれるかな?」


「……うん、うん!」

 琴美は、顔を紅潮させながら、そう頷いてくれた。


「悠珠に、つけてほしいな」


 琴美は俺にそんなお願いまでしてくれた。

 俺は、慎重にブレスレットの金具を外して、そっと琴美の左腕をとり、丁寧さを心掛けて、琴美の手首に巻いて、金具をつけた。


「……どう、かな?」


 琴美はブレスレットのついた手首を、胸の前で抱えるようにして、俺にそう訊ねてくる。


「すごく、綺麗だよ」


 ブレスレットの紫に彩られた手首、シミ一つない白い肌、艶やかな亜麻色の髪、輝くような青の瞳、全てが合わさって、琴美の姿はとても綺麗だと思った。


「そう、よかった!」

 そう言って目を細める琴美の目尻には、ほんのり光るものが見え隠れしていて。


 そんな琴美の美しさに、俺はしばらく目を離せずにいたのだった。







これにて「幼馴染と7年ぶりに同じクラスになった」第2章は完結となります。悠珠、やり切りました!


……しかし、本作「ななくら」はまだまだ終わりません!


近日、第3章、文化祭編!公開予定!お楽しみに!

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