第31話 琴美の誕生日②
それから数日後、8月23日。
琴美の、誕生日当日。
「「お誕生日、おめでとう~!!」」
琴美の家では、大勢の人の祝福の声が響いていた。
琴美は交友が広く、その中でも特に仲の良い、江藤さんを中心としたグループ三人と、東浜さんを中心としたグループ三人が、琴美の誕生日を祝いにやってきていた。
そして俺は、そんな女性七人、男性一人というバランスの中、いわゆるお誕生日席に座る琴美の向かいの位置の席で、要は端っこで、ちょこんとしながら琴美を中心にワイワイにぎわう様子を眺めていた。
テーブルには大皿に盛られたピザであったり、ホール上で切り分けられているケーキであったりとした、パーティー料理が用意されていて、各自取り分けながら勢いよく消費されていった。
そんなこんなで賑やかに、ときには江藤さんや東浜さんたちが琴美に触れあったりしながらパーティー料理をおおよそ食べ終えた後、いよいよプレゼントを渡す時間となった。
琴美の容姿が好きと言ってはばからない江藤さんなんかは、「この服琴美に着せたくって~」なんて言いながらひらひらとした可愛い服を持ってきたり、自分に自信のある東浜さんなんかは「この子めっちゃ可愛いっしょ!」と特大サイズのクマのぬいぐるみをデーンと渡していたり、各々がその人らしさのあるプレゼントを渡して、琴美はそれらを表情豊かに喜びを表現して、つまり、とてもいい表情で受け取っていた。
そうして、俺がプレゼントを渡す番となった。
なんだかんだで順番が最後になってしまい、なんだか緊張する。
それに、なんだか全員の視線が集まってしまっているし。
「え、えっと……そんなにじっと見られるのは……」
「いや、見るでしょ。琴美の彼氏としての資質が問われてるんだから」
戸惑う俺に東浜さんはハッキリとそう答える。
これは、仕方ないな。
俺は、緊張を抱えたまま、綺麗にラッピングされたプレゼントを、琴美に手渡した。
「開けてもいい?」
琴美の問いに、俺は頷く。
「どれどれ……あっ! 可愛い!!」
俺のプレゼントは、ピンクで丸々とした可愛い姿が人気のキャラクターとコラボした、ハンドクリームセットだった。
このキャラクターのゲームは、琴美と二人でやったこともあるし、琴美がこのキャラのことを好きなことも知っていた。
これをあげたら喜んでくれる可能性が一番高いんじゃないかな、というチョイスだった。
「へぇ、ハンドクリームか。どうやら緒方くんは、プレゼント何がいいか、よく調べたみたいだね」
「琴美のこと、一生懸命考えたんだね」
東浜さんや江藤さんからも、そんな誉め言葉をもらった。
「ほんと嬉しい。悠珠、ありがとう」
「喜んでもらえて、俺も嬉しいよ」
そう笑顔で琴美と微笑み合う。
そんな形で、琴美の誕生日パーティーは賑やかに終わった。
……実は俺は、まだ一つ、緊張のタネが残っているのだけど。




