第27話 海③
さて、俺たちが集まった駅から、海水浴場の最寄り駅からは、さほど時間がかからないで着いた。
駅から海水浴場までの導線はスムーズで、現地の更衣室での着替えまで、俺と石川くんの男子二人はスムーズに終えた。
こういうときは女性の方が時間がかかるものなので、二人で出口で待つことになる。
「緒方くんは、甲斐さんの水着がどんなのかは、事前に知ってる?」
「いや……」
俺も琴美も水着を新調することになったのだが、俺は一緒に買いに行くのは恥ずかしかったし、琴美は当日のサプライズにしたいということで、別々に買いに行って、それぞれの水着がどんなものなのか知らない。
気になる反面、直視できるのか不安だったり、どこかそわそわして待っていた。
「お待たせ~!」
その琴美の明るい声に、俺たちは振り向く。
その場には女性陣四人が揃っていたが、俺の目を引くのはやはり、琴美の姿だ。
琴美の水着は、水色を基調とした、フリルがついた可愛らしいものだった。
だがその色は琴美の瞳の色にもマッチしていて、亜麻色の髪と白い肌とのコントラストも美しく、太陽の強い日差しも相まって、キラキラしたように感じる。
また、水着になると、琴美のスタイルの良さも強調される。
スラリと伸びた長い脚が、モデルのような映えっぷりを見せている。
また、フリルに隠れた、普段、服を着ている状態ではあまり意識してこなかった、その、胸のふくらみも、確かに主張していて、思わず意識を持っていかれる。
つまり、琴美の水着姿は、とても似合っていた。
「ふふ、どう?」
琴美はそんな俺の反応に満足げな表情を見せつつ、聞いてくる。
「ええと、その、よく、似合ってます……」
どうしても、返答がたどたどしくなってしまうが、必要なことは伝えなければ。
「ふふ、ありがと」
琴美はそう言って、微笑んでくれた。
その笑顔の水着姿も、また輝いて見えて。
「……琴美のこと、もっと好きになりそう」
思わず、そんな声が漏れた。
「えっ、やだ、もう!」
そこまで言われると思っていなかった琴美は、少し恥ずかしそうにしていた。
後ろの方で、華やかな赤のビキニを着こなした東浜さんの「ヒューヒュー!」といった冷やかしを聞き流しながら、俺たちはいざ海に向かうこととなった。




