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第25話 海①

 それは、夏休みも中盤に差し掛かりそうな時期のことだった。

 その時の俺は、夕食も終えて、自分の部屋でのんびりと過ごしていた。

 そうしていると、スマホの着信音がした。

 画面を見てみると、琴美からのチャットだ。

「今、通話できる?」

 そんな文章が書かれている。

 俺はそのチャットにOKの返事をした。俺としても、琴美と話せることは嬉しい。

 琴美からすぐに、通話アプリで着信がきた。

「もしもし」

「もしもし、悠珠、急にごめんね」

「いやいや、俺も琴美と話せるのは嬉しいし。何かあった?」

 琴美の口調から、ただ話したいだけじゃなくて、何か理由があってかけてきたんだろうなと感じ、話を振る。

「いやね、その、アタシたちの、女子グループの子たちいるじゃん? そのメンバーで、一緒に来てほしい場所があって……」

「ああ、前のショッピングモールに行ったときみたいな感じ?」

 以前、琴美の友達の東浜さんたちのグループで、女子4人と男子が俺1人で出かけたことがあった。

 あのときは物珍しさにけっこうからかわれたりもしたが、あれはあれで楽しかった。

「うん、いいよいいよ。その場所って、どこ?」

 だから、俺としても軽く返事をしたのだけれど。


「その、実は、その場所は……海でして……」


「……えっ! 海!?」


*******


 まさか、琴美から海に誘われるなんて、思ってもみなかった。

 琴美の話によると、女子4人グループで、海に行きたいね、なんて話が出たらしく。

 だけど、琴美と東浜さんのいるグループは、琴美がいるだけあって、いわゆる美人な子たちが多くて、ナンパが心配だよね、という話になって。

 そこで、彼氏持ちが2人、つまり琴美ともう1人だ、いたことから、その2人をナンパ避けとして呼んだらいいんじゃないかって東浜さんが提案して、俺にも話が回ってきたと、そういうことらしい。

「そんな感じなんだけど、悠珠、いい?」

「ええと、その、琴美が、いいなら……」

 いいも何も、一緒に海に行くなんて話なら、琴美がいいかどうかだ。

 彼氏としては、そりゃあ、美人な彼女と海に行って、その、水着姿だって、見たいに決まっている。

 それを彼女側が恥ずかしくないかどうか、許容できるかどうか、そういう話でしかない。

 俺がそんなことを思っていると、

「ありがと。それじゃあ、また日程とか具体的な話が出たらまた連絡するね。それじゃ」

「うん、わかった。おやすみ……」

「はーい、おやすみー」

 そんな感じで通話が切れた。

 通話が終わると、俺は思わず、ボフンとベッドに後ろ向きに倒れこんだ。

「海か……琴美の、水着か……」

 思わず、自分がそんな言葉をこぼしたことに、自分が一番びっくりした。

 いかんいかん、変な妄想なんかするんじゃない!

 俺は自分の雑念を払うべく、一旦風呂に入って落ち着くことにした。


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